「相手に勝つための空手」ではなく「自分自身を磨く武術」を目指す――全日本3連覇王者として知られる杉澤一郎さんが指導する「空手道場一武会」(道場:日吉本町1)が、綱島に道場を初開設しました。
北綱島小学校(綱島西5)からも徒歩4分程度の綱島西4丁目にある「レンタルスタジオかしわくら」(柏倉工業株式会社)に新設された道場では、先月(2017年)9月より、毎週土曜日の午後、未就学児から社会人までの3つのコースにて新規受講者を募集しています。
代表(師範)の杉澤一郎さんは綱島在住。「心と体を育てる空手道」を目指す同会は、日吉や綱島の地域に密着した活動を行っていることでも知られています。
2007年から日吉で指導をはじめてから10年以上となった杉澤さんに、同会を新たに立ち上げた経緯や想い、同会ならではの「ゼロから・自ら」作り上げたという新たな空手道についての話を聞きました。
決めたことをやりぬく力、学び助け合う「一武会」流稽古を確立

「一武会」の公式サイトより。日吉駅から徒歩5分程度のバレエ団芸術座・日吉スタジオ内にて日吉道場を開設している
元々は箕輪町2丁目のスポーツクラブエポック日吉で空手教室を開催していた杉澤さんですが、昨年(2016年)5月に、新たに「空手道場一武会」を設立し代表に。日吉道場を日吉本町1丁目の「バレエ団芸術座・日吉スタジオ」内に新たに開設します。
この道場の新設に伴い、それまで所属していた流派から独立。様々な武道や武術を研究し、“真に、大切な指導”を追求することで、独自の方針を打ち出すことを決意します。
その核心は、「心と体を育てる空手道」。相手に勝つためにだけに取り組むのではなく、“自分自身を磨く”武術を目指すこと。その目的を達成するために、これまで行ってきた稽古の全ての内容を一旦見直し、全て“杉澤さん自身で考えた”オリジナルの内容に作り変えたというのです。
まずは、一般的な道場では2、3時間が当たり前、という稽古時間を、1時間程度に凝縮。「より中身の濃いものを」(杉澤さん)と、それまで行ってきた内容を「基本動作」「応用動作」「体力」「身体操作」「反応」「対人・コミュニケーション能力」そして「精神的なもの(自己との向き合い方)」などに分類。それらが必ず偏らないようにと、組み立てて練習を行うことにしたのです。
特に、精神的な強さや、自分で決めたことをやりぬく力を育みたいという想いから、月1回、各自が目標を設定し、配布した用紙に記入。その目標の達成のために、毎日、その目標に向け家でできることを全て自分で行い、丸を付けて提出するようにしているとのこと。
また、通常では空手の稽古ではあまり見られない「グループ」での練習を、リーダーを決めたうえで行っているのも特徴で、「一人ひとりが皆で考え、学び合う大切さ、周囲の人を助けるといった“人として”大切なことを教えていきたいんです」と、杉澤さんはただ技術を向上させるだけでなく、人としての生き方を体得し、また日々の成長を感じてもらいながら学び合ってもらいたいとの熱き想いを吐露します。
「長く通った」教え子が大会で優勝、試合に挑戦できる環境も好評
「相手に勝つための空手」ではなく、「自分自身を磨く武術」を目指している一武会ですが、結果、勝利を得られることも。幼少期から杉澤さんの教室に通ってきたという門田小春さんが、7月15日(土)にとどろきメインアリーナ(中原区等々力)で行われた第18回関東実戦空手道選手権大会(事務局:同高津区)の小学女子6年上級クラスで優勝の栄冠に輝きます。

