綱島アップル研究所の門前食堂&弁当店、SST建設を影で支える“社食”的な存在 | 横浜日吉新聞

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日吉・綱島・高田のグルメレポート【グルメレポート第9回:2017年2月6日「綱島東編1」】綱島東口で今もっとも注目を集めている場所が駅徒歩10分程度の一帯に広がる「Tsunashimaサスティナブル・スマートタウン」(綱島SST、綱島東4)です。米アップルの研究所が進出し、今年(2017年)9月には大型スーパー「アピタ横浜綱島店(仮称)」も開店。同タウンの内外ではマンション開発も進んでおり、半年から1年後には周辺の風景が大きく変わります。そんな綱島SSTに道路一本をはさんで隣接し、アップル研究所の“門前”といえる位置に店を構える定食店兼弁当店の「綱島正吉」(綱島東2)をご紹介します。

2009年10月に撮影されたグーグルストリートビューに残されている松下通信工業の綱島工場の様子

2009年10月に撮影されたグーグルストリートビューに残されている松下通信工業・綱島工場の様子

甲子園球場と同じくらいの広さを持つ綱島SSTは、松下通信工業(現パナソニックモバイルコミュニケーションズ=本社:都筑区佐江戸町)の工場跡地です。

大阪で生まれた松下電器(現パナソニック)が関東進出を図る拠点として、1960(昭和35)年に建てられた大型工場がここにありました。当時、資本金2億円の松下電器が9億円の資金を投じるなど、同社の命運をかけた建設だったと言われています。

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2015年8月、アップル研究所建設前の工場跡地

そんな綱島工場からは、電話機や無線、ラジオ、マイクロフォン、テレビカメラ、ポケットベル、カーラジオ、自動車電話、ビデオカメラ、ワープロ、そして近年は携帯電話と、日本の高度成長と技術革新を支える機器が次々と生み出されましたが、2000年代初頭から松下電器グループの業績が悪化。2003年にはパナソニックモバイルコミュニケーションズと名を変えて再出発を図ったものの、2011年に工場が閉鎖され、現在の綱島SSTとしての再開発につながっています。

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アップル研究所横のバス通り(箕輪297号線)沿いは、旧松下通信工場の南口に面し、中小の事業所が並んでいたが現在はコンビニや商業施設などに変わった

工場周辺には、松下通信の技術開発を支えた中小事業者の倉庫や事業所も点在していましたが、多くが工場閉鎖とともに撤退。跡地は駐車場となったり、商業施設やコンビニに変わったりしており、飲食店として活用されているのが2012年4月にオープンした綱島正吉です。

工場の旧南通用門に近接した位置にあり、以前は新横浜に本社を置く電子製品の設計会社が事業所を構えていた場所でした。

工場閉鎖後の綱島東エリアを間近で見続けてきた同店。まさか目の前に米アップルの研究所が進出するとは思わなかったかもしれません。今ではデニーズ綱島東店とともに、アップルの“門前食堂”といえる環境になっています。

綱島正吉の建物もかつては事業所として使われていた

弁当・定食店「綱島正吉」の建物(左側)もかつて事業所として使われていた

綱島正吉の1階は持ち帰り弁当店と厨房ですが、階段を上った2階は食堂として営業しており、25席ほどのこぎれいなスペースが現われます。税込700円の日替わり定食をはじめ、唐揚げ定食(750円)や生姜焼き定食(750円)、ハンバーグ定食(810円)、カツカレー(810円)、カツ丼(810円)など肉系のメニューが中心ですが、さば塩焼き定食(750円)やにしん定食(750円)といった焼魚定食も提供。

他ではあまり見ない「にしん」の定食はかなり気になりますが、焼き上がるまでに20分以上はかかるとのことで、急いでいる時には食べづらそうです。

750円の「唐揚げ定食」、ランチタイムはドリンクバーが付いてくる

750円の「唐揚げ定食」、ランチタイムはドリンクバーが付いてくる

「唐揚げ弁当」(440円)でも人気を集める同店の唐揚げは、少し黒みがかった衣がジューシーで、定食の皿には5~6個がのってきてボリュームは十分。肉系の充実したメニューも飽きを感じさせません。また、11時から14時までのランチタイムには、ドリンク6種とホットコーヒーなどが飲み放題となるサービスも嬉しいところです。

平日の昼間、同店の主な客は綱島SSTの建設を支える工事関係者や、近隣の工場勤務者が中心で、とりどりの作業着姿を見ていると、どこか社員食堂のよう。綱島東エリアが今も工業地帯であることを感じさせられます。

アップル研究所(左)の真横に位置する弁当・定食店の「綱島正吉」

アップル研究所(左)の真横に位置する綱島正吉

数千人規模の従業員が働いていた松下通信の工場時代とは違い、アップル研究所での勤務者は百数十人規模とも言われています。付近の飲食店にとって大きな顧客にはならないのかもしれません。同社内には社員用のカフェも設けられているとみられます。

ただ、アップルの綱島側の窓から必ず目に入り、弁当の配達も行っているという綱島正吉は、同社社員にとって見逃せない存在になるかもしれません。外へ出る時間が惜しい研究者にとって、弁当配達ほど有難いものはないからです。

綱島SSTの完成で、綱島正吉の客層はどう変わっていくのでしょうか。街の変化とともに、同店利用者の動向が気にかかります。

2020年12月24日追記:「綱島正吉」は2020年7月末に閉店し、同年12月18日から日吉7丁目の「日大高校前」バス停に近い場所で、弁当販売店として再オープンしました

【関連記事】

米アップル研究所「綱島TDC」稼働は年度内? 官房長官の視察で相次ぎ報道(2017年1月20日)

【参考リンク】

綱島正吉の公式サイト(弁当と食堂の全メニュー掲載)

綱島正吉の食べログページ


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