医師会館や休日診療所が4月に移転、新施設でさらなる地域医療連携に挑戦 | 横浜日吉新聞

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先週(2017年)3月25日の午後に港北区医師会館と休日急患診療所の落成披露が行われた。右が港北区医師会の内藤英二会長、左が休日急患診療所を管轄する港北医療センター長の清水眞一さん

先週(2017年)3月25日の午後に港北区医師会館と休日急患診療所の落成披露が行われた。右が港北区医師会の内藤英二会長、左が休日急患診療所を管轄する港北医療センター長の清水眞一さん

港北区の医療が新しい時代へ――港北区医師会館(一般社団法人横浜市港北区医師会)と、港北区休日急患診療所など4施設を運営する「港北医療センター」が、来月(2017年)4月に、現在地の港北区菊名4丁目から菊名7丁目の環状2号近くに移転します。これに先立ち、先週3月25日(土)に同施設の完成披露と式典が行われました。

「港北医療センター」の中でも、特に休日急患診療所は来月4月2日(日)から移転先での診療をスタート。他の訪問看護ステーション、ケアマネジメントステーション、そして在宅医療相談室については4月17日(月)から新しい建物での運営をスタートさせる予定です。

今日に至るまでの道のりを支えてきた歴代医師会の先人たち、そして新たな未来を切り開く現スタッフらの想いがあるからこそ、今回の新たな船出を迎えられたと港北医療センター長の清水眞一さん(清水医院・院長=菊名3)は、今回の移転を迎える心境を語ります。

地域医療に全力を尽くした先人「称える」桜も植樹

港北医療センターの清水センター長は、先人たちの努力のおかげで今日の会館移設があるとその感謝と感慨を強く語る(新しい急患診療所の受付前にて)

港北医療センターの清水センター長は、先人たちの努力のおかげで今日の会館移設があるとその感謝と感慨を強く語る(新しい急患診療所の受付前にて)

今回の新しい医師会館は「3代目」。初代の医師会館がが建てられたのは、1945年の第二次世界大戦の終戦から16年も経った1961年のこと。当時は横浜の中心部からも離れ、医療後進地とも言われるほどに、港北区内では地域医療が行きわたっていなかったといいます。

2代目のこれまでの所在地にある医師会館(横浜市医師会看護専門学校内)が完成した1974年も、前年の第一次オイルショック(世界的な石油危機)のあおりで、建設費を抑制するなど大変な状況下でのスタートだったのです」と清水さん。

休日急患診療所は横浜市が全国に先駆けて1971年より各区に設立したもので、港北区もこの2代目医師会館内に設置。「発展途上にあった港北区の地域医療のために奔走する医師や看護師の姿がここにあったのです」と先人たちを称(たた)えます。

新しい港北区医師会館・休日急患診療所の敷地内にはソメイヨシノが植樹された。式典の開催を祝うかのように花開いて当日を迎えた(2017年3月25日)

新しい港北区医師会館・休日急患診療所の敷地内にはソメイヨシノが植樹された。式典の開催を祝うかのように花開いて当日を迎えた(2017年3月25日)

以降、43年間にわたり港北区周辺地域の医療を支えてきた同施設も老朽化には勝てず、建て替えることを決定。

2代目の医師会館周辺では、建設当時の港北区医師会長が植えたといわれる八重桜が毎年美しく花開くことから「この新しい医師会館にも桜の木を植樹しました。この桜の木がより太い幹となって、多くの花を咲かせることと思います。これからの港北区医師会を背負っていかれる会員、そしてご利用者の方々にも、少しでも和んでいただき、木々の生長を楽しんでもらえれば」と、これからの医師会館、そして港北医療センターの未来に想いを馳せているといいます。

訪問看護の現場支える染谷さん「地域の人々の健康を守りたい」

港北医療センター内・訪問看護ステーションと在宅医療相談室の管理者・染谷京子さん。「新しくなった施設で、地域の方のためにがんばりたい」と抱負を語る

港北医療センター内・訪問看護ステーションと在宅医療相談室の管理者・染谷京子さん。「新しくなった施設で、地域の方のためにがんばりたい」と抱負を語る

日本の人口構成の高齢化に伴い、在宅医療の充実は避けて通れない課題。その多様化する医療ニーズに応えようと「港北医療センター」内で活動する訪問看護ステーション、在宅医療相談室。この両組織の現場を、管理者という立場で支えているのが、看護師の染谷京子さん

日々「地域の皆さんの健康を守りたい」と、港北区全域や、緑区・神奈川区・鶴見区の各一部指定エリアを訪問する看護師や、事務スタッフら計25名をまとめ、運営しているといいます。

これまでより独立したスペースを確保し業務をすることが出来、また執務・休憩スペースも拡大することから「より仕事に集中できます」と、今回の移転を心から喜んでいるといいます。

港北区はベットタウンならではの単身者が多い地域であり「家族向け住居で、たった一人きりで住む高齢者も増えている」といい、「自宅で生涯を過ごしたい」という方々をどうやってサポートしていくか。団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となる“2025年問題”を控え、「医療相談室も併せ中心となり、区民の皆さんを支えるためのサポートやサービスを提供したい」と、各医療機関やケアマネージャーらとの連携をより一層積極的に行っていきたいと意気込みます。

