5年間の活動成果を伝えたい――学生の熱い想いで、慶應義塾と日吉の街が歩んだ日々を振り返ります。
慶應義塾大学日吉キャンパス(日吉4)などでおこなわれた「東京2020オリンピック・パラリンピック」の事前キャンプのために来日した英国(イギリス)代表選手団をサポートする活動をおこなった学生団体「KEIO(慶應)2020プロジェクト」。
昨年(2021年)末にも近い12月15日(水)18時30分から19時40分まで、2016年度から2021年度までの5年間の活動を振り返る「KEIO 2020プロジェクト活動報告会」を、オンライン会議システム「Zoom(ズーム)」を使用しておこないました。
「大感謝祭」と銘打ち実施された今回の活動報告会は、同プロジェクトの活動拠点となった日吉キャンパス内の体育研究所から生配信。
共同代表を務めた大類なをみさん、杉山佑さん、鮎澤誠二さんの3人のほか、割田千咲さん、後藤日向子さん、河原彩乃さん、本多夏穂さんがこれまでの活動を報告。
本格的な活動は2017年度からおこない、今年2022年3月をもって団体としての活動に幕を下ろす同プロジェクトについての歩みを振り返りながら、それぞれの活動についての所感や想いも披露していました。
最大級の選手団、最多人数のアスリートが拠点と市も評価
本来、2020年に開催予定だった「東京2020オリンピック・パラリンピック」のキャンプ地の一つに慶應日吉キャンパスや都筑区の横浜国際プール(北山田駅近く)、川崎市の等々力陸上競技場(中原区)が使われることが発表されたのは2016(平成28)年1月。
しかし2020年になり、日本で猛威をふるった新型コロナウイルス感染症のため、オリンピック・パラリンピックの開催が1年延期に。
この日の「大感謝祭」に参加した横浜市オリンピック・パラリンピック推進課の加藤久雄課長は、「日本全国の中で最大級ともいわれる約900人もの選手団が来訪し、その中でも、英国チームの方々が最も多く練習をおこなった会場」と慶應日吉キャンパスについて説明。
昨年7月から8月までの約2カ月間滞在した英国チームとの交流、そして世界屈指のアスリートたちを試合会場へと送り出す様子について、「新型コロナでかなりの制限があったものの、選手の皆さんを最高のコンディションで大会に送り出すための様々な取り組み、創意工夫で最大限のおもてなしをおこなっていただいた」と、その活動を称えていました。
慶應、そして日吉の街に残した「レガシー」とは
1年間の延期、そして「コロナ禍」が猛威を振るった夏時期の開催という数々の試練を乗り越えた同プロジェクトのメンバーたちが、日吉周辺地域に残したものとは。
2018年には約100人が入会、2019年には200人を超える団体となった同プロジェクトがまず参加したのは、両年ともに新横浜少年野球場(新横浜2)で開催された「ふるさと港北ふれあいまつり」。
英国キャンプの告知や文化を発信するブース出展で、港北区民最大級のイベントに、学生らしいパワーと華やかな彩りを加えていました。
2019年には地元・横浜市立日吉台小学校(日吉本町1)でおこなわれた「日吉本町東町会盆踊り大会」に、駐日英国大使館太鼓会「どんBRI(ぶり)」とともに参加し、町内会メンバーと五輪音頭を一緒に踊るなど地域を盛り上げました。
また、2018年の英国への視察から学んだという成果として、約3年間もの時間をかけて、日吉キャンパスの「バリアフリーマップ」を制作。
実際にパラリンピックの選手団からも好評を博したほか、今後も、日吉キャンパスを訪れる車いすユーザーに提供されるといいます。
さらに、英国選手たちが街あるきを楽しめるようにと2018年8月から「ひよしマップ」を制作。日吉商店街と協力し、日本語版と英語版の2種類が誕生、同プロジェクトのホームページで現在も閲覧が可能とのことです。
「最大級」のピンチ乗り越え築いた“地域との絆”
本来オリンピックが開催される予定だった2020年5月には、過去最大級規模のイベント「日吉ブリティッシュウィーク」の開催を日吉駅前商店街で予定していましたが、新型コロナ禍によりやむなく中止に。
10以上の企画チーム、80人以上の学生が日吉商店街や港北区をはじめとした多くの人々と企画準備を進めていましたが、イベントが中止になった上、オリンピックも1年延期になるという不運に見舞われることになってしまったのです。
それでも、「日吉ブリティッシュウィーク」の企画を日吉商店街側としておこなった日吉商店街協同組合の西脇秀人理事も、“大変であった”プロジェクトの労をねぎらいながらあいさつ。
「『ひよしマップ』を作っていただいたり、盆踊り大会を一緒におこなったり、想い出深い。改めて地域のつながりが大事であると感じました。オリンピックを通じて皆さんの“顔”が見えて、今後も地域どうしつながっていけるオリンピックになったのかなと(感じました)」と、2016年からの時の経過を思い起こしながら、懐かしそうに学生たちとのかかわりを深めた日々を振り返っていました。
本来ならば、より「多くの人々」がより深く交流と親善を深められたであろう「東京2020オリンピック・パラリンピック」。
人類を襲った未曾有(みぞう)の新型コロナウイルス禍という一大ピンチをも乗り越えて、その任を終えた同プロジェクトのメンバーの顔には、すがすがしい笑顔と、「プロジェクトを達成した」という自信に満ちた表情がみなぎっているかのようでした。
「人と人」との分断を加速させたともいえる新型コロナウイルス禍だからこそ、「人との距離感」をより大切に、またより深い“絆”として、語り合える。
慶應義塾大学と、日吉、そして港北区とのつながりが新たに生まれた「レガシー」としての「東京2020」を、一人ひとりが受け止め、またこれからの地域まちづくりやそれぞれの人生に活かしていくことが期待されそうです。
【関連記事】
・<慶應日吉>英国が事前キャンプ開始、オリ・パラ期間に「エリア分け徹底」(2021年7月8日)
・<日吉台小>8/3(土)盆踊りで英国を歓迎、大使館のゲスト来場で交流も(2019年8月1日)
【参考リンク】
・KEIO 2020 projectより団体の今後に関するご報告(同プロジェクト公式サイト)※活動報告書である「YEARBOOK」、今夏の英国代表事前キャンプについて動画形式でまとめた「ドキュメンタリー」を今年3月までに公開できるよう制作中とのこと
・ひよしマップのWeb公開について(同)
・日吉エリア バリアフリーマップ (同)
・KEIO 2020 project(YouTubeチャンネル)※ウエルカム動画制作に日吉商店街や港北区も協力した