ろう者と言語研究を専門とする研究者が慶應日吉でワークショップを開催――慶應義塾大学経済学部の松岡和美研究室は、2016年3月12日(土)14時から17時まで、手話言語学ワークショップ「日本手話の一致に関わる表現」を、慶應義塾大学日吉キャンパス・来往舎シンポジウムスペースにて開きます。
一般的に「手話」というと、日本語をろう者のために置き換えたもの、と思いがちですが、日本のろう者が使用する「日本手話」は、「日本語と、イタリア語くらい異なるものなんです」と松岡教授。「日本手話は、日本語と文法も全く異なり、日本語はろう者にとっては“外国語”のようなものなんです。今回のワークショップでは、ろう両親から生まれた、生まれもって日本手話を“母語”としているろう者が登場します。そこで、言語学を専門としている研究者と、言語学的なアプローチでワイワイ和やかにワークショップを行います。好評いただいた昨年に引き続き、5回目の開催となります」と語ります。
当日は、日本手話の文法を考察するフィールドワークの「シミュレーション」を公開。手話話者の母語に関する発見と、言語研究者の知見と経験を活かして、全員が協力しながら手話データを収集し、整理するとのことです。
「ろう者と言語学者のやりとりが分かりやすいよう、当日は日本手話の通訳もあるので、一般の方でも安心してご参加いただけます。楽しく言語学を、というコンセプトなので、当日参加される皆さんには、聴衆としてご参加いただくばかりでなく、コメントや質問の時間も用意されています」と松岡教授。
松岡教授の手話言語学についての研究成果の一部は、書籍「日本手話で学ぶ手話言語学の基礎」として昨年2015年10月に出版(くろしお出版)され、こちらも既に2000部を売り上げ、増刷発行されるなど、世界的に珍しい、日本手話によるDVDが付いた入門書して注目されています。
「ろう者から生まれた日本手話を母語とする人にとって、日本語は外国語。そんな日本手話を、言語学者とのやりとりの中で、身近に、また一つの言語として学んでいただける貴重な機会です。ゲストにお招きしている先生方も、分野で定評がある研究者ばかりなので、その点でも貴重な出会いの機会になると思います。一人でも多くの方に、日本手話と言語学者とのやりとりをご覧いただきたいと企画しました」と、松岡教授は今回のワークショップへの参加を呼び掛けています。
開催は2016年3月12日(土)14時から17時まで、慶應義塾大学日吉キャンパス・来往舎シンポジウムスペースにて。入場無料。事前予約の必要はありません。
【参考リンク】
・慶應義塾大学・松岡和美教授のホームページ
・ろう者と聴者が協働する手話言語学ワークショップ「日本手話の一致に関わる表現」(PDF、上記ホームページからのリンク)
・作品詳細「日本手話で学ぶ 手話言語学の基礎」(くろしお出版WEB)
・慶應義塾日吉キャンパス案内(キャンパスマップ:9番が来往舎)