<日吉・綱島>2020年春から1年の閉店・出店動向、コロナ禍でも買物環境は維持 | 横浜日吉新聞

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学校の一斉休校やイベントの中止、さらには緊急事態宣言といった新型コロナウイルスの災禍が広がり始めてから1年。世界中が未曽有の危機に見舞われるなか、日吉・綱島・高田エリアでも、飲食店を中心に多くの商業店舗が影響を受けています。今年(2021年)2月までの閉店や出店動向を振り返りました。

象徴的だった旅行・レンタル・銀行業

2020年8月に閉店した「JTB日吉駅前店」は駅前一等地と言える場所にあった

新型コロナ禍で象徴的だったのが、日吉駅前商店街にあった「HIS(エイチ・アイ・エス)日吉営業所」(日吉本町1、2020年6月閉店)と「JTB日吉駅前店」(同、2020年8月閉店)の撤退。

旅行商品のインターネット販売が広がり、リアル店舗の削減が行われているなかで、新型コロナ禍による旅行需要の“蒸発”が追い打ちをかけた形です。旅行業界最大手と格安航空券の元祖による店舗撤退は、新型コロナ禍での苦境を象徴する出来事といえそう。

緊急事態宣言中の2020年5月に閉店した「TSUTAYA日吉中央通り店」、現在は学習塾の「四谷大塚日吉校舎」となった

インターネットに需要を奪われたという面では、日吉駅近くで16年間にわたって営業し、コロナ禍前に閉店を決めていたCD・DVDのレンタルチェーン「TSUTAYA(ツタヤ)日吉中央通り店」(日吉本町1、2020年5月閉店)の撤退も似た状況です。

同チェーンでは、一昨年(2019年)1月に「大倉山店」、同年9月には樽町の川崎町田線沿いにある「ライフガーデン綱島店」が店を閉じており、周辺でも店舗数が年々減少しています。

三菱UFJ銀行日吉駅前支店」(日吉本町1、2020年1月閉店)の閉鎖も象徴的で、一昨年12月に高田駅前で「横浜銀行高田支店」が店舗を閉じたように、運営コストのかかる銀行のリアル窓口を減らし、無人のATMコーナーが残れば良いほうで、基本はインターネット取引への誘導という形がスタンダードとなりそうです。

2020年10月に閉店した「ココス綱島店」(写真上)と11月に閉店した「華屋与兵衛日吉店」(写真下)はいずれも“すき家”などで知られるゼンショーホールディングスの傘下。日吉の華屋与兵衛の並びにある「ココス日吉店」は営業中

2020年10月に閉店した「ココス綱島店」(写真上)と11月に閉店した「華屋与兵衛日吉店」(写真下)はいずれも“すき家”などで知られるゼンショーホールディングスの傘下。日吉の華屋与兵衛の並びにある「ココス日吉店」は営業中

大手も撤退が相次いだ飲食店の動向

新型コロナ禍による外出自粛が求められるなか、もっとも影響が大きかったのが飲食店です。

日吉・綱島・高田エリアでは、同じ区内でも新横浜のように、イベント客もビジネス関係者も激減し、飲食ビルからテナントがごっそり撤退するような状況こそ見られなかったものの、日吉・綱島・高田エリアでも中小大手を問わず大きなダメージを受けました。

大手チェーンではチムニーグループの「さかなや道場綱島東口店」(綱島東1)が昨年4月と5月の休業要請を機に閉店し、ゼンショー傘下ではハンバーグチェーン「ココス(COCO’S)綱島店」(綱島西3、2020年10月閉店)と「華屋与兵衛日吉店」(日吉7、2020年11月閉店)が相次ぎ撤退。現在までに跡地活用は行われていません。

旧華屋与兵衛の建物を活用して昨年10月に開店した「はま寿司港北高田店」はオーダーごとにレーンで席まで届けるスタイルの店舗

高田でも昨年3月に「華屋与兵衛港北高田店」(高田東3)が閉店したものの、新型コロナ禍前にグループ内の別業態による出店方針が決まっていたことが奏功した格好。

華屋与兵衛の閉店から半年後の同年10月に開店したゼンショー傘下の「はま寿司港北高田店」は、“回らない回転寿司店”として、新型コロナ禍に対応したスタイルとなっています。

タピオカの次は「唐揚げブーム」か

2018年以降に始まった「タピオカ」ブームでは、日吉や綱島での出店が目立ちましたが、すでに一部で撤退が始まっており、それに代わって新型コロナ禍で本格化したのが「唐揚げ」ブーム

日吉駅前中央通りでは“かつや”傘下の唐揚げ業態「からやま」(写真左)の目の前に出店したワタミの「から揚げの天才」(写真右)

その兆候は一昨年の2019年ごろから見られ、日吉駅前中央通りではカツ専門のファストフード店「かつや」傘下の唐揚げ業態「からやま」が同年6月に出店。すかいらーくグループは綱島西口でカウンター式のファストフードレストラン「Sガスト」を閉めて「から好(よ)し」に転換(2019年7月)しています。

