大江馨さんがドイツから「里帰り」、12/27(火)日吉の丘フィルでバイオリン演奏 | 横浜日吉新聞

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「日吉の丘フィル」第1回演奏会でソリストを務めた日本音楽コンクール第1位の大江馨(かおる)さんが日吉に帰ってくる(写真:東京芸術劇場にて撮影)

「日吉の丘フィル」第1回演奏会でソリストを務めた日本音楽コンクール第1位の大江馨(かおる)さんが日吉に帰ってくる(写真:東京芸術劇場にて撮影)

日本音楽コンクール1位、ドイツ留学中バイオリニスト・大江馨さんが、日吉に帰ってきます。2016年12月27日(火)18時30分(開場18時)より、慶應義塾大学藤原洋記念ホール(日吉4・日吉駅前)にて第5回年末コンサートを行う日吉の丘フィルハーモニーの公演が近づいてきました。

日吉の丘フィルが設立された2013年12月の第1回公演でも、ドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲を披露、同年10月に「日本音楽コンクール第1位」を受賞した直後の“凱旋”公演だっただけに、当時もステージ上や観客も多いに盛り上がった演奏だったといいます。

今回は、昨年2015年秋からドイツ・クロンベルクに音楽留学をしている中での「里帰り」公演。「以前の大江さんと比べると、演奏が一回りも、二回りも大きくなり、迫力が増しています」(同フィル主宰・村松琢麻=たくまさん)と、さらにレベルアップした大江さんの演奏の魅力に迫るべくインタビューを行いました。

杜の都・仙台で育ち、中学2年で横浜・みなとみらいホールで初演奏

大江さんは1994年東京生まれ。盛岡、山形と居を移した後、5歳の頃から仙台へ。この頃から「クラシック音楽を聴くのが好きだった」という父親の影響でバイオリンをスタート。「当時、兄が習っていたのを見て、“習ってみたい”と言いだしたようです。上のきょうだいが何かをしていると、“真似してみたいな”という、子どもならではの発想だったようです」と、バイオリンを始めた当初を懐かしく想い出します。

この日、翌日(12月21日)にここ東京芸術劇場での演奏会を控えた大江さん。「日本(現在は東京に拠点)とドイツは年に10回くらい行き来しています」と、日本から世界へと活躍の場を広げる大江さんのパワーを感じるインタビューとなった

この日、翌日(12月21日)にここ東京芸術劇場での演奏会を控えた大江さん。「日本(現在は東京に拠点)とドイツは年に10回くらい行き来しています」と、日本から世界へと活躍の場を広げる大江さんのパワーを感じるインタビューとなった

バイオリンの才能を見出されてか、小学校3年生の頃からは、元仙台フィルハーモニー管弦楽団(本拠地:宮城県仙台市)のコンサートミストレスとして知られる渋谷由美子さんに師事。「バイオリンは楽しく学んできました」という言葉の通り、その技術も中学2年生の時に開花、第61回(2007年)全日本学生音楽コンクール(中学校の部)全国第2位に入賞します。

「この時、横浜のみなとみらいホール(中区)で初めて演奏しました」と大江さん。コンクールの会場が横浜に移転した時期での受賞だったといいます。また、いつかは首都圏へ、と内に秘めていたこともあり、高校受験では慶應義塾高校(塾高)に晴れて合格。入学後の大江さんは、故郷・仙台を離れ、綱島に移り住みます。

綱島の印象は、と聞くと「首都圏、ましてや東京近郊というのは、都会らしく“隣近所も全く分からない雰囲気で、冷たいものかな”と想像していたのですが、綱島は全くそんなことがなくて、近所の方もとてもあたたかく、近所付き合いなどの交流もあり、商店街などの地域のお祭りなども頻繁に開催されていて、親しみやすさを感じながら生活しました」と、当時の綱島の街の雰囲気を振り返ります。

歩いて通ったという慶應義塾高校では、「個性的、かつ面白い先生やユニークな仲間たちに囲まれて、それまでの毎日とは“別世界”の日々を過ごし、とても楽しかった。全てが“新しい刺激”でした」と、今もつながる友達、そしてたくさんの想い出を得られたことが人生の財産になっているといい、「今も、当時の仲間たちがコンサートに来てくれるんです。この頃、同じように音楽を志す慶應義塾高校のワグネル・ソサィエティー・オーケストラ部(塾高ワグネル部)のメンバーとも自然と親しくなり、今でも、現在の同部の後輩たちにバイオリンを教えに学校を訪問するときは、懐かしさで胸がとても熱くなります」。

