<日吉の再開発>歩行者を危険なまま放置するのか?問われる横浜市の本気度 | 横浜日吉新聞

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ひよしコラム今月(2016年10月)は旧「アピタ日吉店」の跡地などを使った野村不動産による大型再開発「日吉箕輪町計画(仮称)」(箕輪町2)で、マンションなどの再開発に関する内容と、新小学校の建設についての説明会が相次いで開かれました。参加した住民から上がった声を聞いていると、大きな課題は1つに集約されていると感じられました。また、箕輪町だけでなく、下田町でも同じ問題が浮上しています。

野村不動産による日吉箕輪町計画の説明会は、8月22日に1回目が行われ、ここではマンションが1320戸になることや日吉寄りに小型スーパーなどを核とした2階建ての商業施設などが設けられることが始めて発表され、今月14日には2回目となる説明会が開かれています。

「日吉箕輪町計画(仮称)」における2016年8月時点での新小学校の配置予定図(第31回横浜市都市美対策審議会景観審査部会の資料より)

「日吉箕輪町計画(仮称)」における2016年8月時点での建物配置図、日吉7丁目方面への道路部分では敷地と接していない場所が多い(第31回横浜市都市美対策審議会景観審査部会の資料より)

一方、日吉箕輪町計画の敷地内に建てられる新小学校「(仮称)日吉台小学校第二方面校」の説明会が2カ所(日吉台小学校・綱島東小学校)で初めて行われました。

そのどちらでも多く上がっていた声が、「再開発地周辺の交通環境を改善しないのか」といった内容です。

今回の計画は、「アピタ日吉店」「野村総合研究所(NRI野村総研)データセンターと社員寮」「損保ジャパン日本興亜研修施設・日吉センター」という3つの敷地を使って再開発しようという内容で、その広さは東京ドーム(4万6755平方メートル)1つを建てても余るほどの約5万6000平方メートルという規模です。

この敷地に接する綱島街道などの道路部分に関しては、開発主である野村不動産が計4~5メートルの歩行者空間を整備し、安全な歩行環境を確保すると表明しているのですが、問題は敷地外の部分です。

箕輪2丁目から日吉7丁目へ向かう道路は歩道もほとんどないうえに、バスも頻繁に通る

箕輪2丁目から日吉7丁目へ向かう道路は歩道もほとんどないうえ、バスも頻繁に通り、車の通行量も多い

3つの敷地は、日大入口交差点から日吉7丁目方面へ向かう道路に面した部分で、土地が“歯抜け”のようになっています。そこには住宅が建っているため、いくら野村不動産の敷地部分で立派な歩道を作っても、途中で必ず途切れることになってしまいます。

現在は1人が通るのがやっとという歩道しかなく、日大入口交差点をはじめとした歩行者にとって危険箇所を残したままなのに、3000~4000人の住む街ができてしまったらどうなってしまうのか、という懸念が持たれています。

南日吉団地入口交差点から日大高校方面に向かう道路も安全とは言えず、突き当りの交差点には信号もない

南日吉団地入口交差点から日大高校方面に向かう道路も安全とは言えず、突き当りの交差点には信号もない。左手が新小学校などが建てられる再開発地

敷地の綱島側では、南日吉団地入口交差点から日大高校方面に向かう道路も安全とは言えません。比較的、通行量が少ないこともあって乗用車はかなりのスピードで飛ばしています。さらに、この道の終端となる交差点は信号機もない状態なので、事故が多発しているといいます。ここは新小学校の通学路となる道なのに大丈夫なのか、との声も目立ちました。

今回、説明会を行ったのは、野村不動産と横浜市の教育委員会。どちらも道路整備・改善や信号設置の権限はありません。道路に関しては横浜市の道路局や港北区の土木事務所、再開発については横浜市の都市整備局、信号機については神奈川県警と担当が分かれています。

箕輪町の再開発では、横浜市と野村不動産が連携を取りながら、一部敷地を小学校用地として市に転売するという現在の計画が生まれたとみられます。

これまでこの再開発に密接に連携をとってきた経緯を考えると、市は箕輪町2丁目や日吉7丁目における歩行者の環境がどのような状況にあるかを理解していないはずがありません

いくら素晴らしいコンセプトで再開発を実行したとしても、新旧住民が危険な状況におかれるまま放置していては、街の価値は大きく損なわれてしまいます。

下田町では旧スーパー「サミット」の解体と同時に歩道も消えてしまった(2016年10月)

下田町では旧スーパー「サミット」の解体と同時に歩行者空間が跡形もなく消えてしまった、右側は高田方面へ向かうバス通りの主要道(2016年9月30日)

一方、歩行者の環境に関する問題は、箕輪町の再開発だけではありません。

同じ日吉の下田町では、旧スーパー「サミット日吉店」(下田町5)の跡地で、解体によって小学生らがこれまで通行していた歩行者空間が一切なくなってしまい、今後の通学環境に懸念が生じています。

スーパーがあった頃は、店や駐車場の前に私道としての歩行者空間が設けられていましたが、今後の宅地開発では、どのようになるか分かりません。

横浜市は、こうした住民の不安に対してどのような答えを示すのでしょうか。「再開発は最終的に市長の諮問機関である横浜市都市計画審議会が決定すること」といった手続き的な話ではなく、改善へ向けた真剣な姿勢を示すことが求められます。

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