<ST線フォーラムレポ5>住民主導で農・住・学の融合目指す~羽沢・和田さん | 横浜日吉新聞

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【ST線フォーラムレポート(5)】今月(2022年)8月19日に慶應義塾大学日吉キャンパス内の協生館「藤原洋記念ホール」で行われた「相鉄・東急直通線フォーラム~開業後の“未来を語る”」(ST線フォーラム、一般社団法人地域インターネット新聞社主催)のなかから、今回(第5回)は羽沢地区の和田勝己さん(羽沢駅周辺地域まちづくり連絡会会長)の講演をお伝えします。

【講演】羽沢地区・和田勝己さん(羽沢駅周辺地域まちづくり連絡会会長)

羽沢駅周辺地域まちづくり連絡会の和田さん

ただ今、紹介していただいた和田です。私は羽沢駅(羽沢横浜国大駅)の開業が明確になった2008(平成20)年以来14年間、開業に関する案件に関わってきました。

これまで地域として取り組んできた内容、それと今後の展望についてご紹介します。

こちら(下の画像)は羽沢地域の概要です。周辺は神奈川区と保土ケ谷区にまたがっています。交通網は中央に東海道貨物線の「横浜羽沢駅」があり、地下部には「相鉄・JR直通線(相鉄新横浜線)」の羽沢横浜国大駅があります。

羽沢地域の概要

道路では「環状2号線」が通り、現在は都市計画道路の「羽沢池辺(いこのべ)線」が工事中です。

羽沢は農業が非常に盛んなところであり、新興住宅地でもあります。また、横浜国立大学が位置しています。

駅の周辺はとにかく何もないところです。公共交通機関は路線バスのみで、かつて“羽沢は横浜のチベット”とも言われていたくらいです。

和田さんのプロフィール

羽沢の将来を議論した「まちづくり協議会」

まず、地域で最初に取り組んだことは「羽沢駅周辺地区プラン」の協議会案の策定です。

横浜市は羽沢駅周辺の将来の目標と方針を定めるため、2008(平成20)年10月に「羽沢駅周辺地区まちづくり協議会」を発足しました。

構成メンバーは町内会長、地域の代表、農業従事者、横浜国大、鉄道事業者、横浜市です。

羽沢の将来を左右する協議だったこともあり、活発な議論が展開されていたことを今でも鮮明に覚えています。

協議会では、2010(平成22)年3月に「協議会案」を策定し、2015(平成27)年5月には横浜市が協議会案をもとに「羽沢駅周辺まちづくりガイドライン」を策定しました。

このガイドラインが策定されたことにより、協議会は一応その役目を果たしたということになりますが、体制は維持し「羽沢駅周辺地域まちづくり連絡会」に衣替えをして現在に至っています。

羽沢横浜国大駅の周辺では、「羽沢駅周辺まちづくりガイドライン」が今後のまちづくりの指針となります。

ガイドラインの基本理念の「1」として、「様々な機能がバランスよく共生するまちづくり」があり、次に2として「営農を支援し、農地や樹林地などを保全・活用するまちづくり」、3として「駅へのアクセスに優れ、安全性を確保したまちづくり」を掲げています。

こちら(下記画像)が羽沢駅周辺地区の将来像です。

土地の利用方針は大きく7区分に分け、それぞれの方針に基づき土地利用の推進を図ることにしています。

また、道路・交通の方針として「新たに地域幹線道路、また駅アクセス道路、歩行者動線の検討を行う」としました。

坂道の「過酷な環境」改善へ地域で動く

次に取り組んだことは、「羽沢横浜国大駅バリアフリー基本構想(素案)」の策定でした。

バリアフリー基本構想とは、高齢者あるいは障害者が利用する施設が多く集まっている地域において、公共交通機関あるいは道路・建物等のバリアフリー化を重点的かつ一体的に推進するという施策です。

取り組みの背景は、新駅開業、また駅周辺の再開発により、駅周辺の交通量が増大することは目に見えてはっきりしています。

それに対して駅へのアクセスは、とにかく坂が多く、道路が狭い。身障者あるいは高齢者にとっては過酷な環境にあるにもかかわらず、対策が何も取られていません。

そうしたことから横浜国大常盤台地域ケアプラザ(保土ヶ谷区)、地域自治会から構成されているワークショップにおいて、住民提案による基本構想(素案)の策定に取り組むことにしました。

