日吉でも認知症カフェ立ち上げの動き、“誰でも”参加で地域とのつながりを | 横浜日吉新聞

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2025年には日本国内で約700万人、65歳以上の高齢者の約5人に1人が「認知症」に(厚生労働省・認知症施策推進総合戦略「新オレンジプラン」2017年7月改訂版より)――“超”高齢化社会を見据え、「認知症カフェ」開催の試みが日吉でもスタートしました。

日吉地区で初開催となる「認知症カフェ」は、下田地域ケアプラザにて行われた(2017年12月14日)

日吉地区で初開催となる「認知症カフェ」は、下田地域ケアプラザにて行われた(2017年12月14日)

一昨日(2017年)12月14日、下田地域ケアプラザ(下田町4)、グループホームきらら日吉(箕輪町3)でそれぞれ初開催された「認知症カフェ」いずれもまだ試験的な運用としての実施となりましたが、来たる劇的な「認知症社会」の到来に備え、家族も含め誰もが通える施設、また予防のためにも、症状が軽いうちから利用できる“居場所づくり”こそが大切と、立ち上げにかかわる関係者は口をそろえます。

「認知症カフェ」は、厚生労働省(国)が2015年1月に策定した「新オレンジプラン」において、「認知症の人やその家族が、地域の人や専門家と相互に情報を共有しお互いを理解し合う」場としての設置を推進しているもの。2013年度からは既に設置についての国の財政支援を開始しており、2018年度には「すべての市町村に配置される」ことを目標としています。

横浜市では、「認知症の人や家族、地域住民等が、気軽に集える場」として、「認知症の人や家族はもちろん、地域に住んでいる人など、誰でも利用できます」(横浜市健康福祉局)と、“誰でも利用できる”施設としての役割を謳(うた)い、情報交換や相談を通じて、孤立予防や介護負担の軽減などが図れる「集いの場」としての取り組みを応援しているといいます。

下田地域ケアプラザ「メモリーカフェ」はボランティアも支援

カフェの開催に向け、入念に準備を進めるようす。現場には、横浜市港北区福祉保健センターの担当者も立ち会った(下田地域ケアプラザ、2017年12月14日)

カフェの開催に向け、入念に準備を進めるようす。現場には、横浜市港北区福祉保健センターの担当者も立ち会った(下田地域ケアプラザ、2017年12月14日)

下田地域ケアプラザでの認知症カフェは、「下田メモリーカフェ」と命名。下田地区で活動する団体「ボランティア下田」(加賀雅典代表)のメンバーや一般で公募したボランティア約10名が「受け入れる側」としても協力し、当日訪れた10名を超える参加者を迎え入れました。

地域ケアプラザ職員の発案もあり、日吉地区で初の立ち上げとなったこのメモリーカフェを開催した目的は、「一人でなく、仲間がいるということ、集まる場所があるということを知ってもらいたい」(同プラザ担当者)ため。自宅に閉じこもり、行く場所がない人も街に多いといいます。

下田地域ケアプラザでの初回開催は200円。認知症カフェの料金はおおむね安価(数百円)に設定されているケースが多い

下田地域ケアプラザでの初回開催は200円。認知症カフェの料金はおおむね安価(数百円)に設定されているケースが多い

認知症についての相談も増えています。介護保険を使う前の段階、元気なうちに、ぜひ認知症カフェにお越しいただき、一人でも多くの“顔馴染み”や“顔見知り”を作っていただけたら。ケアを日頃から行っている地区担当もいますので、困りごとの相談にも応じられますし、他のケアプラザのイベントなどとも組み合わせて、楽しく過ごしてもらうことで、認知機能低下の予防や、ご家族の方の不安の払拭(ふっしょく)にも役立つと思っています」(同)と、まだ試験的な運用という同プラザでの開催メリットを強調します。

来月以降の開催も、他の介護事業所にて予定しているといい、「もっと地域で同様のカフェが増えたなら、と場所を探しています。マンションの集会所など、ぜひカフェとして利用できる、また提供いただけるスペースがあればご連絡ください」と、同プラザでは、認知症カフェへの理解、ボランティアへの参加、そしてカフェスペースの提供についての情報提供を呼び掛けています。