高校・大学で「日本一」に。プロへと決意、自ら求めたドイツへ留学

仙台から上京したことを機に、大江さんは、高校入学直前より、日本最高峰のオーケストラと言われるNHK交響楽団(東京・渋谷)で当時コンサートマスターを務めていた堀正文さんに師事します。

その成果か、塾高1年生の時には、第63回(2009年)全日本学生音楽コンクール(高校の部)で初の全国1位に。再び、みなとみらいホールで表彰台に立つことになります。

大江さんはNHK交響楽団や東京フィル、新日本フィルなど、数々の一流オーケストラとの共演も果たしている。東京芸術劇場の「ブランチコンサート」にもピアニストの清水和音さんらと出演中

大江さんはNHK交響楽団や東京フィル、新日本フィルなど、数々の一流オーケストラとの共演も果たしている。東京芸術劇場の「ブランチコンサート」にもピアニストの清水和音さんらと出演中

さらに慶應義塾大学へ進学後も、併せ音楽大学の名門・桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコースに通学。第81回日本音楽コンクール(2012年)に挑戦、見事「ベスト5」としての入選を果たします。「この頃、プロになることを意識しました」と、より高みを目指そうと、翌年(2013年)も第82回目となる同コンクールに再チャレンジ。高校時代に引き続き、見事、大学生になっても“全国第1位”の栄冠に輝いたのです。

運命的にか、この2013年に産声を上げたのが「日吉の丘フィルハーモニー」。既に、同フィル主宰の村松琢麻(たくま)さんが塾高ワグネル部に在籍している頃、大江さんをゲスト奏者として招いて演奏会を開催していたことから、今回の「日本一」になる直前に出演を打診、まさに「受賞の凱旋公演」となり、大いに盛り上がったといいます。

「このコンクールを題材としたNHKEテレ(教育)のドキュメンタリー番組に大江さんが出演するというサプライズもあり、大江さんはまさに“時の人”。現在、東京ユヴェントス・フィルハーモニーの音楽監督を務める坂入健司郎(けんしろう)さんを指揮に、大江さんをソリストに招く、という今となっては信じられないほど“贅沢”な、記念すべき第1回目の“伝説の演奏会”になったんです」と、村松さんは熱く当時について語ります。

ドイツ・フランクフルトから列車で20分程度の距離にあるクロンベルクの街。大江さんのツイッターからは、ドイツや日本国内での活動の様子が手にとるように伝わってくる(大江馨さん撮影)

ドイツ・フランクフルトから列車で20分程度の距離にあるクロンベルクの街。大江さんのツイッターからは、ドイツや日本国内での活動の様子が手にとるように伝わってくる(大江馨さん撮影)

バイオリンを極めながら、次第にクラシック音楽の本場・ドイツで学んでみたいと思うようになった大江さんは、昨年(2015年)9月からドイツ、ハンブルク生まれのヴァイオリン奏者・クリスチャン・テツラフ氏と出会い、ドイツ・フランクフルト郊外のクロンベルクアカデミーに留学するという夢も果たします。

「自らテツラフ先生の扉を叩きました。繊細さ、大胆さを兼ね備えた先生で、アカデミックにしっかりと音楽を分析しつつも、最終的には“心から”歌としてバイオリンを奏でる大切さを教わっています」。

静かでとても暮らしやすいという、あたかも絵本の中のような中世ヨーロッパの雰囲気を残すクロンベルクの街で過ごしているといいます。「毎日、教会の鐘の音を毎時間聴きながら生活しています。クロンベルクの街は、とても眺めが良いんです」。

仙台、そして横浜で「地域貢献」も、プロとしての「極み」目指す

ドイツ渡航前の2014年9月にはNHK交響楽団と共演、また同年冬には、東日本大震災の被災地・宮城県亘理町にある荒浜中学校や、岩手県大槌町での震災復興支援コンサートにも出演します。ドイツ留学後は、年に10回程度は日本(現在は東京に拠点)とドイツを行き来し、今年10月には故郷・仙台のクラシックフェスティバル「せんくら」に2年ぶりの登場、仙台フィルハーモニー管弦楽団と共演。今回と同じ曲目のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を披露するなど、一流のプロとしての大舞台から地域密着のコンサートまで、実に幅広く活動しています。

横浜市が手掛ける演奏会にも多く出演。「第二の故郷」横浜での活動の幅も広がる大江さん(横浜市横浜文化賞のホームページより)

