箕輪町2丁目にある「東京綜合写真専門学校」では、今年(2015年)9月に41年ぶりに独自の出版局を復活させ、4冊の写真集を出版しました。1970年代初頭に『写真批評』という著名雑誌を刊行し、写真界に大きな影響を与えた同専門学校。再び出版界でも写真が持つ可能性を追求していく考えです。
東京綜合写真専門学校は、芸術批評家である重森弘淹(こうえん)氏が1958(昭和33)年に設立した東京フォトスクールが源流ですが、1963(昭和38)年に箕輪町へ移転してからも既に50年以上が経過。これまでに多数の写真家を日吉の街から輩出してきました。
専門学校として写真家を育成する一方、1973(昭和48)年には出版局を設けて評論雑誌『写真批評』を刊行し、「表現とは作者の批評行為であり、それなくして表現は存在しない」という創設者の理念を形にしてきた歴史があります。
この写真批評という雑誌が与えた影響は大きかったものの、本格的な批評誌だっただけに制作に苦労したのか、1年余で休刊を余儀なくされたようです。その後、同校の出版局も休止したままでした。
41年ぶりに出版局を復活させた背景には、日本の写真家による作品が海外を中心に高い評価を集めていることや、卒業生をプロ写真家としてのデビューを後押しするという役割も果たしたいといいます。
現在、約70人が学ぶ同校は、大学卒業後や社会人を経てからの入学者が多いため、“即戦力”に近い学生をバックアップする目的も大きいようです。
同校出版局はこれまでに『YASUKUNI』(伊奈英次)や『per se(パルセ)』(柴田麻希)、『MILD NATURE』(松井一泰)、『既視の街』(渡辺兼人)という写真界で活躍する卒業生を中心に、4冊の写真集を刊行しており、今後も出版を続けていく予定です。
市場が縮小傾向にある出版界では、採算ベースに乗りづらい写真集は避けられる傾向があるなかで、出版の分野においても、老舗の専門教育機関が果たす役割は大きくなりそうです。
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