「背後は暴力団」特殊詐欺への注意呼び掛け、被害額は県下ワーストの2億8千万円超 | 横浜日吉新聞

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オレオレ詐欺、還付金詐欺などの被害額が過去最悪のペースになっています。神奈川県警港北警察署管内(横浜市港北区内)の特殊詐欺の今年の被害は、2016年12月21日現在、約60件・約2億8700万円余りにも達してしまいました。これは昨年(2015年)1年間の40件・約9600万円という被害額を既に大幅に超過しています。昨年の3倍近くにも迫る今年の被害額は、同日現在、県下で「ワースト1」となってしまいました。

港北警察署に掲げられた懸垂幕(けんすいまく)。港北区暴力団追放推進協議会から他に同内容の横断幕4枚も用意され、12月22日に贈呈式が同署で行われた

港北警察署に掲げられた懸垂幕(けんすいまく)。港北区暴力団追放推進協議会から他に同内容の横断幕4枚も用意され、12月22日に贈呈式が同署で行われた

県全体でも同日現在で今年の発生件数が1224件(対前年比245件増)、金額は約39億5400万円約4億8600万円増)と激増中の特殊詐欺の被害。この被害にストップをかけようと新たな動きを始めたのが、区内の17団体35金融機関ほかで構成される港北区暴力団追放推進協議会(大豆戸町=まめど・事務局:港北警察署内)の皆さんです。

区内での「特殊詐欺」被害の拡大の中、先週(2016年12月)22日(木)に、同協議会から、特殊詐欺にだまされることがないよう注意喚起を行う懸垂幕(けんすいまく)1枚、横断幕2枚が港北警察署(大豆戸町)に送られることとなり、同日に贈呈式が行われました。

懸垂幕は即日、同警察署前に掲示され、横断幕4枚は、今週中にも環状2号線沿いの大豆戸、岸根の各交差点(上り線、下り線)に掲示予となっています。(※2016年12月27日現在、横断幕は1枚岸根交差点に掲示、他3枚は来年1月上旬頃に掲示予定となりました。)

暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、いわゆる「暴力団対策法」の施行(1992年)に併せ同年に発足して以来、様々な取り組みを行ってきた同協議会ですが、昨年(2015年)は特殊詐欺の防止を訴えるためのグッズを「特殊詐欺」の支払いの舞台となる金融機関の窓口を通じて配布。

今年、懸垂幕と横断幕を警察に送ることになった背景には、「さらに踏み込んで、大掛かりに反・暴力団のメッセージを掲示することで、その場限りでない“持続的な訴え”をしていきたいと考えたのです。今年の夏頃には、このアイデアは固まり、いくつかの候補から今回の文言を決定しました」と、区内で激増している特殊詐欺被害を憂い、同会は今回の懸垂幕・横断幕を贈呈することを決めたといいます。

港北警察署に、港北区暴力団追放推進協議会から懸垂幕、横断幕が送られた。陶山署長が目録を受領。写真左は鈴木純一副署長

港北警察署に、港北区暴力団追放推進協議会から懸垂幕、横断幕が送られた。陶山署長が目録を受領。写真左は鈴木純一副署長

背後には暴力団。活動の資金源となっている」と、港北警察もこの件数増の背景を嘆きます。今年は、現金を受け取る「受け子」と呼ばれる犯人を既に8人検挙することに成功(12月21日現在)したものの、「受け子はアルバイトと称して雇われるなど、背後関係がなかなか明らかにならない。背後には暴力団がいることも心に置いて、決して振り込んではいけない、現金を手渡してはいけないと理解いただけたなら」と港北警察の陶山和美(すやまかずよし)署長も、特殊詐欺の捜査の背景や捜査の現状について説明します。

特殊詐欺の事例では、「俺、おれ」と言われて、つい、お子さんの名前を相手に伝えてしまう事例も多く発生。また、最近これもまた激増している区役所職員を語った還付金詐欺では、「最近の役所は便利になったものだ」と、元公務員の方までだまされてしまうというケースがあったといいます。

環状2号沿い、大豆戸(まめど)と岸根の交差点に「特殊詐欺」への注意を呼び掛ける横断幕が設置される予定。「掲示できる場所もできれば増やしていきたい。鶴見川以北の綱島や日吉での掲示も目指したい」と同協議会(写真は大豆戸交差点)

環状2号沿い、大豆戸(まめど)と岸根の交差点に「特殊詐欺」への注意を呼び掛ける横断幕が設置される予定。「掲示できる場所もできれば増やしていきたい。鶴見川以北の綱島や日吉での掲示も目指したい」と同協議会(写真は大豆戸交差点)

今年2月には約5500万円、8月には約6700万円という、それぞれ1件あたりの金額では区内最高額となる架空請求詐欺(身に覚えのない商品などに対しての金銭を要求される詐欺)も発生したことから、「全体の金額を押し上げてしまいました」と、県下ワースト1の不名誉な被害金額を計上してしまった港北区での“周知”“呼び掛け”の必要性について、港北警察・刑事第二課の飯田勝義課長は声を大に訴えます。

有効な対策としては、声を録音することを嫌がる犯人への対策として、留守電を設置し、自らが即電話に出ないこと。またつい電話に出てしまい、会話の中でお金の話が出たら、真っ先に“疑い”、なるべくすみやかに警察に通報してほしいといいます。

「特に高齢の方は、日頃からなるべくお子さんとコミュニケーションを取り、またお子さんの側からも、ぜひこの垂れ幕や横断幕についても話題にしてもらいたいと思っています。若い方から高齢の家族や周囲の方への呼び掛けも、ぜひよろしくお願いします。40代の方でも、親の病気を会話に出され、還付金詐欺でだまされてしまったケースもあったようです。例え若い方であっても、相手は“プロ”。油断は禁物です」と、同協議会では、世代を越え、“家族ぐるみ”、“地域ぐるみ”で対策を講じるよう、強く呼び掛けています。

【関連記事】

<還付金詐欺が激増>役所が簡単に税金を返すはずがない、電話は督促の時だけ(2016年12月16日)

<深刻化する振り込め詐欺>ベテラン従業員の機転で被害を未然に防いだ「いなげや綱島店」(2016年6月24日)

【参考リンク】

港北区の犯罪発生状況~平成28年10月末(港北警察署)

港北区内の不審電話情報(平成28年度)(港北区役所)

港北区内の振り込め詐欺発生情報(港北区役所)


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