長年続く「横浜環状鉄道」の事業化検討、状況は大きく変わらず

横浜日吉新聞

【2022年2月時点の記事です】グリーンラインの鶴見駅延伸など長年にわたって検討が続けられている“横浜環状鉄道計画”について、来年度の検討調査費は前年と同額にとどまりました。

きょう(2022年)2月9日(水)から横浜市会(市議会)での本格審議が行われる2022年度の市予算案で、都市整備局は「横浜環状鉄道」など構想路線の事業化に向けた検討調査費を前年と同じ300万円とし、来年度も沿線人口などのデータ収集や更新といった基礎的な調査を進める考えです。

ブルーラインの終着駅、あざみ野駅(青葉区)から6.5キロ先の新百合ヶ丘駅(川崎市麻生区)まで延伸する計画は事業化に向けて着々と進展(横浜市の「高速鉄道3号線の延伸」ページより)

現在、横浜市が中心となって進める鉄道路線の計画は2つあり、このうち「ブルーライン(高速鉄道3号線)の延伸」(あざみ野駅~新百合ヶ丘駅)は、川崎市とともに事業の推進を決定。来年度は1億1500万円の予算を組み、概略設計や土質調査などを行うとしています。

もう一つの「横浜環状鉄道」は、事業化検討調査費として3年連続で同額の300万円を維持。都市整備局によると、新年度は国勢調査の結果を踏まえた沿線の人口動向や「パーソントリップ調査」のデータ収集・更新などを行う予定で、調査内容は前年までと大きく変わることはないといいます。

横浜環状鉄道の計画はグリーンラインとみなとみらい線が完成しており、2030年を念頭に置いたという「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」(2016年「交通政策審議会」答申)にも盛り込まれているが、同答申内では「事業性に課題」があるとされ、「横浜市等において事業性の確保に向けた取組等を進めた上で、事業計画について十分な検討が行われることを期待」するとしている(「横浜市における鉄道計画」のページより)

横浜環状鉄道は、鶴見(鶴見区)~日吉(港北区)~中山(緑区)~二俣川(旭区)~上大岡(港南区)~東戸塚(戸塚区)~根岸(磯子区)~元町・中華街(中区)~横浜(西区)~鶴見といったルートで、JR京浜東北線などの既存路線を含め、市内をぐるりと円形状に鉄道で結ぼうという計画です。

1985(昭和60)年に出された国の答申で根岸から鶴ヶ峰(旭区)間の計画検討が俎上に載り、1993(平成5)年には当時の高秀秀信市長が市内の“シティループ(環状)化”を提唱したことを機に議論が進展。

東京や大阪の中心部では山手線や大阪環状線といった環状路線が重要な役割を果たしており、横浜市内でもあらゆる地域から最寄り駅まで15分でアクセスできる交通体系を整備するという目標を掲げ、その実現に必要な路線として構想されたものでした。

1994(平成6)年になると市は「ゆめはま2010プラン」と名付けた長期ビジョンに横浜環状鉄道の計画を盛り込み、2004(平成16)年には「みなとみらい線」(元町・中華街~横浜)、続く2008(平成20)年に「グリーンライン」(日吉~中山)を相次いで開業させ、計画の一部は実現しています。

ただ、その後は「相鉄・JR直通線」(2019年11月開業)や「相鉄・東急直通線(新横浜線)」(2023年3月開業予定)、「ブルーラインの新百合丘延伸」(2030年開業目標)といった計画の事業化を優先。グリーンラインの開業以降も検討自体は行われてきたものの、横浜環状鉄道の計画が大きく前へ進んだ形跡は見られません

「横浜環状鉄道」の各区間が開業すると利便性は大きく高まる(「横浜市における鉄道計画」のページより)

2014(平成26)年に市は「横浜市における鉄道を軸とした交通体系について」をまとめ、そのなかで横浜環状鉄道については「多額の費用を要することから長期的に取り組む路線」、「鉄道のネットワーク機能や効率的な運営を確保するために、まずグリーンラインやみなとみらい線の隣接区間から検討を進める」といった方向性を提示

グリーンラインを延伸する形の「日吉~鶴見」と「中山~二俣川」、みなとみらい線と接続する「根岸~元町・中華街」の3区間については、推進に向けた検討を引き続き行うものの、全線で7700億円程度と多額の事業費が必要なうえ、現時点では大きな需要を見込めないことから事業化へ踏み出せず、長期的に取り組むという方針を現在まで変えていません。

現在のグリーンラインは日吉駅前の中央通りを抜け、慶應義塾大学日吉キャンパス内の地下で止まっている(日吉駅)

横浜環状鉄道の調査検討に関わる予算を見ても、首都圏の鉄道構想をまとめた「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(交通政策審議会答申)」が国から示された翌年の2017(平成29年)度には年間1000万円を確保していましたが、その後は減少。過去2年間は毎年300万円で、新年度の予算案も同額を計上しています。

市の関係者は、「300万円の予算でできることは限られている。なにより、新型コロナ禍の今、需要予測の調査をしたところで、計画を進めるための良い材料が出る可能性は少ない」と話します。

グリーンラインは今夏からの順次6両編成化を控えている(高田駅)

また、横浜環状鉄道の担い手として期待される市交通局は、新型コロナウイルス禍で経営状況が悪化するなか、グリーンラインの6両編成化やブルーラインの新百合丘延伸といった大型プロジェクトをすでに抱えています。

市が出資する第三セクター「みなとみらい線(横浜高速鉄道)」は、相互直通する東急線との通勤定期券の割引率縮小を決めるなど、通勤客が減少。同じ市傘下の第三セクターでは横浜シーサイドラインが、市が瀬谷区で2027年に企画する「国際園芸博覧会」のアクセス鉄道計画への参画に難色を示すなど、市内の鉄道計画を取り巻く状況が良いとはいえません。

きょう2月9日から始まる横浜市会の本格論戦で横浜環状鉄道が取り上げられ、計画推進への機運を高める議論が交わされる機会はあるのでしょうか。

【関連記事】

横浜市が鉄道計画ページを刷新、注目度の高い「横浜環状鉄道」情報も集約(新横浜新聞~しんよこ新聞、2021年10月7日、過去の需要予測についても)

「日吉駅~鶴見駅」間の事業化検討を明記、京浜臨海部の再編整備プランに(2018年10月1日、鶴見区の現状など)

【参考リンク】

横浜市における鉄道計画(都市整備局都市交通部)

横浜環状鉄道の新設(日吉~鶴見/中山~二俣川~東戸塚~上大岡~根岸~元町・中華街)(横浜市における鉄道計画)


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