<コラム>“聖火”は車で運ぶ? 五輪の「聖火リレー」は綱島街道を走るのか | 横浜日吉新聞

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【コラム】えっ?「聖火」って車で運ぶんですか――。来年7月から始まる「東京2020オリンピック競技大会(東京2020五輪)」の開催前に行われる「聖火リレー」では、2020年7月1日(水)川崎市中原区と横浜市港北区の一部を通過することが決まっており、日吉や綱島も通る可能性が高いのかと思ったら、そもそも今回の聖火リレーにおける“リレー”は、通常とは概念が異なる様子です。

聖火リレーは2020年7月1日に川崎市と横浜市で行われる予定(東京2020聖火リレーの公式サイトより)

東京2020五輪の聖火リレーは、来年3月26日に福島県を出発し、121日間かけて全国各地を回ることがすでに発表されており、神奈川県へは43道府県目となる6月29日(月)にやってきて、箱根町や藤沢市、相模原市などを2日間かけて巡った後、7月1日(水)に川崎市と横浜市を走る予定となっています。

両市で聖火リレーが実施される来年7月1日は、朝8時ごろに川崎市中原区の等々力競技場を出発し、川崎市内を回った後に、港北区新横浜に近い日産スタジアム(横浜国際総合競技場)に立ち寄り、夜19時ごろにみなとみらいの「横浜赤レンガ倉庫」でセレブレーションと呼ばれるセレモニーを開いて幕を閉じるとの流れですが、途中の詳細なルートは今年(2019年)12月中に決まる予定です。

川崎市中原区から日吉駅前への綱島街道は武蔵小杉のビル街をバックに走れる環境は最適なように思われるが……(日吉駅前の綱島街道)

武蔵小杉駅に近い等々力競技場が出発地点で、新横浜の日産スタジアムを経由するということは、中原区と港北区を貫く「綱島街道」は有力ルートとなり、日吉や綱島を通過するのではないか――そんな思いと期待から、神奈川県スポーツ局のオリンピック・パラリンピック課に訪ねてみると、意外な回答。

詳しいルートは12月中に組織委員会が決めるため、どの道路を通るのかは現時点でわかりませんが、基本的に聖火リレーは市町村ごとに完結する形で行われますので、市と市の間は車で移動することになります」(県の聖火リレー担当者)

東京2020聖火リレーの公式サイトにも車で途中移動することが“告知”されている

元住吉から横浜市内へ入って仲の谷交差点を上り、川崎市でもっとも注目される武蔵小杉のビル群をバックに、日吉駅前の綱島街道を聖火ランナーが汗を流して走る――そんな勝手なイメージは見事に打ち砕かれました。

聖火リレーという名前だけに、何千人ものランナーが全国で聖火をバトンにして駅伝のように走り継ぐ、というイメージが浮かびますが、今回は“全国各所で開く五輪パレードみたいなもの”という声も聞かれます。

川崎と横浜両市での聖火リレーのイメージとしては、スタート地点の等々力競技場で何人かが走り、次は川崎市内の“どこかのエリア”へ移動してまた何人かが走り、その後は車で日産スタジアム周辺まで移動し、そこでも何人かが走って、最終的には、横浜スタジアム付近などの市内中心部を走って、みなとみらいでフィナーレという形になりそう。

勝手な希望としてはこんなルートなら面白いのですが……。等々力競技場 → (武蔵小杉周辺で聖火リレー)→ 綱島街道→ 日吉駅前(慶應大学内で聖火リレー)→ 綱島交差点 → 子母口綱島線 → 高田駅前 → 北山田(横浜国際プール周辺で聖火リレー)折り返し→ 第三京浜道路で移動 → 日産スタジアム周辺で聖火リレー(グーグルマップより)

日吉エリアで聖火リレーの誘致活動に取り組む関係者は、「川崎市と横浜市を合わせてわずか1日しか時間がないので、聖火を持って走れる箇所は限定される。川崎も横浜も役所を置く市の中心部は必ず走らせたいとの思いは持っているだろう」と分析します。

「川崎市内のどこを走るかにもよるが、聖火を日産スタジアムへ移動する際は、高速道路に乗らない限り、移動には綱島街道を使うことも考えられる。英国代表がキャンプを行う慶應日吉キャンパス内で、時間を取って聖火リレーを実施してほしい」(同)との希望を力を込めて語ります。

一方で同関係者は、「日産スタジアムと日吉が同じ港北区内であるのは不安材料。公平性の面から(英国の水泳チームなどがキャンプを行う)都筑区の横浜国際プール(北山田)だけに立ち寄る、との判断になるかもしれない」と話し、「日吉での聖火リレー開催が無理なら、せめて聖火移動の車列だけでも綱島街道を通ってほしい」と打ち明けました。

日産スタジアムの周辺は広い道路が多いため聖火リレーにも最適

聖火リレーが行われる場所では、先導車やバス、スポンサーのPR用大型車など、20台以上の車両や警備の警察官10人ほどから成る「聖火リレー隊列」が組まれ、その長さは数百メートルにおよぶとも言われます。

また、「プレゼンティングパートナー4社によるグッズ配布や沿道盛り上げが行われます」(聖火リレー公式サイト)ともうたわれており、日本コカ・コーラなどのスポンサー4社によるPR活動も同時に行われるため、道路上だけでなく、沿道も賑わいをもたらすことが想定されています。

リオ2016大会の聖火リレーでは車両20台以上の「聖火リレー隊列」が組まれたという(「第1回東京都聖火リレー実行委員会」の資料より)

ただ、綱島街道は港北区内の多くで2車線の狭い区間を抱えます。2008年11月に天皇皇后両陛下(現・上皇上皇后両陛下)が慶應義塾創立150年の式典で日吉キャンパスを訪問した際には綱島街道を通っており、日吉駅付近の綱島街道を走る車が一瞬見られなくなったり、キャンパス付近の2車線区間に国旗を手にした人が整然と集まったりしたこともありましたが、この日は土曜日でした。

来年7月1日は平日水曜日。綱島街道の交通を制限しての聖火リレーを行うようなことはあるのか。それとも聖火を移動する際の車だけが通るのか。あるいは、見栄えや賑わいを考え“オシャレなヨコハマ中心部”でのリレー開催を最優先させるため、港北区などの“郊外部”は速やかに通り過ぎることになるのか。その決断は今年12月までに下されます。

(※)見出し左の画像は「東京2020聖火リレー」の紹介ページより

【2020年3月25日追記】2020年7月から予定されていた「東京2020オリンピック」は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で「遅くとも2021年夏までの実施」という予定で開催の延期が決まり、聖火リレーについても当初の日程では行われません。最新情報は大会組織委員会の公式サイトをご覧ください

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<五輪まで500日切る>日吉でキャンプ、新横浜はサッカー決勝、港北区が「特別な年」に(2019年3月13日)

【参考リンク】

本県における東京2020オリンピック聖火リレーの通過市町について(2019年6月1日、神奈川県)

東京2020オリンピック聖火リレーの公式サイト


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