新型コロナ禍で登場したのが居酒屋チェーンで知られる「ワタミ」でした。持ち帰り専門の唐揚げフランチャイズ業態「から揚げの天才」を昨年11月に綱島駅西口で、続く12月には日吉駅前中央通りの「からやま」の目の前といえる位置に出店。比較的安価でフランチャイズ出店できることを強みに店舗数を拡大中です。

ワタミの「から揚げの天才」は出店のしやすさで店舗を拡大する(写真は2020年11月にオープンした綱島店、右側は「富士そば綱島店」)

このほか、中小規模の唐揚げ専門店の出店も目立っており、さらには全国系の居酒屋チェーンが突如、昼間に唐揚げ定食やテイクアウト販売を行うようなケースも。日吉・綱島の駅前で唐揚げをめぐって競争激化の気配が見られます。

ただ、日吉・綱島では現在の“唐揚げブーム前”にも「とり多津(たつ)綱島店」(2018年4月閉店)や「とよからあげ日吉店」(2018年5月閉店)といった中小規模の持ち帰りチェーンが複数出店していたものの、撤退した経緯があり、今後の需要動向が気になるところです。

日吉エリアの老舗店が歴史に幕

南日吉商店街の「元祖ニュータンタンメン本舗 日吉店」は2020年3月に閉店した

地域の老舗店では、南日吉商店街で38年にわたって親しまれてきた「元祖ニュータンタンメン本舗 日吉店」(日吉本町3)の閉店が印象的。コロナ禍前から店を閉じることを決めており、昨年3月末に隣の小料理店とともに歴史に幕を閉じました。

そして今年(2021年)は、日吉7丁目の日大高校近くで半世紀以上にわたって営業する弁当店からと商店(唐戸商店)」が3月末限りでの閉店を告知。このほか南日吉商店街でも地域に親しまれた老舗店が閉店する意向であるとの話も聞こえます。

一方、綱島東2丁目の「綱島SST」近くで昨年7月に閉店した定食・弁当店「綱島正吉」では、テイクアウトの弁当店に特化し、12月から日吉7丁目の日大高校前バス停近くに移転して営業を始めています。

生活必需品の買物環境は拡充

昨年2月末に移転閉店となった綱島東の「東急ストア綱島店」跡地には、ほぼスーパーという内容の「クリエイト港北綱島東店」が6月に出店

新型コロナ禍で“暗い1年”だったものの、実は綱島エリアでは買物環境が拡充した1年でもありました。

綱島東2丁目の綱島街道沿いで昨年2月末に移転閉店した「東急ストア綱島店」の跡地には、ほぼ食品スーパーといえる品揃えの「クリエイト港北綱島東店」が6月に出店。

駅構内では同年3月に「東急ストア綱島駅前店」が“復活”し、駅構内の店舗が充実しています。

今年2月にオープンしたばかりの「西松屋」は区内初出店

アピタテラス横浜綱島では、手芸店チェーンや子供向けアミューズメント店が撤退したものの、子ども用品チェーンの「西松屋」が2月に進出するなど、生活必需品の購入環境が拡充しました。

日吉エリアでも、箕輪町2丁目の再開発エリアにイオン系の小型スーパー「ビオセボン(Bio c’Bon)日吉店」が5月に出店しています。

箕輪町2丁目の再開発「プラウドシティ」には、商業施設として小型スーパー「ビオセボン」やレストラン「サイゼリヤ」などが入る商業施設「ソコラ(SOCOLA)日吉」が昨年4月にオープン

また、今年(2021年)は1月に日吉本町駅近くのスーパー「オーケー日吉店」が改装しており、日吉駅直結の「日吉東急アベニュー」でも1階奥の食料品売場(デイリーマート)をリニューアルする計画が進みます。

日吉・綱島エリアで生活必需品の買物スポットが増加する一方、箕輪町2丁目の北綱島交差点近くで旧家電量販店の建物を使い、2013年10月から営業している大型ディスカウントストア「ドン・キホーテ日吉店」が今月3月28日で閉店することをきのう3月1日に発表。雑貨・家電から食料品まで多彩な品目を扱い、深夜帯まで営業している商業施設の撤退は残念なところ。

新型コロナ禍で、在宅勤務やテレワークが広がり、都内への通勤者の多い日吉・綱島・高田エリアでは昼間人口の増加が見込まれ、食品など生活必需品のニーズが低下する可能性は低そう。一方、中小規模の飲食店による苦境は1年以上にわたって続いており、テイクアウトや宅配の利用で地域の店を支えたいところです。

このほか、日吉・綱島・高田エリアの開店や閉店動向については、

をそれぞれご覧ください。港北区内の南部エリアの情報についてはこちらにまとめています。

)見出し左側の画像はイメージ写真(Photo ACより)


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