2017年9月より綱島道場開講!全日本3連覇王者からの直接指導を受けられる。「心と体を育てる空手道」を謳(うた)い、「相手に勝つための空手」ではなく「自分自身を磨く武術」を目指としている(同会の生徒募集チラシより)
結果、門田さんは学年別女子上級クラスで3連覇を達成。生徒が自ら取り組んだ結果、「勝てる」空手を身につけることができた事例となりました。
2009年から2011年まで、日本国際空手協会(事務局:東京都練馬区)主催の全日本選手権大会で3連覇を達成した杉澤さんの姿を、知らず生徒たちも「学びとることができる」一武会の指導内容は評判を呼び、道場移転で減った以降は、右肩上がりで増え、現在、未就学児から社会人までの約60名が杉澤さんの道場に通っています。
「習い事の宿命で短い期間で辞めてしまう子ももちろんいますが、ここ日吉にやってきてから10年以上続けてくれている高校生もいるんです。長く続けている子どもたちの成長をみられるのが、何より嬉しいことと感じているんです」と杉澤さん。
今回の大会では同会から6名が参加。フルコンタクト空手で頂点を極めた杉澤さんから日々学びながら大会にチャレンジできる環境が、道場により長く通うモチベーションにもなり、また世代を越えての支持を受けているのです。
女子クラスの設置で空手の裾野拡大へ、“自立”促す取り組みも
女子上級クラスで3連覇を果たした門田さんの活躍も女子の口コミを広げたことから、今年5月からは「女児クラス」を新たに新設。同クラスでは未就学児から小学校6年生までを現在受け入れており、「女子が男子を気にせず空手の道に入りやすい環境を作りたかった」(杉澤さん)とのことで、男性のみならず女性も“自身を鍛える”ことが可能な環境が整っています。
また、未就学児に関しては、「自分でトイレに行けるか」(おおむね3、4歳より)が入会の判断基準とのことで、「強くなりたい、身を守りたい、基本的なことは自分でしっかりと対処したい」という子ども自身の希望、そして保護者からの入会の後押しも多く見られるとのこと。
「最近はお子さんの運動不足や、仕事などでの忙しさから、なかなかじっくりとわが子を“叱ってやれない”親御さんも多いように見受けられます。しつけ代わり、ではありませんが、自身がきちんと子どもたちに“自立を促す”ことで、必ずこの道場で成長してもらえると信じています」と、一人ひとりの子どもたちにもしっかりと向き合いながら、道場を運営していく方針を強く打ちだします。
地域への貢献が高い評価、学校イベントから道場探しまで親も協力

「一武会」は日吉駅前花壇花ポケット(写真提供)に協賛している。6月には夏の花苗植えの活動に参加。普段花を植えたりする経験が少ない子どもたちも、地域の美化に欠かせない活動ということもあり、喜んでいたという
地域により親しんだ道場運営を志しているのも特徴。昨年10月からは日吉駅前で花壇の世話を行っているボランティア「日吉駅前花壇花ポケット」(小出瑛子代表)にも参加・今年春からは協賛も実施し、「子どもたちに花や地域に親しんでもらい、様々なことを感じてもらえたら」と、花苗植えや水やりも体験。杉澤さん自ら、週1回日吉駅前のごみ拾いを行うなど、日吉駅前の良好なる環境づくりに道場全体で協力しています。
そういった取り組みが保護者からの“熱き”支援を呼び、7月に北綱島小学校で開催された「北つな夏まつり」にも道場として出演し、空手技を披露。「北綱島小学校の近くに、ぜひ道場を」と、保護者からの更なる“熱き”後押しがあり、今回開設した「レンタルスタジオかしわくら」の物件を借り、自身も住まう綱島に、新しい道場を開設することを決意するのです。

「一武会」の空手教室には未就学児から小中学生、高校、大学、社会人など40代までの幅広い世代が通っている。「シニアも歓迎します。日頃から取り組める護身術などの教室や講座もこれから開講していきたい」とのこと
スタジオの面積は約53平方メートルと、10数名が空手を行うには程よい大きさであり、「いなげや横浜綱島店」(綱島西4)に隣接するなど、保護者が送り迎えするには最適な環境。
杉澤さんは、「まずはこの道場について知ってもらい、実際にお越しいただけたなら。見学や体験は何度でも大丈夫です」と、毎週土曜日に開校の幼年クラス(13時10分から14時10分まで)、小学生クラス(14時20分から15時20分まで)、そして年齢不問の一般クラス(15時30分から16時40分)への見学・体験での来訪を呼びかけています。
最近では、空手で学べるという、何か追い込まれてしまった時に冷静に対処できるという「精神力」を学びに、日吉・綱島周辺エリアのみならず、港北区内の近郊エリアや東京都内からも通う生徒がいるとのことで、「オーストラリアからの留学生も学びにきました」と、その輪のより大きな広がりを日々感じているという杉澤さん。
「体力ができて、精神的に余裕ができると、人に対しても優しくできるんです」と控えめに語るその姿は、空手に憧れ「強くなりたい」と願う多くの人々にとって、より大きな「心強い」存在になりそうです。
【関連記事】
・全日本3連覇の先生から空手を習える!人気の教室、体験も受付(2016年2月2日)
【参考リンク】
・杉澤一郎、3連覇達成、多彩な足技で勝ち抜く、日本国際空手協会主催第15回全日本空手道選手権大会(日本国際空手協会・ValuePress!サイト)
・綱島道場の場所(グーグルマップ)※日吉本町駅から徒歩12分、高田駅から徒歩13分、綱島駅から徒歩15分
(提供:空手道場 一武会)