菊名駅の西口(JR駅側)に近い高台の閑静な住宅街に「ギャラリー&スペース弥平(やへい)」(篠原北1)がオープンしてからまもなく丸10年。亡き創設者の思いを継いだ運営者のもとで、新しい取り組みを始めようとしています。「菊名で落語」と題して噺(はなし)家を招いた催しを今月(2016年11月)23日(水・祝)に初めて行うほか、無声映画の鑑賞会も定期的に実施したい考えです。
ギャラリー&スペース弥平は、2006年12月に当時80歳だった中島弥平さんが「地域交流の場に」と自宅を改装して設けたスペース。かつて神奈川県内の高校で化学・物理教員をつとめていた中島さんは、長年にわたって陶芸や絵画をたしなみ、引退後は地域活動にも熱心に取り組んでいました。
その一つが今も運営が続く「菊名おでかけバス」(坂道の多い菊名や篠原エリアの足を担うため住民有志がボランティアで2011年から開始)の設立にも関わったといいます。
「地域のために」父の遺志を受け新たに運営担う
「父は80歳になっていたのですが、自宅を改装するにあたって最初は地域のためにグループホーム(認知症対応型共同生活介護)を作りたかったようです」と娘の中島真弓さんは話します。昨年(2015年)1月に91歳で亡くなった弥平さんの“地域のために”という思いを受け継ぎ、ギャラリーの運営を担っています。
一昨年、弥平さんの体調が悪くなったのを機に数十年ぶりに生まれ育った“実家”へ戻ってきたという真弓さんは、ニュース番組の制作現場などテレビ業界で長年活躍してきた人物。専門外ともいえるギャラリーを運営するうえでの知識を得るため、「この1年はとにかく必死で勉強をしてきました」といいます。
創設者の弥平さん亡きあとも、ピアノやヨガ教室、作品展示会、コンサートなど、菊名と沿線エリアの人々の活動や発表の場として、これまで通り利用できるようギャラリーを維持する一方、「地域の人にもっと集まってもらえる場を」と新たに企画したのが落語と無声映画の鑑賞会でした。
「笑いを通じて地域がつながれる場にしたい」といい、「ニッポンの話芸を楽しむ」と名付けた一連のシリーズとして、ギャラリー弥平の新たな名物としたい考えです。
11/23(祝)に初の「菊名で落語」、高座も手作り
その第1回は「菊名で落語」と題し、志ぃさー(しぃさー)の名で知られる噺家の藤木勇人(はやと)さんを今月(2016年11月)23日に招きます。
長年にわたって沖縄の音楽スタイルを追求してきた「りんけんバンド」のメンバーだった経歴も持つ藤木さんだけに、「当日は三線(さんしん)を持ち込みたいと言ってました。今回が初めての企画ですので、私もどんな公演になるのか想像がつかないんです。高座はビール箱で手作りしようと思っています」と真弓さんは楽しそうに話します。
「落語の公演が終わったら、次は活動弁士を招いて無声映画も上映したいと考えています。人の口で伝えるサイレント映画は独特の面白さがあるんですよ」と次の企画実施へ向けても着々と準備を進めている様子です。
「父はギャラリー内にカフェを併設したいと思ったのか、カウンターやキッチンを設けているのですが、今までほとんど使われてきませんでした。実際に地域の人が集まれるカフェを運営できないかと考え、この1年はこっそりコーヒーの淹(い)れ方も勉強していました」と真弓さんは打ち明けます。
創設者の弥平さんが亡くなってからまもなく1年。「地域のために」という遺志をさらに発展させるため、ギャラリー弥平の新たな挑戦はこれから先も続きそうです。
【参考リンク】
・ギャラリー&スペース弥平(やへい)の公式サイト(現在は最新ニュースの更新停止中)
・第1回「菊名で落語~藤木勇人 ひとりゆんたく~志ぃさーのひとり語り」の詳細(2016年11月23日14時に開催、 株式会社パインウッドカンパニー)