【コラム】ドラッグストア界を揺るがす「業界再編」が港北区内企業から起きようとしているのをご存知でしょうか。
「ココカラファイン」は日吉・綱島・高田エリアでは聞きなれない会社名ですが、本社は港北区新横浜。同社は今、同業大手の「マツモトキヨシ」と「スギ薬局」の両社から合併相手としてラブコールを受けており、どちらと合併しても業界トップの売上規模となるだけに大きな注目を集めています。
ドラッグストア業界は近年、合併による再編が進んでおり、主要チェーンにおける2019年6月現在の売上規模で見ると、以下のような順になっています。
ドラッグストアチェーンの売上規模(2019年6月現在)
★印は今年度の決算が未発表のため2018年度の決算情報による売上高/[参考]は非上場企業のため、売上高・店舗数ともに参考情報
- ウエルシアホールディングス(東京都千代田区):7791億円/1874店(2019年2月期)※イオン系、「ウエルシア薬局」や「HAC(ハック)ドラッグ」を展開、HACを中心に綱島と日吉に6店舗
- ★ツルハホールディングス(札幌市東区):6732億円(2018年5月期)/2082店舗(2019年5月現在)※北海道発祥の「ツルハドラッグ」と千葉県など関東中心の「くすりの福太郎」ほか展開。周辺に店舗なし
- サンドラッグ(東京都府中市):5880億円/1147店舗(2019年3月期)※綱島のイトーヨーカドー内や樽町りりあタウンに店舗
- マツモトキヨシホールディングス(千葉県松戸市):5759億円/1654店舗(2019年3月期)※箕輪町2丁目とアピタテラス内に店舗
- ★コスモス薬品(福岡市博多区):5579億円(2018年5月期)/993店舗(2019年5月現在)※九州や西日本中心。周辺に店舗なし
- スギホールディングス(愛知県安城市):4884億円/1190店舗(2019年2月期)※スギ薬局。南加瀬4丁目に店舗
- ココカラファイン(新横浜3丁目):4005億/1354店舗(2019年3月期)※「セイジョー」「セガミ」「ジップドラッグ」「ライフォート」などの従来店と「ココカラファイン」ブランド。元住吉にココカラファイン(旧セイジョー)の店舗
- ★クリエイトSDホールディングス(青葉区荏田西):2681億円(2018年5月期)/616店舗(2019年2月現在)※日吉・綱島・高田に4店
- カワチ薬品(栃木県小山市):2649億円/334店舗(2019年3月期)※関東北部が中心。周辺に店舗なし
- ★クスリのアオキホールディングス(石川県白山市):2212億円(2018年5月期)/517店舗(2019年2月)※北陸中心。周辺に店舗なし
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- ★[参考]株式会社富士薬品(ドラッグストア「セイムス」「スマイル」など)(さいたま市大宮区):3767億円(2018年3月)/1337店舗(2019年3月現在)(公式サイト情報)※売上はドラッグストア事業以外も含む。セイムスは日吉に2店舗、スマイルは高田に1店舗
- ★[参考]株式会社トモズ(ドラッグストア「トモズ=Tomod’s」)(東京都文京区):710億円(2018年3月)/172店舗(「リクナビ2020」情報)※住友商事子会社、元住吉に店舗
- ★[参考]株式会社カメガヤ(Fit Care DEPOT=フィットケア・デポなど)(新横浜2丁目):367億円(2018年9月期)/85店舗(2018年9月現在)(公式サイト情報)※発祥は妙蓮寺。日吉・綱島・高田に5店舗
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ドラッグストア業界のトップは「ウエルシア/HAC(ハック)」の両ブランドで知られるイオン傘下のウエルシアホールディングス(HD)で、同社は日吉・綱島・高田エリアでも、綱島駅の周辺にある「HACドラッグ」(4店舗)を中心に、エリアではトップとなる合計6店を展開しています。
なお、HACはもともと新横浜に本部を置いていたCFSコーポレーション(当時)によるブランドで、紆余曲折の末にイオングループ入りし、その後にウエルシアHDに合併された経緯があるため、ウエルシアHDが綱島や日吉で強かったというわけではありません。
イオン傘下となる前から神奈川県内に集中出店していた旧HACも含め、日吉・綱島・高田で目立つのは「フィットケア・デポ(Fit Care DEPOT)」(5店舗)のカメガヤ(新横浜)や、「クリエイト」(4店舗)のクリエイトSDホールディングス(青葉区)といった“地元企業”。そのため、ドラッグストア業界の勢力図とは若干異なる状況です。
その一方で、同じ港北区内には、業界でもっとも熱い注目を浴びている企業が本社を置いており、それが売上規模7位の「ココカラファイン」です。
ココカラファインに対しては、業界4位の「マツモトキヨシ(マツキヨ)」と、同6位の「スギ薬局」の双方からほぼ同時に経営統合の提案を持ちかけられています。
ココカラファインは、もともと関東圏中心の「セイジョー」と関西圏に強い「ドラッグセガミ」の運営企業が合併して2008年に誕生し、その後さらに4社を統合して生まれたチェーンで、いわばドラッグストアチェーン6社によって生まれた連合企業。
そのためか、2010年にいずれの合併前企業にもゆかりのない新横浜を本社として選んでいます。港北区では妙蓮寺駅近くの1店舗しかありませんが、東京都(253店)をはじめ、大阪府(174店)、愛知県(102店)など全国に1354店舗を展開する大手で、区内企業としては2番目の売上規模を持ちます。
そんなココカラファインは、マツキヨにとっても、スギ薬局にとっても欠かせない重要な存在。同社と一緒になれば、現在1位のウエルシアHDを抜き去り、売上規模でも店舗数でも一気にトップになることができるため、2社による“ココカラ争奪戦”といえる状況となっています。
マツキヨにいたっては、当初は「資本・業務提携」の申し出だったのに、合併のライバルとなるスギ薬局が登場したことで、その後に合併も辞さない方針に転換したほどでした。
現時点では3社が統合するとの流れにはなっておらず、「ココカラファイン+マツキヨ」か「ココカラファイン+スギ薬局」の組み合わせになるとみられ、今後、ココカラファインがどちらを合併相手に選ぶのか、新横浜の本社で下される決定に目が離せない状態です。
マツキヨは箕輪町2丁目やアピタテラス横浜綱島など港北区内に4店を出店し、スギ薬局は大倉山と日吉5丁目などに近い南加瀬4丁目に出店しており、合併後に日吉・綱島・高田周辺のドラッグストア店舗へどのような影響を及ぼすのかもポイント。
そして、千葉県松戸市が本社のマツキヨと愛知県大府市(登記上は安城市)が本社のスギ薬局のいずれかと合併が実現した場合、ココカラファイン新横浜本社の行方も気になるところです。
【関連記事】
・新横浜3のココカラファイン、「マツキヨ」との経営統合を協議へ(2019年8月15日、新横浜新聞、その後、マツキヨとの統合協議を決定した)
【参考リンク】
・ココカラファインってどんな会社なの?(株式会社ココカラファイン)
・スギホールディングス株式会社との経営統合に関する検討及び協議開始のお知らせ(PDF、株式会社ココカラファイン、2019年6月1日)
・株式会社マツモトキヨシホールディングスとの資本業務提携に関する検討及び協議開始のお知らせ (PDF、株式会社ココカラファイン、2019年6月5日)
・(合併先を決める)特別委員会の設置に関するお知らせ(PDF、株式会社ココカラファイン、2019年6月10日)