5/11(火)まで横浜・川崎に「まん延防止措置」、緊急事態と何が違うのか? | 横浜日吉新聞

横浜日吉新聞

“まん延防止措置”とは一体何なのでしょうか。神奈川県は、あす(2021年)4月20日(火)から横浜と川崎、相模原の政令3市を対象に来月5月11日(火)までの22日間にわたって、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するための「まん延防止措置(正式名称:新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置)」を適用し、県民に外出の自粛や飲食店などに営業時間の短縮といった要請を行います。(5月8日追記:適用期間は5月末まで延長となりました/5月29日追記:その後、6月20日まで再延長となりました)

「緊急事態措置(宣言)」と「まん延防止措置」の違いを示した国の資料。分かりづらいが、まん延防止措置は緊急事態措置の前段階ということになる(内閣官房の特設サイトより)

当初は“まん防(マンボウ)”などと呼ばれていましたが、不謹慎だとの声もあって、現在は主に「まん延防止措置」との略称で呼ばれているこの仕組み。先月(3月21日)まで神奈川県に出されていた「緊急事態宣言」との違いは、知事が適用する区域を細かく決められることにあります。

都道府県単位で発出されていた「緊急事態宣言」に対し、まん延防止措置は、「必ずしも市町村単位である必要はなく、もっとも小さい単位だと、特定の商店街といった形でも制度的には可能」(神奈川県対策本部会議でくらし安全防災局・花田忠雄局長)と言われています。

当初、まん延防止措置の適用は関西圏と宮城県だけだったが、次第に増えて10都府県内となっている(内閣官房の特設サイトより)

国で新型コロナウイルス対策を担当する西村康稔国務大臣は、「ある地域で感染が広がっている場合に、その地域、期間、あるいは業態を絞って対策を講じることによって、感染拡大を抑え、その県内に広がることを抑えていこうとするもの」(4月1日「新型インフルエンザ等対策推進会議・基本的対処方針分科会」)と説明します。

緊急事態宣言は「ステージⅣ(4)」という爆発的な感染拡大期に発出されますが、まん延防止措置では、感染の急増期である「ステージⅢ(3)」相当の状態で適用が可能とされており、“緊急事態宣言の一歩手前”の段階における対策といえます。

緊急事態宣言は経済に大打撃を与える。これを出さなくても知事が地域を限定して強力な措置を打つことができる。できれば抑止力としての罰則などを設けていただきたい」(同分科会で全国知事会の飯泉嘉門会長)として、都道府県が国に要望したことなどから生まれた仕組みだといいます。

緊急事態時と要請内容はほぼ変わらず

神奈川県による県民への要請内容、横浜・川崎・相模原の措置区域以外でも同じという部分も(4月16日の県対策本部会議の資料より)

こうした経緯もあって、緊急事態宣言の前段階ながら、まん延防止措置での要請内容が緩くなるということはなく、神奈川県で見ると、

  • 生活に必要な場合を除く外出自粛の要請(事業者にはテレワークの徹底)
  • 営業時間の短縮要請(20時まで)
  • イベントの制限(上限5000人)

といった内容が柱となっており、緊急事態宣言時と要請内容はほとんど変わりません

横浜・川崎・相模原の措置区域は営業時間を20時までとするよう求めている(同)

なかでも、感染対策の急所といわれる飲食店に対し、営業時間を朝の5時から夜の20時までとするよう求めることが主眼で、これに従わない場合は、法律に基づいて公表や立入検査を行ったり、20万円の過料(違反金)を支払うよう求めたりすることができるとされています。

一方、営業時間の短縮に応じた飲食店には、協力金として店の規模に応じて1日あたり4万円から20万円を支給するとのこと。

まん延防止措置は、「緊急事態宣言の中にあったとしても時短要請を破って、また、そうして営業しているお店に長蛇の列ができる。このまま緊急事態宣言を出していても結局は意味がなくなってしまう」(同分科会で全国知事会の飯泉会長)という状況を回避するための措置だといいます。

経済に打撃の大きい緊急事態宣言を広範囲に発出しても効果が薄いのなら、その前段階で、区域を絞って対策を打ったほうが効果的ではないか、との考えがあるようです。

行政間、市民が危機感を共有できるか

神奈川県対策本部会議で4月15日に示された資料。政令3市は県の人口比で66%だが、緊急事態宣言の解除後、感染者数では75%を占めている状況

神奈川県では、まん延防止措置の適用区域は、横浜市と川崎市、相模原市とすることを決めており、県人口の66%が集中し、感染者数の7割から8割を占めているとされる政令市に絞って重点的に対策を行う方針です。

この3市は、先週4月12日(月)から先にまん延防止措置が適用されている東京23区や町田市、八王子市に接していることも適用区域に選んだ理由だといいます。

今回の要請では、外出の自粛に加え、「路上での飲酒をしない」「昼夜を問わずマスク飲食の実践」といった内容も盛り込まれましたが、あくまでも呼びかけであり、飲食店のように公表や過料といった罰則的な措置は設けられていません。緊急事態宣言時と同様に、“良識”に訴えかけるしかないのが現状です。

県民に向けてさまざまな要請や呼びかけを行っているが、最終的には「良識」に委ねられており、強制力はほぼ無い(神奈川県知事による4月16日メッセージ動画

こうしたなか、横浜市は、まん延防止措置の適用にともない、市民向けの公共施設は「原則20時まで」として開館時間を一部短縮するものの、先月までの緊急事態宣言中と同様に休館する動きは見られません川崎市も同様に開館時間の短縮のみとし、休館は行わない方針です。

また、横浜市は、主催・共催のイベントについても、「人数上限は5000人とします」としており、まん延防止措置が適用されたなかでも、人数を5000人までに絞れば市が主催するイベントは開催可能、との考え方で、限定的な制限にとどめています。

一方、感染対策を主導する神奈川県は、図書館などを除いて県民向け施設は当面の間にわたって原則休館を基本とし、主催イベントも来年3月まで中止・延期する方針を決めており、県と市の間でも対応に違いが見られます。

現時点での“最終手段”となっている緊急事態宣言でさえ、効果が薄れてきたといわれています。その前段階である、まん延防止措置の実施によって、行政間はもちろん、市民を巻き込んでどこまで危機感を共有できるのかが感染拡大を食い止める鍵となります。

【関連記事】

横浜などの「まん延防止」は6/20(日)まで再延長、“時短無視”には命令も(新横浜新聞~しんよこ新聞、2021年5月29日、さらに再延長)リンク追記

5月中は続く横浜・川崎の「まん延防止」、営業時間や酒類提供を制限(2021年5月8日、結局期間は延長されることになった)リンク追記

GWは横浜市・川崎市の「まん延防止」強化、酒類提供の終日停止求める(2021年4月26日)リンク追記

マスク会食の元祖・神奈川県が「認証制度」、優れた店は時短除外も検討(新横浜新聞~しんよこ新聞、2021年4月19日、新たな独自制度も開始)

【参考リンク】

特措法に基づくまん延防止等重点措置に係る神奈川県実施方針(令和3年4月16日制定)(神奈川県)

横浜市新型コロナウイルス対策本部会議における市長コメント(令和3年4月16日)(横浜市)

川崎市「まん延防止等重点措置」の適用対象の指定に伴う市長コメント(令和3年4月16日)(川崎市)


カテゴリ別記事一覧