慶應最大の演劇集団「創像工房in front of.」が10/30(金)から日吉で公演 | 横浜日吉新聞

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慶應義塾大学日吉キャンパスを拠点に活動する「創像工房in front of.(インフロントオブ)」の10月公演「形状記憶」

慶應義塾大学日吉キャンパスを拠点に活動する「創像工房in front of.(インフロントオブ)」の10月公演「形状記憶」

芸術の秋、いよいよ冬も迫り寂しさも感じる季節ですが、慶應義塾大学日吉キャンパスを拠点に総勢100名を越える劇団員が所属する大規模集団が“熱く”活躍しているのをご存知でしょうか。年間10数本の作品を公演するなかで、その大部分は日吉で公演を行っており、まさに地元・慶應日吉の大演劇団体です。

その演劇団体「創像工房in front of.(インフロントオブ)」が10月30日(金)から11月1日(日)まで、日吉キャンパス内で「形状記憶」と題した作品の公演を3日間にわたり行います

この創像工房は1990年に設立されたといいます。代表の中村馨さんは第24期生。「当時、慶大にあった2つの劇団『創像』『in front of.』が合併しできたようです」と劇団の成り立ちについて話します。

現在の創像工房は、演劇だけではなく、お笑いや映像など、多岐に渡るエンターテインメントを創作しており、年間10数回行われる公演も各方面から年々高く評価を受けています。

今年(2015年)9月に開催された第1回「東京学生演劇祭」では、最優秀となる演劇祭賞を受賞。来年2月京都で行なわれる「全国学生演劇祭」への参加も決定しました。

創像工房に所属しながらも他の劇団を立ち上げたり、メンバーの活動範囲も他の劇団におよぶ場合もあるなど活動は多岐にわたっており、学生演劇界を代表する演劇団体といわれています。

代表の中村馨さんは「演技のカリスマ」と高い評価

代表の中村馨さん。高校時代も演劇部に所属。一年生から主役としても活躍。前作『少年オイル』でも「いぶし銀」存在感抜群の演技力を披露してくれました

代表の中村馨さん。高校時代も演劇部に所属し、入団1年目から主役としても活躍。前作「少年オイル」でも「いぶし銀」存在感抜群の演技力を披露してくれました

この創像工房を率いる代表の中村さんは、法学部在学中で富山県の出身です。日吉の街にもなじみが深く、「授業の合間によく散歩をしています。特に、日吉キャンパス内に広がる森や坂がある景色が、富山に似ていて”ふるさと”を感じます」と語ります。

中村さんは、東京学生演劇祭での受賞作品となる「僕僕僕僕僕僕僕」(作・演出 永田一行さん)でも主演として活躍するなど、役者としても活躍しています。

入部した早々の2013年6月の新人公演「Warrior(ウォーリアー)唄い続ける侍ロマン」にて、徳川家康役という大役を既に演じた、同劇団でも突出した華と演技力を持つ役者の一人で、東京学生演劇祭ほか学内外のファンからも高い人気を博しています。

「実は(慶大内で有名な)手話サークルに入ろうかと思っていました。新人歓迎の集まりの席で、創像工房の存在を教えてくれた人がいたのが、高校時代経験していた演劇部と同じ道を選んだきっかけです」と話します。

これまでは「流れに任せて一つ一つの作品のクオリティを追求してきた」とのこと。代表としての仕事はこの12月で終わるとのことですが、今年12月に行われる日吉公演「Happy本当に落ちたカミナリは見たことない」にも出演予定です。

今回の作品「形状記憶」は“現代ロマンティック”

今回が初めての「リーダー役」となる今西祥太郎さん。中国文学や中国の映画作品を研究。張芸謀 (チャン・イーモウ)や台湾の侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督作品も「いいですね」と語ってくれました

今回が初めての「リーダー役」となる今西祥太郎さん。中国文学や中国の映画作品を研究。張芸謀 (チャン・イーモウ)や台湾の侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督作品も「いいですね」と語ってくれました

一方、今回の「形状記憶」公演の作・演出を担当する今西祥太郎さんは、文学部在学中で横浜市磯子区出身です。

「オフィス街で恰好良い三田キャンパスよりも、日吉の街のほうが落ち着きますね。“ひようら”(慶應大学側でない日吉駅西口)で夜ご飯もよく食べますし、スローに時間が流れる居心地の良い街です」。

今西さんは、高校時代に寸劇(ごく短い簡単な劇)を行う機会があり、大学では別の体育会系運動部に入部したものの、「(やはり)『Warrior唄い続ける侍ロマン』公演での織田信長役の方の演技にただただ『すごい』と思い、その年の夏、年度途中からの遅れての入部となりました」。

そんな理由もあり、「これまで少し様子見もしてきました」と語る今西さん。これまで役者や舞台美術、舞台監督補佐など、裏方としても活躍してきましたが、今回は初めて脚本も執筆となりました。

今度の企画は「入団以来の3年間の創像工房での集大成、という位置づけでトライすることを決めました」。昨年あたりからじわじわと構想を練ったといいます。

中国文学の『紅楼夢』や中国映画がモチーフ

創像工房in front of.(インフロントオブ)のホームページ

創像工房in front of.(インフロントオブ)のホームページ

脚本を執筆した背景について、今西さんは「専攻している中国文学『紅楼夢(こうろうむ=18世紀中頃の「中国四大名著」とも言われる作品)』、日本で言うところの『源氏物語』に該当する作品ですが、そういった歴史的な著作の数々からも着想を得た」と話します。

今西さんの現在の大学での研究のテーマは「中国映画」だといい、「これまでの読書や映画鑑賞の経験も盛り込んだ、現代を舞台にしたロマンティックな人間ドラマに仕上げています。人間関係をテーマとしたお話しです。人間関係は、一度変わったら、元に戻す、戻るのは難しいということを、生と死を漂う今の若者に向けた価値観で脚本を執筆しました」と話します。

そのうえで、「特に、中学時代、高校時代の友達としか付き合えない、など『今いるコミュニティーから出ることができない』現在の大学生など、若い人に多く見られる“普通の登場人物”が、他のコミュニティーに入ることが怖い、難しいという感覚、昔のように楽しく遊ぶのが難しいな、というもどかしさも描いています。登場人物たちが、どのように苦しんでゆくか、というのもこれまで体感してきた文学の世界の影響を受けていて、それを散りばめています。大学生など、今の同世代の若い方々に、ぜひ見てもらえたら」と呼びかけています。

さらには、「ホロリ、まぬけ、ユーモア、そして爽やかさも感じられる作品に仕上げています。自分の存在にも悩みつつ生きる主人公の苦悩にも共感しつつ、一歩先が見えない昨今の世相から、一つのゴールへ向かうプロセスを感じていただけたら。3年間あたため、こらえて出した企画です。何かしらのメッセージを皆さんに届けたい」と熱く語ってくれた今西さん。

注目してもらいたい出演者は「武田(紗保)さん、本多(啓夢)さん、いずれも一年生の二人」とのこと。中国文学『紅楼夢』のイメージから「ロマンスは?」と尋ねると、「それもあります」とはにかんだ笑顔で答えてくれました。

創像工房の公演「形状記憶」は、10月30日(金)から11月1日(日)まで、計5回公演。慶應日吉キャンパス内の「塾生会館」地下1階アトリエ合C(日吉駅より徒歩5分)にて。一般予約1000円、学生予約500円。(いずれも当日券はプラス200円)。満席の回も既にあるため、事前予約にて観劇申込が確実です。

【参考リンク】

「創像工房 in front of.」公式ホームページ

創像工房 in front of.10月企画「形状記憶」


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