9年前のきょう(2020年)3月11日は東日本大震災が起こり、日吉・綱島・高田でも大小さまざまな被害と影響が出ました。「新型コロナウイルス」の感染拡大という“危機状態”にある今だからこそ、大きな危機から脱してきた当時を思い出すために、身近な場所で起きた被害状況を資料から振り返ってみました。
横浜市総務局の「危機管理室」では、市内で起きた災害による被害状況を「横浜市の災害」という冊子に細かくまとめており、2011(平成23)年の版には東日本大震災による市内被害の一覧を掲載。ここでは、近所で発生した建物や道路などの被害状況を知ることができます。
以下、港北区内に関連した内容のみを抜き出してみました。画像はクリックすると拡大します。
被害は港北区の197件が18区で最多
2011年の3月11日は金曜日。週末を控えるなか、多くの人が仕事場で業務にあたっていた時間帯だったため、横浜市でも職員4万380人のうち、約3万3000人の市職員が役所内などで勤務しており、比較的速やかに災害対策に当たることができたことは幸いといえます。
上記に掲載した横浜市内の被害一覧では、18区のなかで、人口が最多という事情もあるためか港北区内の被害件数が197件でもっとも多く、「震度5強」も市内では神奈川区や西区、中区とともに大きいものでした。
港北区内に3カ所ある震度計では、特に日吉本町2丁目の駒林小学校に置かれたものが最多の数値を示しています。
日吉・綱島・高田では人的被害は確認されていませんが、港北区内では3人が重軽傷を負い、菊名7丁目では地震による転倒で重傷と判断された91歳の人がいたとのことです。
綱島東で住居が半壊し200人に影響も
こちらは一般住居を中心とした建物への被害状況をまとめた一覧です。
港北区内のほぼ全域で破損や亀裂といった建物被害が起きていますが、大規模な液状化がみられた小机町での被害が目立ちます。
また、綱島東1丁目の住居では、柱や壁面が地震によるダメージで「半壊」と判定され、57世帯200人が影響を受けました。
日吉と綱島でエレベーター閉じ込め発生
次は学校や道路、塀などにおける被害状況の一覧です。
特に日吉台中学校(日吉本町4)での被害が目立っており、プールや校舎、階段に亀裂がみられたほか、ブロック塀の破損や漏水など13箇所に影響があったといいます。
なお、表中の駒林小学校(日吉本町2)や北綱島小学校(綱島西5)の被害状況に記されている「EXP. J亀裂」とは、「エキスパンションジョイント」という建物の“継ぎ目”に使う金物が被害に遭ったという意味。
高田では西1・2丁目でブロック塀の倒壊や破損が計4箇所確認。このほか両町では、電柱やガス管カバーに破損が起きたほか、西2丁目ではガス漏洩が発生し、消防隊が対応したといいます。
綱島西2丁目のエレベーターでは3人の閉じ込めが発生。救急による救助はなかったと記録されています(「マルニ3名救急の要無し」の記載)。また、日吉本町1丁目と日吉1丁目でもエレベーターに閉じ込められる被害があったとのことです。
大地震でも休まなかった小中学校
冊子「横浜市の災害」には、学校の状況については掲載されていませんが、地震が発生した14時46分は、多くの児童・生徒が学校に残っていた時間帯です。
当時の資料によると、交通網の寸断などで保護者が学校へ迎えに来られないなどの理由から、3月11日(金)の22時時点で横浜市内120小学校で児童724人が残り、翌12日(土)7時時点で22小学校に児童52人が残っていたと記録されています。
また、市内の保育園でも翌12日(土)朝の時点で228園に632人が残っていたとのことです。
一方、市立学校では週末の間に環境整備や安全点検を行えたため、翌週の3月14日(月)は部活動こそ実施しなかったものの、通常通りの授業を行っています。
しかし、度重なる余震の発生と、東京電力から計画停電が行うとの発表が行われたため、翌15日(火)から給食を実施せず、午前中のみの授業に変更。修了式を行う25日(金)までは午前授業と部活動の中止を続けて春休みを迎え、4月5日の新学期からは通常通りの授業となっています。
地震発生後の首都圏では、福島第一原子力発電所の事故とそれに伴う計画停電、さらには余震が日々続き、一部食料品やガソリンの不足に見舞われました。
そんななかでも、翌週からすぐにほぼ通常通りの学校運営を始め、春休みまで午前中だけでも授業を続けていたことは、現在の苦境時にも勇気付けられる近い過去の事例といえそうです。
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【参考リンク】
・冊子「横浜市の災害」の一覧(横浜市危機管理室)