先進的な鶴見川の「流域治水」を国内外へ、新たな映像作品で発信 | 横浜日吉新聞

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鶴見川流域での治水の取り組みを国内外へ発信します――。

NPO法人日本水フォーラム(東京都中央区)とNPO法人鶴見川流域ネットワーキング(綱島西2)、港北ふるさとテレビ局の三者は映像作品総合治水から流域治水へ~実践する鶴見川流域ネットワーキング」を今年(2025年)3月に制作し、このほどYouTube(ユーチューブ)で公開しました。

2025年3月に制作された映像作品「総合治水から流域治水へ~実践する鶴見川流域ネットワーキング」(NPO法人日本水フォーラム、NPO法人鶴見川流域ネットワーキング、港北ふるさとテレビ局制作)

15分超の同作品は、1980年代から行われてきた鶴見川流域での治水の取り組みをまとめたもので、古くから氾濫を繰り返す“暴れ川”とどう向き合ってきたかが分かる内容となっています。

鶴見川では、河川単位で対策を行うのではなく、源流の東京都町田市から中流域に位置する港北区下流鶴見区までの流域が一体となって治水の取り組みを行ってきたのが特徴です。

映像作品では鶴見川の歴史や取り組みを分かりやすく伝える(作品制作者提供)

たとえば、源流域の町田市では保水のために丘陵の森を残し、川が曲がり水があふれることの多かった港北区新横浜周辺には水を貯める多目的遊水地を設け、下流の鶴見区では海へ注ぐ河道を広げるなど流域全体で対策しています。

2019年秋の台風19号では全国で大きな被害が発生するなか、鶴見川では新横浜公園の多目的遊水地に水を貯めたことで水位を押し下げ、翌日にはラグビーワールドカップ(W杯)の日本代表対スコットランド代表の試合が日産スタジアムで通常通り行われたことから国内外に驚きをもって伝えられました。

日産スタジアム付近の鶴見川(資料写真、2024年)

近年は気候変動による災害が激甚化しつつあり、流域全体で対策する「流域治水」の取り組みは国全体で行われるようになっています。先進例である鶴見川が注目されるケースも多く、今回の映像作品もその一助となるよう制作したといいます。

また、2019年のラグビーW杯時には国外でも注目を集めたように、流域治水の考え方を広く伝えるために今回の映像作品では英語字幕版を別に制作しています。

鶴見川流域の取り組みでは、国を中心に流域の自治体に加え、企業や団体、市民などが連携して各地域で治水につなげる環境を守る活動を実践しているのも大きな特徴となっており、映像作品にはこうした各活動の様子も収められました。

岸由二・慶應大学名誉教授を撮影中の様子、岸名誉教授は流域治水について「河川管理者や自治体、市民団体と企業などが連携し、『流域』として実践することが大切」と話している(作品制作者提供)

国土交通省が各地で流域治水を推進する際に唱えている“流域のみんなで”というスタイルを古くから実践してきた鶴見川流域。今回の映像作品は取り組みへの大きな参考資料となるはずです。

)この記事は「横浜日吉新聞」「新横浜新聞~しんよこ新聞」の共通記事です

【関連記事】

<新横浜公園>台風19号で鶴見川から流れ込んだ水は過去3番目の量に(新横浜新聞~しんよこ新聞、2019年10月21日)

【参考リンク】

映像作品「総合治水から流域治水へ~実践する鶴見川流域ネットワーキング」(港北ふるさとテレビ局、2025年3月制作、英語字幕版もあり)

港北ふるさとテレビ局「鶴見川チャンネル」(鶴見川に関する映像作品を紹介)

鶴見川流域水マスタープラン(鶴見川における取り組みの基礎となる計画、2004年の策定後、2015年に一部改訂)


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