箕輪町は「グループホーム」が専門性活かし対応するカフェを試行

箕輪町3丁目にある認知症対応型グループホーム「きらら」。ここでの認知症カフェは箕輪町在住者が対象となる。「港北オープンガーデン」にも毎年参加している前庭での開催も検討しているとのこと

箕輪町3丁目にある認知症対応型グループホーム「きらら」。ここでの認知症カフェは箕輪町在住者が対象となる。「港北オープンガーデン」にも毎年参加している前庭での開催も検討しているとのこと

箕輪町(箕輪町町内会)では、認知症対応型のグループホームとして2005年9月にオープンした「グループホームきらら日吉」(後藤孝子ホーム長)で初めて実施。地域の関係者など3名が来館、利用者ら3名との認知症予防トレーニングという「回想法」でのトークを交え、施設職員らとの歓談を行いました。

日頃から箕輪町とのつながりが深いという同施設では「ハロウィンも、利用者らが仮装をして子どもたちを迎え、一緒に楽しんでいるんです」と、町内の各行事や定期的な情報交換の場で「箕輪町の皆さんには大変お世話になっているので、恩返しをしたかった」(後藤ホーム長)と、今回の開催をグループホーム側から打診した経緯について説明します。

同施設は、東京・江東区に本部を置くスターツケアサービス株式会社が運営。同社施設では、介護施設と保育園が一体化した施設を設立するといった試みも東京都足立区で既に行っているといい、「ここ箕輪町でも、近隣の保育園との交流も行うなど、やはり様々な人と触れ合い、語り合うことで、認知症にはとても良い効果が得られていると思います」と、子どもたちをはじめとした“人と人との交流”こそが認知症予防につながると後藤ホーム長。

この日は箕輪町町内会(日吉地区連合町内会)の小島清会長(左)も訪れ、認知症カフェ“きららカフェ”に参加。回想法の体験も入居者らと行った。参加費用は「恩返しで」無料とのこと

この日は箕輪町町内会(日吉地区連合町内会)の小島清会長(左)も訪れ、認知症カフェ“きららカフェ”に参加。回想法の体験も入居者らと行った。参加費用は「恩返しで」無料とのこと

特に、過去を回想することで、楽しく、昔を懐かしみながら、記憶をたどる「回想法」は、“脳のトレーニング”としても最適とのことで、同社のトレーナーも同施設に勤務していることから、認知症の知識や、予防トレーニングについての経験も豊富だといいます。

定員18名もの認知症の入居者に対応していることもあり、「日々、様々なケースに対面しているので、認知症についての、プロとしての専門的な立場からアドバイスできると思います。カフェの開催日以外でも、ご家族はじめ困り事があればお立ち寄りいただけたら」(後藤ホーム長)と、箕輪町在住者へのこれからのカフェへの参加、また同施設への来訪を呼び掛けています。

なお、同施設での次回のカフェの開催時期は未定。「2カ月に1度など、日吉本町地域ケアプラザ(日吉本町4)や箕輪町町内会の皆さんとも相談の上、開催していきたい。名前も“きららカフェ”とし、本格的に淹(い)れたコーヒーや茶菓子を楽しみながら、ゆっくり語り合っていただけたなら」と、今後の開催に向け準備を重ねていくとしています。

港北区内では「大豆戸」地区が第1号、日吉宮前でも来月から開催へ

「認知症カフェ」は、区内では大豆戸地域ケアプラザ(大豆戸町)の事業として、一昨年(2015年)5月からまめどスペース結(大豆戸町)、現在は夢うさぎ(大倉山7)にて行われているのが最も早い時期での開催だったとのこと。

この夏からはもう1カ所増設し、就労継続支援B型事業所(障害者総合支援法に基づいた、障害のある方々の仕事の場)である「ボタニカルカフェおからさん」(篠原北1)でも実施しています。

地域に配布された下田地域ケアプラザの「認知症カフェ(下田メモリーカフェ)」の案内チラシ(同プラザ提供)。認知症カフェ発祥の地と言われるオランダなどヨーロッパでは、“オレンジカフェ”、“メモリ―カフェ”といった名前でも呼ばれているという

