「春の褒章」で日吉から受章者、顔を見れば納得の地域貢献で著名な2氏 | 横浜日吉新聞

横浜日吉新聞
受賞者におくられる藍綬(らんじゅ)褒章の実物(内閣府ホームページより)

受賞者におくられる藍綬(らんじゅ)褒章の実物(内閣府ホームページより)

政府が先月(2016年4月)28日に発表した「春の褒章(ほうしょう)」は全国で704人、神奈川県内では31人が受章しましたが、なんと、そこに日吉の住民が複数含まれていたことがわかりました。

褒章は社会や文化の発展に貢献した人をたたえる日本の表彰制度で、著名人が受章することが多い「紫綬褒章(しじゅほうしょう)」がもっとも知られており、全部で6種類の褒章があり、明治時代から続いています

今回、日吉の2氏が受章したのは「藍綬(らんじゅ)褒章」。公共のために貢献した人が対象となるもので、消防団や社会福祉関連の役職者など、地域のために長年活動をしてきた人におくられるケースが目立ちます。

このほど、2016年春の藍綬褒章を受けたのは、日吉3丁目の相原鎮雄さんと日吉本町4丁目の山口繁さん。名前を聞いただけでは分からないかもしれませんが、顔を見て、その役割や活動を知れば「あっ、あの人だったのか!」と思い出すに違いない地域の著名人です。

日吉神社の宮司・相原さん、保護司として33年活動

相原鎮雄さんは日吉神社の宮司である一方、33年にわたり保護司をつとめている

相原鎮雄さんは日吉神社の宮司である一方、33年にわたり保護司をつとめている

日吉3丁目の相原鎮雄さんは65歳。長年、日吉に住んでいる人なら一度はお世話になっている「日吉神社」の二代目宮司(ぐうじ=神社の代表者)です。初もうでや節分などの行事の際には、必ず見かける「神主さん」がその人です。

日吉神社を代表する宮司として広く知られる相原さんですが、一方で33年前から「保護司」として活動し、日吉や港北区の街に貢献してきました。

保護司は、犯罪や非行で刑務所や少年院などに収容され、仮釈放や保護観察となって社会へ戻ってきた人の立ち直りを地域で支援する存在です。ボランティアの立場ながら、関係法令の学習や面接の方法といった研修を受け、保護観察対象者の報告書提出を行うなどの重要な役割を担っています。加えて、犯罪や非行の予防活動も行っており、日吉台中や日吉台西中で定期的に講演などを開くこともあります。

各地区におおむね1人はいる保護司ですが、33年前は日吉エリアに1人もいない状況となっており、相原さんが引き受けることになったのが保護司として歩み始めたきっかけでした。

「今回の藍綬褒章の受章は大変ありがたいこと」と話す一方で、保護司のなり手が年々減っているのが気がかりだといいます。神奈川県内の保護司定員に対し200名程度が不足しているといい、港北区内でも定員の49名に7名足りていません。現在、港北保護司会の会長をつとめる相原さんとしては、受章に喜んでばかりはいられないようです。

「犯罪を起こした方と真正面から向き合い、面接指導を定期的に行っていくのは簡単なことではなく、家族の理解も必要です」。

地域の拠り所である神社を長年にわたって維持してきただけでなく、別の形でも日吉のために働いてきた相原さん。これからも変わることなく活動していく考えです。

「日吉湯」の山口さん、地域防災の最前線で長年活躍

銭湯「日吉湯」を経営する山口さんは消防団として地域の防災を担ってきた

銭湯「日吉湯」を経営する山口さんは消防団として地域防災の最前線を担ってきた

山口繁さんは66歳、顔を見たことがある人も多いことでしょう。日吉本町駅近くの南日吉商店街で銭湯「日吉湯」を営んでいるその人です。港北消防団で長年活動。今年3月末まで第五分団(6班に分かれて日吉一帯を担当)で、分団長の重責を担ったことに対しての藍綬褒章の受章となりました。

消防団は「消防署」とともに、地域の火事や災害の際、消火活動や救助活動を行う地域住民の組織で、別に本業を持ちながら活動を行う特別職の公務員(非常勤)です。火災や震災の現場では、消防士などともに、必ず消防団員の姿を見かけるはずです。

今年4月からは新たに港北消防団の副団長という重責も担う山口さん。消防団に入ったのは23歳の頃。当時は木造住宅が目立っていたことから出動は多く、消防車もなく、リアカーで簡易式ポンプを運んで消火にあたるなど、日吉本町地区の防災や人命救助の最前線を担ってきました。

消防車を町内会の寄付で購入し、保管場所を設置する場所を探したり、消防団員の処遇改善にも努めたりしたという山口さん。今回の藍綬褒章の受章についても、「たまたま若い頃から消防団に入ったので、年数が長かっただけ」と謙遜します。

これからの時季は、週2回実施する訓練や、日吉湯の経営がある中での副団長としての活動については、「“家庭第一”ではあるけれど、どうしても消防団優先になってしまうね」と、常に地域のことを第一に考えている姿勢こそが、受章につながったのかもしれません。

山口さんが営む日吉湯は、1963(昭和38)年に先代が創業し、半世紀以上にわたって日吉の人々に親しまれてきた銭湯です。現在は、銭湯事業者による神奈川県公衆浴場業生活衛生協同組合で、副理事長の立場にもある山口さんですが、少子高齢化社会の進展に伴い、銭湯の経営も厳しさを増しているといい、港北区内で営業している銭湯は8軒にまで減っています。そんな厳しい環境下でも、今では日吉湯は日吉住民に著名な“スーパー銭湯”としても知られ、新たな客層も取り込みつつあります。

地元の人々が憩える場を提供しながら、地域の平和を守ってきた山口さん、本業である日吉湯の経営はもちろんのこと、港北消防団の副団長として、日吉の街と港北区を支えていく意気込みにあふれています。

【関連記事】

元外務省の特命全権大使、下田町の藤原稔由さんが秋の叙勲で「瑞宝章」を受章(2015年11月4日)

【関連リンク】

保護司ひとくちメモ(法務省、保護司についての役割説明)

港北消防団のページ(横浜消防)

消防団について(総務省消防庁)

日吉神社(神奈川県神社庁)

日吉湯(神奈川県公衆浴場業生活衛生同業組合)


カテゴリ別記事一覧