“不器用”な芸人とバンドマンが織りなす夢追いコメディー演劇――慶應義塾大学最大の公認演劇サークル「創像工房in front of.」が、2016年2月本公演「ワガハイは不器用星人であるっ」を2月25日(木)から4日間、慶應日吉キャンパスにて行います。
今回の公演の作・演出の小林史明(ふみあき)さんに、作品の魅力や見どころ、企画演出に賭ける「想い」を聞きました。
バスケットに夢中!人とのつながり感じるアメリカでの高校時代
小林史明さんは三重県出身。「田舎で、のんびりしている環境で育ちました」という小林さんに、大きな人生の転機が訪れたのが高校入学時。親元を離れ、単身渡米、慶應義塾ニューヨーク学院(高等部)に入学したのです。
3年間、入寮し、相部屋の同級生とアメリカで高校生活を送ったという小林さん。「中学時代に引き続き、バスケットボール部に入部しました。トーナメントの試合が多い日本の高校生スポーツ界とは異なり、アメリカではホーム・アンド・アウェイで対戦するんです。学校をあげて、バスをチャーターし応援に来てくれるなど、学校全体での一体感を味わうことが多く、とても良い青春時代を過ごすことができました」と、高校時代を振り返ります。
本場・アメリカでのバスケットボール部や、とても印象深かったという学校や寮での日々で学んだチームワークや一体感が、今の演劇での活動につながっているといいます。「みんな、めちゃくちゃ仲良しなんです」と、今でも、当時、同級生約100名と過ごしたというニューヨークでの高校時代でつちかった人とのつながりが財産になっていると語ります。
「バスケットばかりしていたので」あまりニューヨークでは演劇やミュージカルは見れなかったという小林さん。「もったいないことをしました」と笑います。そんな小林さんが演劇の世界を志すようになったのは、やはり演劇を作る立場で活躍している「兄の影響があった」と小林さん。
「兄の演劇を観にいって、強い衝撃を受けたんです。演じるだけでなく、様々作り上げる様に、これだ、とショックを受けたんです。それで、演劇を志したいと思うようになりました」と語る小林さん。「創像工房の存在を教えてくれたのも兄でした。“慶應で一番大きな演劇団体は、創像工房”と教えてくれたんです」と、入団のきっかけを思い起こします。
1年生で主役に抜擢。企画や脚本についても学んだ日々
慶應義塾大学入学後、迷わず創像工房の門を叩いたという小林さん。演劇への強い“想い”を反映してか、入学直後の2014年6月の新人公演「髑髏(どくろ)城の七人」や10月の「クサビノシロ」、昨年2015年冬の「缶けりストカンコちゃん」、6月の「アテルイ」、10月の「少年オイル」、12月東京公演の「ねじられた周波数」でも主役、もしくは主役級の役をそれぞれ熱演。
特に1年生にして主役に抜擢された「クサビノシロ」では、国家社会に反抗するという郵便配達員「ネジ」役を好演。「新人の時から踏み込んで、求められるレベルも上がり、技術的にも芝居の奥深さを痛感しました」と、重要な役を以降も任されるきっかけとなった作品を懐かしみます。
また、舞台に関する様々なことを学べるという、創像工房で2014年夏に開催されたワークショップで、初めての脚本執筆にトライすると、より良い2作品のうちの1つとして作品を選考してもらえたという小林さん。演劇が多数の人の仕事で成り立っていることを学んだだけでなく、脚本執筆にも自信を持ち、その後、1年生だけでトライするという慶應義塾大学の文化祭・三田祭での2014年公演「正直でよろしい。」にて脚本と演出を手掛け、作品づくりにも自信を深めたといいます。
不器用な自分、夢を追う男たち。「人がいる」面白さを作品に込めて
今回の「ワガハイは不器用星人であるっ」は、そんな創像工房や、外部の劇団だいだいだい(慶應義塾大学出身のメンバーを中心に2014年8月に旗揚げした劇団)での2015年夏の公演「ザットウ天国」でも経験を積んだ、小林さんにとっての本格的な作・演出としての初めての作品となります。
舞台設定は“現代”だという今回の作品。「男性2人が主人公なんです。夢を追う主人公のお笑い芸人とバンドマン。何かを追いかけ、目指していく中で、ハプニングなど、色々な事が起こるというストーリーです。結末は秘密ですので、お楽しみに」と小林さん。
タイトルに込めた想いを聞くと、「自分自身は、どちらかというと不器用で、たまに、いきなり不器用さが出てしまうんです。そんな自分のことも重ねてみました」と、自身の不器用さについても説明。
関西文化に近い、三重県で育った経験も、「お笑い」を志向するようになった背景にあると小林さん。「関西弁はイントネーションが標準語などとは全く異なり、知らず知らず、笑ってしまうところ、自然と笑える文化がある」と小林さんはいいます。
そして、バスケットにいそしんだ高校時代の慶應義塾ニューヨーク学院でも、年3~4回程度のテストの後の息抜きとして学校で恒例となっている「お笑いイベント」があり、そこで漫才を行い、「人を笑わせるのって、楽しいな」と感じてきた小林さん。今回の作品のお笑いコメディーは、そんな「お笑いの本場」アメリカでの自分自身の経験にも重ねて、漫才のシーンも盛り込んでいるとのこと。
これまでの創像工房の作品にはない演出や、舞台セットなどにも「目新しさ」を用意し、面白さを追求したという小林さん。2人の登場人物を描く作品の進行の中で、「楽しく笑っていただけるコメディーに仕上がっています。約1時間40分の上演時間の中に、ほっこりする人間ドラマ、笑って楽しめるシーンをコミカルにも盛り込みました」と、作品の魅力を教えてくれました。
「今回の案内ポスターも、人と人がいる。人って、面白いな、という想いを込めて作成しました。人にはそれぞれ世界があって、影響を与えあって、時にはワーッとぶつかって生きてゆくものなんだと思うんです」と、「ウォーリーを探せ!」(イギリスの人探し絵本)にも似たポスターのデザインに込めた思いも語ってくれた小林さん。
学生が日吉の街から極めて少なくなるこの季節。「今は冬の寂しい時期ですが、この劇の構想はもうずっと以前、昨年2015年4月から練ってきたんです。脚本など、企画も7月頃から本腰入れて取り組んできました。一人でも多くの皆さんにお越しいただき、楽しく観劇してもらえたら」と、今回の公演へ込めた想いを、小林さんは最後に熱く語ってくれました。
慶應義塾大学・創像工房in front of.公演「ワガハイは不器用星人であるっ」は、2月25日(木)から2月28(日)までの4日間、慶應日吉キャンパス・塾生会館地下アトリエ合Cにて開催。
<料金>
予約:一般800円、学生500円
当日:一般1000円、学生800円
(高校生以下 無料)
※3名以上から適用の団体割、ツイッター・リツイート割あり(割引併用不可とのこと)
【参考リンク】
・「ワガハイは不器用星人であるっ」特設サイト
・「ワガハイは不器用星人であるっ」特設サイト(PV動画)
・創像工房 in front of.公式サイト(作品案内・予約画面へのリンク有)
・創像工房 in front of.公式サイト(塾生会館地下アトリエ合Cへのアクセス)
・劇団だいだいだいTwitter(「ザットウ天国」公演情報)
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