【レポート】まだまだ変化は続きそうです。横浜駅のJR西口駅ビルや北側(東京寄り=鶴屋町)で行われていた大型再開発に一定のメドがつくなか、今度は南側(桜木町・保土ヶ谷寄り)の西口・東口の双方で再開発構想が動きつつあります。
横浜駅の南側では、東口の「横浜中央郵便局」を核とした市街地「みなみ東口地区」(約1.3ヘクタール=1万3000平方メートル)で日本郵政グループやJR東日本、京急(京浜急行電鉄)などが参画する再開発準備組合が今年(2024年)6月10日に発足しました。
一方、西口は相鉄(相模鉄道)グループが「西口大改造構想」と題したまちづくりのコンセプトをこのほどまとめ、その第一弾として2020年代後半から「相鉄ムービル」を建て替える方針を明らかにしています。
東口「中央郵便局」の一帯を再開発へ
駅東口の南側「みなみ東口」の付近に建つ横浜中央郵便局の一帯は、“ステーションオアシス地区”と名付けられ、2006(平成18)年に大規模地権者の日本郵政グループ(当初は日本郵政公社)とJR東日本、京急が横浜市を交えた「開発推進協議会」を設け、再開発へ向けた議論を続けてきました。
この一帯については、「商業・業務施設や倉庫、鉄道施設等が立地しているものの、鉄道により地区が分断され、低・未利用地が多く、駅直近の立地特性を生かした土地利用がなされていない状況です。さらに、隣接するみなとみらい21地区及び平沼地区とのアクセス性や地区内の回遊性に課題があります」(第145回都市計画審議会の案件概要)として、2017(平成29)年には市が周辺約約2.5ヘクタール(2万5000平方メートル)を対象に「地区計画」を決定。
「土地の高度利用を図り、国内外の多様なニーズに対応した商業・業務機能等を集積する」「デッキ、地上、地下レベルで構成される立体的な歩行者ネットワークの構築を図り、横浜駅周辺における円滑な移動・回遊性の向上に寄与する」(同地区計画)などの方針を正式に決めています。
今後、周辺の中小ビルまとめて高層化したうえで、歩行者が駅の東西やみなとみらい方面などへ移動しやすい環境をつくる、という考え方のもとに再開発が行われることになりました。
現時点で再開発組合を設立する前段階の「準備組合」の発足まではこぎつけていますが、同準備組合が再開発を検討する範囲は、地区計画が決定された約2.5ヘクタールのうち、約1.3ヘクタールにとどまります。
地区内は地上部に京急、JR東日本の根岸線と東海道本線・横須賀線、地下に横浜市営地下鉄ブルーラインの線路が通過するうえ、周辺の地盤が軟弱という課題があるとされます。2004(平成16)年1月までは地上部に東急東横線(横浜~桜木町間=廃止)の線路もあり、現在も一部の高架橋が残されたままです。
準備組合が再開発を検討するのは、根岸線の線路手前までで、東海道本線・横須賀線や地下のブルーライン、旧東横線跡にはかからない範囲とし、その他のエリアは現時点で取り残されることになりました。
一方、東口の駅前に位置する横浜中央郵便局は敷地面積が6450平方メートルあるとされ、検討範囲の半分を占めます。
2019(平成31)年3月には資産活用の一環で郵便業務に使っていた裏側の「別館」を「アソビル」というエンタテインメント施設に変えて暫定利用を開始。好評を集めていることから見ても、中央郵便局が置かれた場所の潜在価値の高さを示しています。
現時点で再開発計画の具体的な案は明らかになっていませんが、「東口再編の中心的なプロジェクト」(横浜市)だという今回の“ステーションオアシス地区”の再開発が進展すれば、横浜駅の利用者に大きな影響を与えることになりそうです。
西口「相鉄駅ビル」建て替えも視野
駅西口では、「高島屋」と「ジョイナス(JOINUS)」のある相鉄の駅ビル付近から「横浜ビブレ」や「相鉄ムービル(映画館など)」が位置する南幸2丁目付近までの一帯をイメージした「西口大改造構想」を9月11日に相鉄グループが打ち出しました。
相鉄が所有する施設では、高島屋とジョイナスが入る相鉄の駅ビル「新相鉄ビル」が完成から半世紀以上が経過したことに加え、1978(昭和53)年竣工の横浜ビブレ(2015年リニューアル)と1988(昭和63)年竣工の相鉄ムービルも四半世紀を軽く超える年月が経っています。
現時点では相鉄ムービルの建て替え(2020年代後半)のみが決定している段階ですが、駅ビル(高島屋・ジョイナス)についても「建て替えを視野に入れて今後検討していく」(相鉄アーバンクリエイツ・左藤誠社長)としています。
相鉄の駅ビル付近では、駅前商店街の「西口(幸栄)地区」や「西口五番街地区」も再開発準備組合を結成して長年議論を続けてきました。
駅西口は相鉄の施設だけでなく、「同じ時期に同じタイミングで開発が行われた経緯があり、老朽化も同じようなところに存在している」(相鉄ホールディングス・滝澤秀之社長)ことから、自社の所有物件を核として周辺の企業などと連携しながら再開発を進めたい考え。
今回相鉄グループが発表した“大改造構想”では、駅西口の魅力に「Wellーbeing(ウェルービーイング=豊かさ)」をプラスした“Well-Crossing(ウェル・クロッシング)”というコンセプトを掲げ、地元企業や行政と連携しながら2040年代の実現を目指したまちづくりを行うといいます。
具体的な計画は現時点で相鉄ムービルの建て替え以外は決まっていませんが、駅西口の中心的な存在である相鉄が先導することで、駅周辺の再開発へ向けた機運を高められるかどうかに注目が集まります。
なお、2024年7月時点における横浜駅周辺の再開発計画(想定含む)と完成・事業済み計画は次の通り。今後の再開発は駅南側(桜木町・保土ヶ谷寄り)を中心に進行することになりそうです。
(※)この記事は「横浜日吉新聞」「新横浜新聞~しんよこ新聞」の共通記事です
【関連記事】
・横浜駅の反町寄りに相鉄・東急の「高層ビル」完成、6月20日に飲食店などが開業(2024年6月14日、反町・東神奈川寄りの鶴屋町地区)
・<レポート>楽しくなった「横浜駅」、今夏の“小さな行楽”スポットに(2020年8月20日、JR駅ビルの再開発など)
【参考リンク】
・横浜駅みなみ東口地区市街地再開発準備組合の設立について(2024年6月11日、京浜急行電鉄ほか)
・「横浜駅西口大改造構想」を発表【相鉄ホールディングス・相鉄アーバンクリエイツ】(2024年9月11日、相鉄)
・横浜駅「駅周辺施設・整備事業」(再開発計画の一覧など、横浜市都市整備局)