<コラム>2つの巨大再開発で抜け落ちていた「買物弱者」に対する視点 | 横浜日吉新聞

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ひよしコラム昨日(2015年11月29日)の18時で「アピタ日吉店」(箕輪町2丁目)が閉店しました。1977(昭和52)年に「サンテラス日吉」としてオープンして以来、38年5カ月間にわたって日吉の街を代表する大型スーパーだっただけに、その影響は少なくありません。特に高齢住民にとっては深刻な問題です。

箕輪町に隣接する綱島東4丁目のパナソニック跡地「Tsunashima(綱島)サスティナブル・スマートタウン」(綱島SST)の日吉寄りの場所(北綱島交差点付近)には、「アピタ横浜綱島店」の建設が計画されていますが、オープンできるのは早くても2017年4月以降です。1年半近くの間、日常の買い物をどうするのかを考えなくてはなりません。

地元の町内会では、アピタ日吉店の近隣にあるイオン系のミニスーパー「まいばすけっと箕輪町1丁目店」での生鮮品充実や、「ドン・キホーテ日吉店」(箕輪町2)における生鮮品取り扱いなどを要望していますが、今のところまだ実現はしていません。

現在、日吉周辺で生鮮品を取り扱っている買物スポット(スーパー)は、次の通りです。

・日吉駅直結の「日吉東急avenue(アベニュー)」(1階食料品売場)

・日吉駅近くの小型スーパー「ながえ」(日吉本町1)

・日吉本町駅近くの大型スーパー「オーケー日吉店」(日吉本町4)

・日吉本町駅近くの小型スーパー「メグミマーケット日吉本町店」(日吉本町3)

・綱島駅東口近く綱島街道沿いの中型スーパー「綱島東急ストア」(綱島東2)

・日吉駅から徒歩10分の中型スーパー「もとまちユニオン日吉店」(川崎市中原区木月)

・下田町の中型スーパー「サミットストア日吉店」(下田町5)

・川崎市寄りの日吉5丁目から近い場所にある中型スーパー「いなげや川崎南加瀬店」(幸区南加瀬4)

このように日吉エリアには買物スポットは数多くあるのですが、箕輪町2~3丁目や、日吉5~7丁目の「宮前地区」と呼ばれるエリアでは、スーパーの空白区となってしまいました。

自家用車やバイク、自転車で気軽に買物へ出掛けることが容易な人は、アピタが日吉店がなくなっても大きな問題ではないでしょう。日吉駅や日吉本町駅に行けば何でも買物はできますし、郊外にも大型商業施設は多数存在します。

アピタ日吉店の開店(9時30分)を待つ人々

アピタ日吉店の開店(9時30分)を待つ人々

しかし、高齢の人々にとっては、行き慣れてコミュニティ的になっていた買物スポットがなくなってしまうだけでなく、慣れないスーパーまでの移動距離も増えてしまうことになります。アピタ日吉店で平日昼間の客層を見ていると、多くが60~80歳代の高齢者で、なかには歩くのがやっとの人も買物に通っていました。これからどうするのか心配です。

インターネットで注文すると生鮮日用品を宅配してくれる「ネットスーパー」などのサービスを使う方法もありますが、注文時のパソコン操作が難しいだけでなく、これに頼りすぎてしまうと外出の機会が減って足腰が衰えないかとの懸念もあります。

綱島SSTとアピタ跡地という2つの巨大再開発を同時に進めるうえでは、さまざまな事情があったのでしょう。アピタ日吉店の閉店が遅れれば、公立小学校などの建設も再開発も遅れることになるため、新店舗のオープン前に閉店せざるを得なかったとの見方もできます。

両再開発では、学校や保育施設、防災広場など地域にとって役立つ公共施設が数多く整備される計画です。綱島SST側には新しいアピタ綱島店ができ、アピタ日吉店の跡地にもスーパーなどの買物施設が生まれ、数年後は今より便利になっているかもしれません。

しかし、“買物弱者”の視点で考えると、数年先の華やかな近未来より、明日の買物が心配なのです。そうした立場の人を考慮した再開発計画だったならば、と思わずにはいられません。

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