2019(平成31)年2月に基本構想の草案について、横浜市に住民提案を行いました。住民提案が横浜市に承認され、今年(2022年)5月31日にこの草案が「羽沢横浜国大駅バリアフリー基本構想」として認定・策定されました。

バリアフリー基本構想を住民自ら提案

この基本構想の特徴として、第1点は「住民提案」であることです。

これまでに横浜市では30ほどのバリアフリー基本構想の提案がありますが、全てが行政主導でした。住民提案は本件が初めてで、これは全国的に見ても非常に稀なケースです。

第2点目は、羽沢横浜国大駅が開業する前の提案であったことです。一般的には開業しているところが対象になっていますが、開業前であるということで、これも大変珍しいケースです。

第3点として神奈川区と保土ケ谷区の2区にまたがっていることです。このように異例ずくめの提案でした。

こちらはバリアフリー基本構想を示した内容です。

まず重点整備地区の範囲を確定することに始まり、次に生活関連施設を特定します。生活関連というと、病院、駅、福祉施設です。生活関連経路を明確にする。これは施設間の道路です。

それから、バリアフリー化の内容を定める。これは入口段差の解消、路面表示の改修、バリアフリートイレに取り替えるといったことです。いろいろとあります。

多い移住者、愛着を持ってもらう取り組み

次に取り組んだことは「地域まちづくりプラン」の策定です。

この取り組み背景ですが、羽沢の住民はよそから来た人が非常に多く、私もその一人です。駅前再開発などにより今後ますます他からの移住者が増える見込みです。

一般的に他の地域から来た人は、地域に対する誇りあるいは愛着が希薄であるといわれています。

そこで、地域でできるまちづくりの目標として「住人が地域に誇りを持ち、愛着を持って暮らせるまちづくり」を目指しました。

そのためにはまず地域を知ってもらうこと、それを見える化するということで、「(周辺の案内などを行う)サインづくり」に取り組むことにしました。

2019(令和元)年8月には、活動を円滑に推進するため、「羽沢横国まちづくり協議会」として横浜市の地域まちづくりグループに登録しました。

いろいろと検討していましたが、「サインづくり」をさらに発展させ、地域全体のまちづくりの目標と具体的な方針を定めるために、今年4月に地域まちづくりプランに取り組むことにしました。

これ(上部の画像)が「サインづくり」のイラストです。これについて具体的に今、取り組んでいます。

「情報発信・地域交流拠点」を整備へ

次に今後の展望としては、「農・住・学を融合した愛着を育てるまちづくり」を目指しています。

“農・住・学”が程良く存在している羽沢地域は、農業が盛んで、新興住宅地があって、また横浜国大があって学生の街でもあります。

横浜駅から車でわずか10分のところでありながら農・住・学が程良く存在し、ポテンシャルが極めて高い地域です。

今後、予定されているのが「情報発信・地域交流拠点」(羽沢横浜国大駅前)の整備です。

住宅、各種商業施設、医療施設、子育て支援等々が整備されます。また、大学活動支援施設あるいは農業活動支援施設などの情報発信拠点が整備され、さまざまな情報発信が今後行われる予定です。

また、3800平方メートルのプロムナード(遊歩道)が整備され、そこでは各種イベントまたはお祭りなどで賑わうことになります。

「農・住・学を融合した愛着を育てるまちづくり」ということで、相鉄・東急直通線の開通、あるいは駅前再開発により地域全体の活性化が図られます。

特に情報発信・地域交流が活性化することにより農・住・学の融合が一層促進され、より便利に、より住み良い羽沢になることを期待しています。

今後、羽沢の多くの住人が羽沢に誇りを持ち、羽沢に愛着を感じ、そして羽沢が好きになる、そんな羽沢の5年後・10年後が大いに楽しみです。ご清聴ありがとうございました。

<フォーラム後の一言>

横浜国大の高見沢実先生(この後に登壇)から沿線の連携というお話がありましたが、各駅によってさまざまな取り組みがあることが分かりました。

各駅それぞれの催しなどを連携することによって、さらに相乗効果が期待できるのではないかということを、つくづく感じました。ありがとうございました。

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