横浜市が手掛ける演奏会にも多く出演。「第二の故郷」横浜での活動の幅も広がる大江さん(横浜市横浜文化賞のホームページより)

中学校2年時のコンクールで「初めて来訪した」横浜との音楽の縁も浅からず、今年9月から11月まで開催された「横浜音祭り2016」でも、自身、2014年に「文化・芸術奨励賞」を受賞した、「横浜文化賞贈呈式」での記念コンサートほか多数の演奏会に出演。

今回の日吉の丘フィルハーモニーの公演については、今年年初の冬には決まっていたといい、「同じ慶應義塾の門を叩いた後輩たちと一緒に演奏できることはいつも楽しいので」と出演を快諾したといいます。

演奏予定のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を選んだ理由は、「言わずと知れた名曲ですが、これでもかというくらいロマンチックで、スケールが大きい“感情が豊かな曲”なんです。しつこいくらいに謳(うた)い上げるメロディーが多いチャイコフスキーの楽曲の特長が良く出ている曲で、ゆったりと謳うところ、特に第1楽章が好きです」と、この曲の魅力を説明します。

「ドイツに行って、音の大胆(だいたん)さ、そして迫力が違う、と感じました」と、日吉の丘フィル主宰の村松さん。団員との音合わせ時も、「大江さんがぐいぐい引っ張ってくれているんです」と、そのリーダ―シップについても称賛します。

この日、一緒にインタビューに臨んでくれた日吉の丘フィルハーモニー主宰の村松琢麻(たくま)さん(写真左)と

この日、一緒にインタビューに臨んでくれた日吉の丘フィルハーモニー主宰の村松琢麻(たくま)さん(写真左)と

夢だったドイツ留学を経験したことで一回りも二回りも大きくなり、また「一流のプロフェッショナル」として、クラシック音楽界の頂点をも目指す大江さんが奏でる、大江さんにとっての「もう一つのふるさと」横浜・日吉での、懐かしく、また新しいハーモニー。

「坂入さん、大江さん、そして仲間たちと一緒に、練習後に日吉のラーメン店に行ったのがとても懐かしいです」と、主宰の村松さんが遠い目で語る、設立当時の日吉の丘フィルの想い出、そして大江さんのクラシック界での“飛ぶ鳥を落とす”かの如くの活躍ぶり。

今回の大江さんの「里帰り公演」は、日吉の丘フィルに関わるメンバーのみならず、全ての聴き手に“感動”を呼び起こす演奏となるのかに、大きな期待が寄せられています。

日吉の丘フィルのチケットがアプリで買える!ダウンロードしてお使いください(詳細は日吉の丘フィルへ)

日吉の丘フィルのチケットがアプリで買える!ダウンロードしてお使いください(詳細は日吉の丘フィルへ)

<アプリでもチケット販売>

・日吉の丘フィルでは、今年よりアプリでのチケット販売を行っています。「アプリを使うとあなたのスマートフォンがチケット代わりに!ペーパーレスで、会員登録等もなく簡単に購入・変更が行えます!ダウンロードはこちらのリンクからご利用ください」との事(慶應義塾大学理工学部・小野雄紀(ゆうき)さん制作)

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【参考リンク】

大江馨(Kaoru Oe)公式Twitter

大江馨 Kaoru Oe(MIYAZAWA&Co.によるプロフィール)

大きな視点から「音楽」~桐朋学園音楽部門広報誌「つのぶえ」2013年冬号(P.2~3に大江馨さん×堀正文教授の記述あり)[PDFファイル]

法学部政治学科2年 バイオリニスト大江馨君(「塾」2014年冬号掲載~慶應義塾ホームページ)

宮城県亘理町・岩手県大槌町での復興支援出前コンサート(特定非営利活動法人クウォーター・グッド・オフィス)

第11回 仙台クラシックフェスティバル 2016(大江馨さんによるブログ)

日吉の丘フィルハーモニー公式ホームページ ※最新情報はリンク先の各SNSへ

日吉の丘フィルハーモニー第5回年末コンサートPV(YouTube)

日吉の丘フィルハーモニー 第5回年末コンサート(クラシックの演奏会情報サイト・アマービレ)

【アクセス情報】慶應義塾日吉キャンパス・協生館ホームページ(東急東横線・東急目黒線・横浜市営地下鉄グリーンライン日吉駅徒歩1分)

(提供:日吉の丘フィルハーモニー)


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