<市教委>港北図書館など古い5館の現状を調査、“狭く席数も大きく不足” | 横浜日吉新聞

横浜日吉新聞

現状の施設では機能拡充は難しいことが浮き彫りとなっています。

横浜市教育委員会は今年(2024年)春から行っていた市立図書館の現況調査についての概要を公表し、現在の建物のままでは蔵書や閲覧室、キッズスペースなどの拡充には課題が多いことを明らかにしました。

今年3月に公表された「横浜市図書館ビジョン」では1区1館は変えない一方、建て替え時には機能を拡充することや、図書取次所を増設することなどを盛り込んでいる

今年3月に公表した「図書館ビジョン」の具体化へ向け、再整備の方向性を探るための概要調査を行う一方、築年数の古い港北(築63年)をはじめ、山内(青葉区、築47年)や戸塚(築46年)、鶴見(築44年)、金沢(築43年)の5図書館中央図書館(西区、築30年)についてはアンケートや聞き取りを含めた現況調査を行ったものです。

9月18日の横浜市会「こども青少年・教育委員会」で報告された資料によると、蔵書数の拡充に関しては、中央図書館に収蔵できる最大容量が135万冊となっていること対し、すでに2022年度末時点で120万冊を収蔵しており、9割が埋まっている状態だといいます。

港北図書館は1960(昭和35)年10月に建てられた旧港北区庁舎の建物を改装し、1980(昭和55)年に開館した(資料写真、2022年)

港北図書館の建物竣工時期について】現在の港北図書館は旧「港北区庁舎」が使われており、その完成時期については「横浜市図書館ビジョン(原案)」資料編と「横浜市図書館ビジョン」の46ページに掲載されている「横浜市立図書館一覧」に記載された竣工年月日(1961年11月30日)を採用してきました。その後、読者から「1960年ではないか」との指摘をいただき、あらためて調査しました。横浜市役所から1961(昭和36)年3月に発行された「市政概要 1960年版」には、港北区役所(現港北図書館)の新庁舎は、1960(昭和35)年10月に完成し、10月20日に竣工式典が行われていたとあり、建物や窓口、式典の写真も掲載されていました。そのため、現在の港北図書館の建物は1960(昭和35)年10月竣工が正しい時期といえます。記事の該当部分を修正いたしました。なお、市教委によると図書館ビジョンに掲載された「1961年11月30日」は誤りだったため今後修正を行うとのことです。(2024年10月18日)

市立図書館の建物は築63年の港北図書館を筆頭に平均でも築36.9年老朽化が進んでおり、中央図書館を除く地域館(17区図書館)の平均面積は1981平方メートルで、閲覧席数平均51席にとどまります。

これらから「椅子・机、トイレ等の使いづらさ、管理運営のデジタル化の遅れ、利用者導線の不便さなど、施設・設備の古さに起因する課題」(報告資料)があると分析。さらに、「近年整備された他自治体の図書館と比較すると狭く、特に閲覧数の数が大きく不足」(同)しています。

横浜市内の図書館は中央を除き閲覧席は平均51席しかない(イメージ、横浜市会「こども青少年・教育委員会」2024年9月19日資料より)

また、交流や子どもの学びスペースなどを加えるには「すでに面積の余裕が少なく、現状では新たな機能の導入・拡充の余地は乏しい」(同)と結論付けました。

このほか、市内に図書館や取次拠点が少ないため1カ所でカバーする範囲が広く、川崎や名古屋など5政令市の平均が11.8平方キロメートルに対し、横浜市は16平方キロメートル。図書サービスから離れた地域の住民に対しては「ニーズに十分応えられているとは言えない」(同)との見方です。

図書館や取次拠点が1カ所でカバーする範囲は16平方キロメートルにのぼる(横浜市会「こども青少年・教育委員会」2024年9月19日資料より)

そのうえで、本の貸出など基本的なサービスを「身近な場所で提供」(同)するほか、交流などの新機能も拡充していくために調査を行い、「市域全体の交通アクセス等を踏まえ、1区1館を基本としつつ、中央図書館と身近な拠点である地域館が有する機能の分担の視点を入れて検討していきます」(同)としました。

建替えで生まれる「新図書館」の例

横浜市内で図書館の建て替える場合、図書館ビジョンに沿った新しい図書館はどのような姿になるのでしょうか。

人口29万7000人超(2024年10月時点)の鶴見区で1979(昭和54)年に開館した「鶴見図書館」。延床面積が約1510平方メートルと市の平均(1981平方メートル)を下回っており、かなり狭い(2024年7月)

鶴見図書館(築44年)では、JR鶴見駅西口から徒歩7分ほどの場所にある豊岡小学校(鶴見区豊岡町)を建て替えるにあたり、図書館を含めた複合施設化が図られることになっています。

今年7月末に市が公表した素案によると、図書館スペースは延床面積が現在の1510平方メートルから約5000平方メートル程度と3倍超に拡大。

閲覧席は200席以上(現在は一般36席/児童用6席)を確保し、開架書庫は15万冊(書庫と合わせて蔵書20万冊)が収容可能となり、現在の蔵書数10万8692冊(2023年3月現在)を拡充するための余地が生まれます。

新たな鶴見図書館の想定設備(諸室)と規模(2024年7月「(仮称)豊岡町複合施設再編整備事業 事業計画」より)

新たな機能として、「つどい・交流スペース」や「こども・ティーンズのための学び・体験スペース」、「親子のくつろぎ・交流スペース」を設けるほか、カフェなど軽飲食ができる場も置く予定とし、2029年度以降に順次完成させる計画です。

区によって建て替え時の環境やニーズが異なるため、鶴見図書館の仕様が踏襲されるわけではありませんが、18区で最古の築年数となっている港北図書館を建て替えることになった際は参考例となりそうです。

)この記事は「横浜日吉新聞」「新横浜新聞~しんよこ新聞」の共通記事です

【関連記事】

<横浜の図書館ビジョン>今後も「1区1館」は変えず、取次所や機能拡充に前向き(2024年2月26日)

【参考リンク】

横浜市会こども青少年・教育委員会「図書館ビジョンの具体化に向けた市立図書館の現状と課題について」PDF、2024年9月19日)

横浜市図書館ビジョン(2024年3月)


カテゴリ別記事一覧