地域での生活支える原田さんらケアマネジメントが果たす役割

ケアマネジメントステーションの管理者・原田靖子さん。「医療依存度が高い方々のケアも行っています。より地域の特性を活かし連携も強化したい」とこれからますます医療現場で役割が増すケアマネジメントの現状について説明

ケアマネジメントステーションの管理者・原田靖子さん。「医療依存度が高い方々のケアも行っています。より地域の特性を活かし連携も強化したい」とこれからますます医療現場で役割が増すケアマネジメントの現状について説明

同じく「港北医療センター」内のケアマネジメントステーションで管理者として活躍する主任介護支援専門員であり、社会福祉士の原田靖子さんは、「当施設では、訪問看護ステーションと併設されているため、医療依存度の高い利用者もケアマネジメントが可能です。そのため、4名のケアマネージャーはより地域の皆さんにより一層信頼いただけるよう、日々努めているところです」と、医療機関との連携はじめ、多く医療の専門性や、地域の特性をも理解しながら高度なケアマネジメント業務に従事する苦労を語ります。

やはり独居の方や認知症の方が増えている現状もあり、人数も増やす方向で検討しており、国のケアマネジメントの方針があるとはいえ「実情はやはり地域で異なるので、多く各施設や機関との連携が求められるシーンが多く、各機関や市民の皆さんと“それぞれの地域の皆さんに合わせたシステムを共に作っていかなければならない”と感じています」と、その使命感を強く認識し、活動しているといいます。

特に、この「港北医療センター」内で、訪問看護ステーションや医療相談室と連携できることも大きなメリットがあるといい、「それぞれの情報量がとても多いので、他機関と新しい施設で効率的・機能的に連携が促進されることは、区民の皆さんにとっても大きなメリットとなると思っています。医療機関の先生方ともより“顔の見える関係”を構築し、また働くケアマネージャーの皆さんにとっても働きやすい職場環境を構築できたら」と、今回の移転によりもたらされる体制強化や、人手不足の昨今、スタッフが長く働きやすい体制を整えていきたいとのこと。

内藤会長も覚悟し臨む、大規模災害時の「区役所との連携」

「幸い、先人たちと、一人ひとりの会員の力により、今回は積立金と補助金のみで移転することが出来ました」と、港北区医師会の内藤英二会長(内藤外科胃腸科医院・院長=日吉2)も、積年の苦労の上に実現できた今回の落成披露を喜びます。

建物の2階に港北区医師会が入り、1階が港北区医療センター(休日急患診療所、訪問介護ステーション、ケアマネジメントステーション、在宅医療相談室)となる

建物の2階に港北区医師会が入り、1階が港北区医療センター(休日急患診療所、訪問介護ステーション、ケアマネジメントステーション、在宅医療相談室)となる

移転先の決定に際しては、「大規模災害発生時の連携も踏まえ、港北区役所からほど近いこの場所に決めました」と、以前より駅からは離れてしまうものの、区役所に近づくことのメリットを感じているといい、「屋上から区役所を見ると直線距離は500メートルという距離、新幹線軌道と環状2号を挟みますが、無線などでの連携も問題ありません」と、いざという時の対応に全力を注げる体制を強調します。

訪問看護や在宅医療相談、ケアマネジメント体制の連携強化で、劇的な高齢化に臨む「区民の皆さんのためにより一層充実した医師会の活動拠点としての役割を果たしていきたい」と語る内藤会長。

今回の医師会館、そして医療センターの移設を契機とした港北区の医療体制の新たな構築がどのように成されていくのか。より機能的、また効率的、そして「人」をより大切にする医療が求められる時代だけに、今後の医師会、そして医療センターの「新しい」活動に、より多くの注目が集まります。

<休日急患診療所は4月2日(日)にオープン>

診察室は3部屋設置、最奥に外から直接出入りできる「隔離室」も設けられている

診察室は3部屋設置、最奥に外から直接出入りできる「隔離室」も設けられている

港北区医師会館の1階に設置される新しい「港北区休日急患診療所」は、待合室がこれまでより広くなり、3つの診察室の前にもそれぞれ「中待合」が設けられるなど、これまでより快適に待ち時間を過ごせそうです。

また、「隔離室」が新たに設置されており、病状によっては待合室を経由せずに外から直接隔離室へ入ることができ、診察を受けられるようです。

医師の人数などの体制はこれまでと同様で、内科・小児科の医師2名に加え、月に1、2回程度耳鼻咽喉科の先生が加わるとの事。看護師も医師と同人数の2名が対応し、状況により1、2名を増員。事務スタッフ数名も、年末年始など混雑が予想される時期には人数を増やして対応する予定とのこと。

スマホで待ち人数を確認できる新システムを導入予定とのこと

スマホで待ち人数を確認できる新システムを導入予定とのこと

さらに、受付後にスマートフォン(スマホ)でも待ち人数を確認できる新システムを導入予定で、大変な混雑が予想される時でも、一時外出や施設外での人数確認ができることから、有効に待ち時間を活用できることが期待できそうです。

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【参考リンク】

港北ドクターズナビ(一般社団法人横浜市港北区医師会)


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