あらたまったニュース記事にはできないけれど、日吉の日常で知った情報や出来事をみなさんと共有する「ひよしコラム」を2015年10月25日から始めました。運営者(Nishimura)やそのほかの関係者が発信していきます。第1回目は日吉にある地元の公立中学校に関する話題です。各種情報から噂話の現状を探りました。
日吉の街には、公立中学校が2校あります。「日吉台中学校」(日吉本町4、通称「台中」)と「日吉台西中学校」(日吉本町5、通称「西中」)です。
綱島では、鶴見川を渡った横浜寄りの、どちらかというと大倉山駅に近い場所の樽(たる)町4丁目にある「樽町中学校」(通称「樽中」)が唯一の中学校ですので、2校ある日吉の街は恵まれているといえます。

2校区500人という規模からかアットホームな雰囲気がある日吉台西中学校
このなかでは、日吉台中がもっとも古い歴史を持っており、戦後間もない1947(昭和22)年に創立。その後、生徒数が増えたため、1977(昭和52)年に分離する形で、隣町の日吉本町5丁目に日吉台「西中」が設立されています。樽町中の創立も1974(昭和49)年です。
日吉台「西中」は、駒林小学校(日吉本町2)と下田小学校(下田町4)の2校区のみを学区としていることもあり、生徒数も500名弱で「駒林・下田地区の中学校」という落ち着いた雰囲気があります。
一方、日吉台中は、日吉台小学校(日吉本町1)や日吉南小学校(日吉本町4)、矢上小学校(日吉3)の3小学校区に加え、北綱島小学校(綱島西5)の一部(綱島西や綱島台の一部地域)を含むなど校区が広範囲にわたっており、生徒数も900名と大規模です。歴史の長さから見ても、日吉・綱島を代表する公立中学校ということがいえます。
台中への“定番イメージ”は「昔、荒れていた学校」
そんな長い歴史を持つ大規模校の日吉台中ですが、同中学校に向けられるイメージは決して良いとはいえません。
「昔、荒れていて今でも学校が荒れているらしい」
「地元の小学校では、ほとんど私立中学に進学させる」
「女優の●●がいたころは校舎内をバイクが走り回っていたらしい」
近所での会話も、インターネット上での記載も、日吉台中に関する「噂話」の多くは、もう何年もの間、昔話の影響を受けているであろうそんな3点に集約されています。
日吉台「西中」に関しては、落ち着いているという噂しか聞こえてこないのとは対照的です。
日吉台中に向けられている長年固定化されたイメージや噂話は、果たして今も真実なのでしょうか。
客観的な事実とデータをもとに考えてみましょう。
日吉台小と綱島小では生徒の半分が私立中学に
地元小学校では公立中学校への進学をどう考えているか、という点に関しては、興味深いデータがあります。
今から4年以上前の2011年2月時点でのデータですが、横浜市内で私学進学率の高い小学校について、「横浜市会(議会)」の場で横浜市教育委員会が校名を明かしたのです。
私立中への進学率が高い横浜市ベスト3が次の小学校でした。
1.緑園(りょくえん)東小学校:54.3%(泉区、相鉄沿線)
2.綱島小学校:50.8%(綱島西3、樽町中学校校区)
3.日吉台小学校:49.5%(日吉本町1、日吉台中学校校区)
※2011月2月時点のデータ
これは港北区内のランキングではなく、横浜市内全体(市教育関係統計資料によると2015年4月現在の市立小学校数は全342校)のものです。そのなかに、日吉と綱島を代表する小学校2校が並んで入っていました。
ちなみに、横浜市内18区のうち、私立中学に進学する生徒が多い割合は、2011年2月時点で青葉区の30.9%がトップでしたが、港北区は24.5%と区別で2位につけています。
港北区内全体が私学志向の高い状態にあるといえますが、それでも25%弱ですから、綱島小と日吉台小は横浜市内でも突出しています。生徒の半分が地元の公立中学(樽町中と日吉台中)に進まないという選択をしているのです。
こうした傾向が、日吉台中をはじめ、日吉・綱島の公立中学校に対するイメージ形成に強く影響しているといえます。
