慶應義塾大学最大の部員数180名を数える公認演劇サークル「創像工房in front of.」が、最新公演「Happy!〜本当に落ちたカミナリは見たことない〜」を12月17日(木)から4日間、慶應日吉キャンパスにて行います。
今回の作品は、来年2016年の同劇団の新代表に就任する浅井啓介さんが主役を務めます。また、同劇団在籍4年目になるベテランの小野翼さんが作・演出を担当。総勢70人もの劇団員が参画するという同サークルでも大変珍しい大人数が参画する注目度の高い舞台となっています。
先月11月に来年(2016年)の新代表に選ばれた浅井啓介さんは慶應義塾大学経済学部に在学中。たまたまテレビで見た劇団「大人計画」の舞台『ふくすけ』をテレビで見たのが演劇を志すきっかけになったといいます。「全てが迫力、全てに圧倒され、言葉を失いました。役者、音楽、舞台セット、全てが素晴らしく、大学に入ったら演劇をやろう、と決心したんです」。
創像工房に入団してからの浅井さんの経歴は輝かしく、2014年の入団直後の新人公演「髑髏(どくろ)城の七人」で早速主役級の蘭兵衛(らんべえ)役で役者デビュー。「舞台に立ったのは初めてでしたが、やってみて、出てくるパワーやエネルギーあるんや、と、みる側では感じられない感動がそこにはありました」。
次の夏の部内での公演で初めて脚本を担当。「脚本を書く苦労を初めて味わいました。書く準備をしているのと、していないのとでは、全く違う。作品の背景を自分自身でいかに考えるか、が大切だと学びました」と浅井さんは当時を振り返ります。
同年10月公演の「クサビノシロ」で”選ばれて嬉しかった”という初の主役に抜擢。本年2015年夏には同サークルOBが所属する劇団かけっこ角砂糖δ(かくざとうデルタ)の舞台「平々凡々サイクロン~デルタウロスの帰還~」にて演出助手として参加するなど、外部にも活動の場を求めます。そして秋10月公演の「少年オイル」では、初の作・演出を担当し、「反省点ばかりでした」と振り返るも、「達成感はありました」とその手応えを感じた浅井さん。
今年は創像工房の公演企画が計20本もあるなど、大変活動が活発な一年だったという浅井さん。部員も総勢180名を越え、より大所帯になっており、「過去の最盛期と同じ規模」といいます。
「公演は、それぞれの企画に賛同したメンバーが集まるというスタンスなんですが、人数も増え、企画も増え、大きすぎるが故に、創像工房全体としてのまとまりは薄くなりがちです。そこを自分が代表になることで、少しでもより良い方向に、よりまとまりを強く感じられる方向に持ってゆけたら」と浅井さんは新代表としての抱負を語ってくれました。
作・演出のベテラン・小野翼さんは”お笑い”から”お客様思考”へ
一方、今回の「Happy!〜本当に落ちたカミナリは見たことない〜」の作・演出を担当する小野翼さんも、浅井さんと同じく慶應義塾大経済学部在学中。在籍4年目のベテランとして、創像工房を引っ張る重要なメンバーの一人として活躍しています。
小野さんはもともと高校で「お笑いサークル的な」活動をしていたとのこと。「同級生4人で、ネタを作っては発表していました。大学では何か作るものをやりたい、とこの創像工房を選びました」と入団の動機を語ります。
「入団後の経歴は、今回新代表に選ばれた浅井(啓介)君と似た道を歩んできまして、新人公演でも舞台に立つことも出来、夏には脚本・演出にもトライしました」。シリアスな役で「お笑いを取ろうとして失敗しました」と、高校時代までのお笑いと、演劇の違いを痛感したといいます。
脚本演出は準備もやはり必要とのことで、「積み重ねや勉強の連続」と、その苦労を語る小野さん。以降も企画・脚本を行う中で、お客様がどうやったら満足してくれるかという点に強くこだわってきた小野さんの作品は、内外でも多くの支持を集め、高校時代の「お笑い」仲間で結成した「劇団ジョナサン」は、本年9月開催の「第4回大学生演劇インターカレッジ」にて演劇大賞も受賞しました。
そんな小野さんに惹かれ、今回の「Happy!〜本当に落ちたカミナリは見たことない〜」でも、総勢70人ものメンバーが集まってきたといいます。「全員に、やりたいこと、伝えたいことを伝達する力、ことばの選び方や、まとめる力を発揮し共有するのが、とても難しいと感じています」。と苦労を語る小野さんの真摯な舞台作品への取り組みに、「多くのメンバーが集まってくるんです」と、新代表の浅井さんも、小野さんの魅力を絶賛します。
新代表の浅井さんは「カミサマ」役。人の”幸せ”とは
いよいよ公演迫る「Happy!〜本当に落ちたカミナリは見たことない〜」は、そんな小野さんが半年以上前からあたためてきた企画。人を幸せにする様々な人たちの、様々な価値感を描いています。
「人は、素直になれなかったり、不器用。そんな人が、人を思うことを面白おかしく、また、怖く描くことで、人としてのもどかしさを描いています。特に、高校時代やってきた”お笑い”だけでは、その場は笑っても、後に残らないことが多いんです。それを悔しく思うようになったんです。言葉にできない人の想いを、”のこそう”と思い、お客様からすれば好き嫌いはあるかもしれませんが、怖さも交え、描いています」。
お客様のことを考えてきた、という小野さん。「お客様に寄り添うよう、退屈にならないよう、”お笑い”も交え、趣向も凝らしているので、二時間の大作になりますが、大人もほろっとさせられるような”現代コメディー・シリアス・不気味なホラー”に仕上がりました。テレビや映画では味わえない、迫力や熱量、お笑いの空気感といったものを、身体で感じていただけます。劇場の臨場感を感じながら、お客様にも感情的になっていただけるんです。ぜひ、”演劇が初めて”という方々にも、たくさんお越しいただけたなら」と、想いを語ってくれました。
今回は「相当、キーマン」(小野さん)というヒーロー「カミサマ」役だという、新代表の浅井さんも、「なぜ、”カミサマ”なのか、ぜひ、皆さんで見つけてください」。主役にこれまで抜擢されてきた「イケメン」役の浅井さんは「人気実力派の小野さんが作・演出を担当するのはもちろん、今回はベテラン役者が多く、大変見応えがあります。役者の演技力を感じてもらえると思うので、ぜひ多くの皆さんに見に来ていただけたら」と、この作品への意気込みを教えてくれました。
創像工房の最新作「Happy!〜本当に落ちたカミナリは見たことない〜」は、慶應日吉キャンパス内の「塾生会館」地下1階アトリエ合C(日吉駅より徒歩5分)にて。一般予約1000円、学生予約800円。(当日券は一般、学生共1300円)。「HAPPY!割」有。(受付にて“私は本当に幸せです”と一言おっしゃって下されば、その幸福を祝福し100円割引しますとのこと)
※12月19日(土)13時からの公演は「キャストシャッフルステージ」。通常のキャストをシャッフルして行う、めったにない試み、との事で、「珍しい男女のシャッフルも一部見られるかも。同じステージを二度楽しめます。ご期待ください」と小野さん。残席わずかな会もあるので、ご予約はお早めに、との事。
【関連記事】
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【参考リンク】
・「Happy!〜本当に落ちたカミナリは見たことない〜」特設サイト
・全日本大学生演劇選手権「大学生演劇インターカレッジ2015」ホームページ
・劇団「大人計画」公式サイト~『ふくすけ』(2012年)