出産・育児のオンライン相談は有効か、港北区で市内初のモデル事業 | 横浜日吉新聞

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港北区内で「出産・育児」におけるオンライン相談の有効性を検証することになりました。

株式会社KIds Public(東京都千代田区,、写真は同社のプレスリリース)がサービスを展開するオンライン相談サービスで、横浜市初の民間資金を導入したSIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)モデル事業を実施することになった

株式会社KIds Public(東京都千代田区,、写真は同社のプレスリリース)がサービスを展開するオンライン相談サービスで、横浜市初の民間資金を導入したSIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)モデル事業を実施することになった

横浜市政策局は、市で初となる民間資金を導入した「ソーシャル・インパクト・ボンド(Social Impact Bond、略称:SIB)」によるモデル事業を始動。妊娠期から産後4か月までの間の妊産婦を対象とした「オンライン相談サービス」の利用による、母親の産後うつのリスク軽減効果を検証する取り組みが新たにスタートすることになりました。

SIBとは、新しい官民連携の仕組みで、民間の資金やノウハウを活用して社会課題の解決が必要な事業(サービス)を実施し、行政は成果が達成された場合に事業費や報酬を支払う、「成果連動型民間委託契約」の手法のこと。2010年にイギリスで初めてSIBが実施されて以降、世界各国で活用が進んでいるといいます。

今回の市の取り組みでは、人口が市内最多、出産・育児を行う対象者が多いことから港北区での検証が行われることになったとのこと。

モデル事業関係者の構成(実施体制)。それぞれの役割において協力してモデル事業に取り組む(横浜市の記者発表資料より)

モデル事業関係者の構成(実施体制)。それぞれの役割において協力してモデル事業に取り組む(横浜市の記者発表資料より)

事業全体の統括を横浜市、サービスの提供を株式会社KIds Public(キッズパブリック、東京都千代田区)、サービス提供者への助言などの中間支援を行う組織としてEY新日本有限責任監査法人(同)、研究機関として国立大学法人東京大学(同文京区)、第三者評価機関として株式会社公共経営・社会戦略研究所(同千代田区)、そして資金提供者として株式会社横浜銀行(西区みなとみらい)がそれぞれの役割を果たし、協力してモデル事業に取り組んでいくといいます。

具体的には、来月(2020年)9月1日から翌年(2021年)1月29日までに、港北区役所こども家庭支援課(大豆戸町)の窓口に母子健康手帳を受け取りにきた人のうち、参加を希望する先着720人までにモデル事業に参加してもらうための募集案内を行います。

効果検証の流れ。参加登録者が産後3か月を迎える時点でのグループ A とグループ B の質問票スコアを比較し、効果を検証する予定(横浜市の記者発表資料より)

効果検証の流れ。参加登録者が産後3か月を迎える時点でのグループ A とグループ B の質問票スコアを比較し、効果を検証する予定(横浜市の記者発表資料より)

産前・産後期における「オンライン相談サービス」の有効性を検証するため、チャットや通話、動画通話といった双方向性のあるLINEやインターネット、電話を使用したサービスを利用できる「グループA」と、一般的なものから選択する予定だという、インターネット上の「役立つ情報サイト」として情報提供したものを閲覧するのみの(サービスを利用できない)「グループB」を、ランダムで振り分ける(グループA・Bの選択は不可)という方法でグループ分けを実施。

参加登録時から産後4か月を迎えるまでの約11カ月(2022年1月まで)が検証の期間となっており、産後3か月を迎える時点で、産後うつのスクリーニングに用いられる「エジンバラ産後うつ質問票」に協力してもらうことにより、グループAとグループBのスコアを比較、効果を検証するという手法で行うとのこと。

グループAに提供されるサービスは、キッズパブリックが提供する遠隔健康医療相談サービス「小児科オンライン」「産婦人科オンライン」、医療メディア「小児科オンラインジャーナル」「産婦人科オンラインジャーナル」

9月1日から翌年(2021年)1月29日までに、港北区役所に母子手帳を受け取りに行った先着720人の妊産婦(希望者)が対象者となる

9月1日から翌年(2021年)1月29日までに、港北区役所に母子手帳を受け取りに行った先着720人の妊産婦(希望者)が対象者となる

既に2018(平成30)年度には、「小児科オンライン」について、区内の地域子育て支援拠点で70人の協力者を募り、「子育て不安が減少した」という回答が約93%、「小児科オンラインが身近な相談先となった」との回答が約95%という質問票での調査結果を得ており、翌2019年度には、「産婦人科オンライン」について、区内の産婦人科で110人もの対象者を募集、「本サービスのような子育て支援があることにより子育てしやすい街だと思う」と回答した人の割合が約98.5%に上ったといいます。

区役所での企画運営を担う区政推進課の田中郁雄課長は、「妊娠期から、特に不安が強くなりやすい産後4か月までの間に、オンラインで気軽に専門の医師に相談ができるサービスは、コロナ禍においても需要が高まっているともいわれます。スコアを比較するため、サービスを利用しない(できない)Bグループの皆様の回答も重要となります。今回のSIBの有効性をより確かにするためにもご協力いたただければ」と、母子手帳受領者への協力・参加を呼び掛けています。

【関連記事】

港北区が“オンライン医療相談研究”モニター募集、先着720人まで「妊婦さんの協力を」(新横浜新聞~しんよこ新聞より、2020年11月19日)※リンク追記・対象者を広げるために情報を広く公開、ネットからのエントリー受付中

【参考リンク】

横浜市で初めて民間資金を導入したSIBモデル事業が始動(横浜市記者発表資料、PDFファイルへのリンクあり)

横浜市の「ソーシャル・インパクト・ボンド」モデル事業への参画について~妊娠期や産後の母親の不安を和らげるためのオンライン相談事業をサポートします(横浜銀行公式サイト・PDFファイル)

株式会社 公共経営・社会戦略研究所のサイト ※「お知らせ」に同事業についての記述あり

小児科オンライン~会社概要(株式会社Kids Public)


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