慶應初の“学生ロケット”打ち上げ計画進行も、コロナ禍で資金難に直面 | 横浜日吉新聞

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新型コロナ禍のさなかに入学した慶應大生6人が制約続きの学生生活を取り戻そうと、「ハイブリッドロケット」と呼ばれる比較的安価なロケットを独自に打ち上げるプロジェクトを立ち上げて製作を進めてきましたが、ここにきて資金難に直面しています。

2014年に結成された学生団体「宇宙科学総合研究会LYNCS(リンクス)」のサイト

このプロジェクトを立ち上げたのは、慶應義塾大学日吉キャンパス矢上キャンパス(日吉3)を中心に活動する公認学生団体宇宙科学総合研究会LYNCS(リンクス)」のメンバーで、理工学部2年生の舘岡佳蓮さん(物理学科)、同2年生の四十田裕紀さん(機械工学科)ら6人です。

プロジェクトのポスターデザインについて話し合う舘岡さん(右端)や四十田さん(左2人目)らメンバー(11月28日、矢上キャンパス)

天体やロケットなど“宇宙好き”な学生が集まって2014(平成26)年に結成された同団体ですが、2020年春から続く新型コロナウイルス禍では、オンラインを中心に授業が進められたこともあって活動が停滞

コロナ禍が少し落ち着いたことを機に、これまで制限続きだった活動を取り戻そうと意気込み、新たに挑んだのがハイブリッドロケットの打ち上げでした。

ハイブリッドロケットは固体燃料と液体酸化剤を使ったロケットで、構造がシンプルなうえ製作費も比較的安価であることから大学の学生団体などが独自に制作するケースも目立ち、伊豆大島や秋田県能代(のしろ)市では共同の打ち上げ実験が定期的に開かれています。

ハイブリッドロケットの設計から製作まで学生が行っている(写真は同団体提供)

一方、慶應大では宇宙を専門領域とする専門の学部や学科が設けられていないこともあり、学生が独自にハイブリッドロケットを制作するうえで後ろ盾となる組織がないのも現状です。

また、学生団体のLYNCS(リンクス)は、コロナ禍で新入生の勧誘がままならず、部費による収入が減って活動費を捻出することが難しくなっているといいます。

来春に伊豆大島で行われる共同打ち上げ実験に参加するためには、現在進めているロケット製作を急ぐ必要があり、メンバーらは資金を集めるため「クラウドファンディング」を開始。

クラウドファンディングを始めたが現在は苦戦している(CAMPFIRE=キャンプファイヤーのプロジェクトページより)

ただ、12月1日時点では目標額の300万円に対し、集まったのは1割に満たない金額にとどまっており、打ち上げの実現に向けて暗雲が立ち込めています。

舘岡さんらメンバーは「入学からこれまで満足な活動ができなかったので、今回は何とかして成功させたい」とポスターを新たに制作し、日吉の商業施設に掲出を依頼するなど、街を歩いて知名度を上げる活動を続けている最中です。

慶應大は、卒業生に宇宙飛行士向井千秋さん(医学部卒)や星出彰彦さん(理工学部卒)を輩出し、現在も宇宙事業や宇宙研究に携わる教員が目立つなど、専門の学部・学科を持たないなかでも長年にわたって宇宙分野と関わり続けてきた歴史を持ちます。

ハイブリッドロケットの打ち上げ計画を知ってもらおうとポスターも新たに制作(同団体提供)

慶應でも宇宙を諦めない」という心意気で学生が独自に始めたロケット打ち上げの初挑戦は、慶應と宇宙の関係において重要な1ページとなるはずです。

【参考リンク】

クラウドファンディングCAMPFIRE(キャンプファイヤー)「挑戦はワクワクだ。学生の力でハイブリッドロケットを飛ばせ!」(慶應大学・宇宙科学総合研究会LYNCS、2022年12月31日まで募集)

慶應大学公認学生団体「宇宙科学総合研究会LYNCS(リンクス)」(活動内容など)


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