地域に配布された下田地域ケアプラザの「認知症カフェ(下田メモリーカフェ)」の案内チラシ(同プラザ提供)。認知症カフェ発祥の地と言われるオランダなどヨーロッパでは、“オレンジカフェ”、“メモリ―カフェ”といった名前でも呼ばれているという

大豆戸地域ケアプラザの担当者は、「地域に根差そうと事業を行っているものの、“認知症である”ことを、周囲に知らせたくないという方もいることから、参加人数がなかなか増えないという現実も実際にはあります。認知症そのものへの理解や、認知症カフェの意義を伝えることも含めて、まだまだこれからといえると思います。他の認知症予防の活動『スリーA』(頭・指・身体を使う認知症予防ゲーム)なども含め、少しずつ認知症について知っていただく活動を広め、つなげていきたい」と、現実には難しさもある認知症予防の取り組みについて言及します。

日吉宮前地区(日吉5~7丁目エリア)でも、来年(2018年)1月中旬に認知症カフェの開催を計画しているといい、日吉町宮前自治会の足立弘会長は、「高齢者向けの賃貸施設に協力いただき、場所を借りて初めて行う予定です。近隣では既に告知も行っています。日吉本町地域ケアプラザの協力も得て、月1回の頻度での開催を計画中です。自由参加のスタイルなので、気軽にお越しいただけたら。すぐには難しいかもしれませんが、何年か、開催を重ねていくことで地域に根差していきたい」と、これからの開催、また“地域への理解”を深めるための活動に意欲を見せます。

「認知症社会」にいかに立ち向かうか、“誰しも避けて通れぬ課題”

団塊世代のすべての人が75歳以上の後期高齢者に達する、今から8年後の2025年には、国民の9人に1人、65歳以上に限れば、実に3人に1人が認知症あるいはその予備群の人になるという「認知症1300万人時代」が来るとも指摘されています。(NHK/Yahoo!ニュース編集部より※下記リンク参照)。

住宅地が大半の下田・日吉本町5、6丁目エリアでは、なかなか認知症カフェを開ける場所がないという。「マンションの集会所など、ぜひ開催可能な場所をご提供ください」と下田地域ケアプラザの担当者

住宅地が大半の下田・日吉本町5、6丁目エリアでは、なかなか認知症カフェを開ける場所がないという。「マンションの集会所など、ぜひ開催可能な場所をご提供ください」と下田地域ケアプラザの担当者

同メディアによると、「救急搬送の3~4人に1人が認知症の疑い」であると分析。また「特別養護老人ホームへ入所を望みながらも叶わない人は62万人」「彼らのケアをする介護人材も、38万人足りなくなる」とも推測、地域での「認知症」問題への対応は、待ったなしと言える状況です。

「ボランティアの担い手も、今回“認知症の皆さんの役に立てる”という使命感で参加してくれました」と下田地域ケアプラザの担当者。

一人ひとりが避けて通れぬ「認知症社会」を、どのように地域が受け止めていくのか。一人ひとりが「担い手」となる覚悟を持ち、カフェの運営、またそのサポートや理解に努めることが必要になるとも言えそうです。

【関連記事】

<高田・日吉本町・下田・大豆戸>地域ケアプラザ最新情報~ 高田中学校吹奏楽部クリスマスコンサート他(2017年11月4日)※認知症カフェ情報あり

<下田・高田・日吉本町・大豆戸>地域ケアプラザの最新情報~下田ふれあいまつり・秋桜まつり他(2017年10月2日)※認知症カフェ情報あり

日吉街あるきで旅行気分、港北オープンガーデンの「ルート案内ツアー」は土日が人気!(2016年4月23日)※グループホームきららが参加(写真あり)

【参考リンク】

認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)(厚生労働省)

認知症の人と家族の居場所づくり活動を応援します~認知症の取組み(横浜市健康福祉局)

下田地域ケアプラザの公式サイト

認知症対応型グループホームきららのサイト(スターツケアサービス株式会社)

日本社会が直面する、認知症「1300万人」時代(取材・文=NHKスペシャル「私たちのこれから」取材班/編集=Yahoo!ニュース編集部)


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