<深刻化する振り込め詐欺>ベテラン従業員の機転で被害を未然に防いだ「いなげや綱島店」 | 横浜日吉新聞

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港北警察署で、感謝状の贈呈式
子母口綱島線沿い近くにある「いなげや横浜綱島店」

子母口綱島線沿い近くにある「いなげや横浜綱島店」

機転を利かせた店員の行動が振り込め詐欺被害を未然に防ぎました。今月(2016年6月)7日(火)の9時30分ごろ、綱島西4丁目のスーパー「いなげや横浜綱島店」で、携帯電話で通話しながら店内ATM操作を行っていた高齢女性をパート従業員の石澤良子さん(65歳)が発見。複数回にわたって声をかけ、犯人側の口座へ現金が振り込まれる直前で食い止めたものです。

今年、港北区では5月末までに未遂も含め20件の振り込め詐欺が発生しています。昨年(2015年)同時期と比べて11件も増えており、被害総額がすでに8317万円にのぼる“非常事態”です。

港北区では振り込め詐欺の被害が急増している(港北警察署による2016年5月末時点での犯罪発生状況の資料)

港北区では振り込め詐欺の被害が急増している(港北警察署による2016年5月末時点での犯罪発生状況の資料)

被害は日吉本町で2件200万円、箕輪町は1件200万円、日吉町では1件82万円超、未遂に終わった下田町や綱島上町を含め、区内のあらゆるエリアで高齢者が狙われている状況です。ある街では、1人が2回にわたって計5500万円をだまし取られたケースもありました。

こうした状況に対し港北警察署では、高齢者が窓口で高額なお金を引き出した場合は銀行から連絡を受け、署員が現場へ急行して被害を水際で食い止める作戦を展開しています。

しかし、明らかに詐欺グループに騙されているような状況下であっても、被害者が犯人の巧妙なストーリーを信じ込まされているケースは多く、説得をまったく聞こうとしない人や、「自分のお金を降ろして何が悪いのか」と逆に署員が苦情や抗議を受けることもあるようです。

一方、犯人の検挙も増えてはいますが、逮捕にいたっても背後関係までを自供させることは難しく、実際に犯行を指示して資金源としている組織へたどり着き、摘発するまでは困難がともなうといいます。

約39年にわたり地域と密着、自然と声をかける環境に

港北警察署の陶山署長(左)から感謝状を受けた「いなげや横浜綱島店」の石澤さん(右)

港北警察署の陶山署長(左)から感謝状を受けた「いなげや横浜綱島店」の石澤さん(右)、左隣は山内店長

警察側でもそうした苦労を重ねている最中だけに、地域で被害を食い止めた意義は大きく、港北署の陶山和美(すやまかずよし)署長は「金融機関ではこうした振り込め詐欺対策の訓練を相当に行っていますが、スーパーで止めていただいたのは本当にありがたく、素晴らしいこと」と感謝。いなげや横浜綱島店の石澤さんと山内秀一店長に感謝状を手渡しました。

同店は綱島の地で約39年間にわたって営業を続けており、地元に親しまれるスーパーとして地域の愛用者が目立ちます。お手柄の石澤さんもかつて綱島に住んでいたといい、同店に30年間勤務してきた大ベテラン。「昔からのお客さまも目立ち、自然と声をかける機会は多い」という環境にあります。

今回の件では、石澤さんが店内サービスカウンターに勤務中、携帯電話を手にATMコーナーにいた女性の姿を見かけて「振り込め詐欺ではないかと直感した」といい、積極的に声をかけたことで被害を防止。「従業員には振り込め詐欺の注意点などを伝えてきた」(山内店長)ことも功を奏しました。

港北区内で振り込め詐欺被害が増え続けるなかで、地域の役割も大きくなっています。被害防止を考えるうえで、今回のいなげや横浜綱島店のケースから学ぶことは多そうです。

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【参考リンク】

港北区内犯罪発生状況PDF、2016年5月末現在、港北警察署)

振り込め詐欺急増中!こんな手口にご注意を(もっとも狙われているのは70~80代、神奈川県庁)

いなげや横浜綱島店の案内


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