日吉台中の出身と噂される有名女優の影響力
日吉台中に関する噂話の類(たぐい)について、避けて通れないのが、芸能界で活躍する有名女優の存在です。
1980年代初頭にその女優は日吉台中の生徒だったとされており、「公然の事実」としてインターネット上で流布されています。
「日吉台中 女優」で検索してみれば、その方の名前は1ページ目に出てくるでしょう。誰でも簡単に手に入る情報です。
なお、この方が日吉台中の卒業生であることの真偽については、誰もが編集や書き込みに参加できる百科事典「Wikipedia(ウィキペディア)」に書き込まれているのが唯一の情報源とみられ、この情報が大量にコピーされる形で出回っています。
公式プロフィールには神奈川県出身とだけ公開されていますので、本コラムではあえて名前を出していませんし、真偽の判断もいたしません。
この女優の方は、自らの著書等で中学校時代を振り返り、校内暴力などで相当に荒れていたことを明かしているといいます。
ただ、この方が中学生だった1980年台は、当時大ヒットしたテレビドラマ『3年B組金八先生』で描かれたように、全国の中学校で校内暴力が多発していた時期です。通っていた学校が決して「特別」ではなかったという時代背景は知っておく必要があります。
とはいえ、この女優の方がテレビなどで見せていたキャラクターや、芸能ニュースなどで伝えられる私生活上の話題もあって、視聴者には「ちょっとワルで派手」といったイメージが出来上がっているようです。大きな影響力のある有名人だけに、出身学校であると校名を上げられている日吉台中に関する噂話に関しても、何らかの影響を与えていることは否定できないでしょう。
ここ数年「全般的にますます落ち着いてきている」
現在の日吉台中の現状について、客観的なデータとしては先月(2015年9月)下旬に発行された「学校だより」が参考になります。同中学校の高橋秀吉校長が「さらに、日吉台中が発展していくために」という文章を発表しています。
ここでは、かつて日吉台中が「生徒指導困難校」(学力面や授業態度、学校生活面などで課題が多く、生徒への指導が難しい学校)であったことを明かしています。
そのうえで、「ここ数年、全般的にますます落ち着いてきています」とする一方で、「落ち着くのがゴールではありません」として、新たな課題への取り組みについて述べています。
現在、日吉台中には「特別支援教育」(障害のある生徒や基礎的な学力が身に付いていない生徒への支援)が必要な生徒が所属する「個別支援級」があり、25名が所属。これは市内中学校のなかでは数番目の多さだといいます。
ただし、この点については、「台中の特色と言っていいと思います。個別支援級の取り組みが学校全体に良い影響を与えていると感じています」と前向きにとらえており、個別に指導を行う細かな取り組みが、結果として日吉台中を良い方向に向かわせていると紹介しています。
生徒の高い学習意欲と学力、理系分野に強み持つ傾向

日吉台中学校の公式ホームページ
この学校だよりには、今年(2015年)4月に現中学3年生を対象に行われた「全国学習状況調査」(生徒アンケート調査と国語、数学、理科の3教科のテスト)における日吉台中学校の状況が公開されています。
アンケート調査での、「難しいことでも,失敗を恐れないで挑戦していますか」や「友達の前で自分の考えや意見を発表することは得意ですか」という設問では、日吉台中は全国公立中や神奈川県公立中の平均値を2~3%下回っている結果だったといい、「これからの社会を生き抜くうえで必要な『チャレンジ精神』や『表現力』については今後の課題」としています。
一方で学習意欲や学力面では、全国・県平均よりも上回る数値となっていました。
「家で、自分で計画を立てて勉強をしていますか」という設問では、「はい」と答えた率が全国・県平均が16.5~16.7%だったのに対し、日吉台中では23.4%です。
また、「家で、学校の授業の復習をしていますか」との問いに対しては、全国18.5%、県平均は14.5%でしたが、日吉台中は28.1%でこちらも高い数値となっています。
さらに、「学校に行くのは楽しいと思いますか」との質問への回答では、「はい」の割合が全国47.5%、県46.3%でしたが、日吉台中はほぼ半分の49.5%が学校を楽しいと答えていました。
学力面では、国語の活用を問う「B問題」で全国・県平均を0.2~0.9%下回っていましたが、これ以外の「国語A問題」や数学、理科ともに平均以上の正答率となっており、特に数学では、6~8%も上回っています。理科も平均より4~5%高い数値で、日吉台中では数学と理科が得意な生徒が目立っているようです。
インターネット情報の真偽を見抜くことの重要性
以上、日吉台中学校に関する情報についてここまで長々と紹介しましたが、これはできうる限り正しい現状を伝えることで、正しい判断をしていただきたいとの思いからです。
特にインターネット上では、簡単に「コピー」された真偽不明の情報だけが飛び交って、それがさも真実であるかのようになってしまうケースが後を絶ちませんし、その情報が正しいか否かを判断することさえ非常に困難です。
日吉台中の近所に住んでいると主張する人が、たまたま見かけた事象をとらえ、「ガラの悪い生徒がいる」とか「やっぱり昔と一緒で生徒の態度が悪い」といったことをインターネット上で流布した結果、それを見た人が安易に信じ込み、さらに尾ひれが付いた噂を流す……。
インターネット上における日吉台中に関する発言を分析してみますと、特に30代後半から~50代とおぼしき「おじさん」にそういう「昔話混在型の噂」を流布するという傾向が見受けられます。該当世代の筆者としては、恥ずかしい思いがしています。
日吉台中にはもっと情報を発信してほしい
こうした状況を考えると、やはりお願いしたいのは、日吉台中の情報発信力の強化です。今の情報発信のままでは、誤った噂や情報を流される一因でもあるからです。
「学校だより」などの印刷物を通じ保護者らに報告するのは重要なのですが、それだけでは地域の人にはなかなか伝わりません。今はインターネットで簡単に情報が得られる世の中です。スマートフォンで検索してそこに出てきた情報が「真実」として信じ込まれ、独り歩きしてしまいます。だからこそ、ここまで長々と書いています。

樽町中学校のホームページでは積極的に学校の情報が発信されている
日々の学校運営業務だけでも多忙なのに、先生方の仕事を増やしてしまうのは大変申し訳ないのですが、日吉台中の公式ホームページがほとんど更新されないままに放置されているのは残念でなりません。この間にも、部活動で生徒が目覚ましい成績を収めるなど、地域やOBなどに誇るべき伝達事項は多数あったはずです。グーグル(グーグルのシステムを使っているヤフーも同様)の検索結果に見られるように、公式情報に勝るものはありません。
地域の公立中学校がどう見られるかは、学校だけの責任ではなく、その地域住民の責任もあります。そこへ通っている生徒も親も兄弟も親類もOBの多くも「住民」であるからです。良いことも悪いことも情報を共有し、地域も学校と同様に運営の責任を担う必要があるのではないでしょうか。
日吉台中と同じように、私学に進学されてしまう傾向が強い綱島の大規模校・樽町中では、学校の現状を知ってもらおうと、校内の行事から部活動での活躍まで、ホームページを通じても懸命かつ丁寧に情報を発信しています。こうした姿勢は、地元でも心強く感じているはずです。
インターネット上に流れる「真偽不明な負の情報」を駆逐するには、まずは正しい公式情報を大量に流すことです。放置しておくと、負の情報ばかりが増殖します。誰もが匿名で何でも安易に発信できるインターネットの特性上、正しい情報よりも、真偽不明でも負の情報のほうがインパクトがあるため、強い増殖力を持ってしまうからです。
日吉の学校について、昔の話だけで悪く言われて流布されてしまうのは日吉住民の一人として残念です。日吉台中(西中も同様です)にインターネットでの情報発信の体制が整うまでの間は、微力ながら本紙が正しいもしくは客観的な情報を探し出し、できるだけ頻繁に発信していきたいと考えています。