日吉を代表するコーエーまで移転発表の衝撃、街の変化はどこまで続くのか | 横浜日吉新聞

横浜日吉新聞
ひよしコラム 日吉コラム

ひよしコラム日吉の街からコーエーが去ってしまうことになるのでしょうか。先月(2016年10月)27日、箕輪町1丁目に本社を置くコーエーテクモホールディングスは、主要子会社であるコーエーテクモゲームスの本社をみなとみらい地区へ移すことを発表しました。東京証券取引所の一部上場企業で、ゲーム業界では高い知名度を持つコーエーグループは、日吉を代表する企業であるだけに、街に与える影響は少なくありません。

コーエーテクモホールディングスの公式発表によると、

・株式会社コーエーテクモゲームス(箕輪町1、鯉沼久史代表取締役社長)の本社をみなとみらい4丁目3番(47街区=みなとみらい線・新高島駅徒歩2分)に移転する

約1600人収容規模の本社オフィスと、コンサートなどを開催できる約2000人収容のライブハウス型ホールを備えた複合施設(ビル)をコーエーテクモゲームスが三菱地所から(区分)取得する

・この複合施設(ビル)は2019年度(2019年4月~2020年3月)に竣工となる

2009年4月にテクモと合併したことで社員数も増加した(2008年11月の記者会見時の資料より[PDF])

2009年4月にテクモと合併したことで社員数も増加した(2008年11月の記者会見時の資料より[PDF])

・コーエーとテクモ(当時東証1部上場のゲームソフト会社で「デッド オア アライブシリーズ」や「ギャロップレーサー」「つっぱり大相撲」などを開発、パチンコ・パチスロ向けソフトも展開)が2009年に経営統合して以来、連続して最高益を更新している

・移転予定の2019年は、経営統合から10周年を迎えるため、記念事業という位置付けとなる

・移転を決めた理由は「世界No.1のエンタテインメント・コンテンツ・プロバイダー」を目指しているコーエーグループとして、みなとみらい21地区は「複合的なメディアミックス展開を進めていく拠点にふさわしい理想の場所」であると判断したため

・本社オフィスとライブハウス型ホールを取得することにより、新しいチャレンジを行い、今後のさらなる成長と発展につなげていく

20160316koei_nobunaga_souzou04

箕輪町1丁目の綱島街道沿いにあるコーエーグループの現本社は1997年から使用

以上の公式発表では、主要子会社であるコーエーテクモゲームスのみの本社移転を公表していますが、グループを統括する親会社のコーエーテクモホールディングスについても、「移転を検討する」と10月28日7時公開の日本経済新聞電子版は伝えています

一方、同複合施設(ビル)の開発を担当する三菱地所は、このビルにはオフィスとホールに加え、約230室のビジネスホテルも整備する計画で、完成後はオフィスとホール部分に関してはコーエーテクモゲームスに譲渡すると発表しました。

みなとみらい開発に注力中の横浜市は大喜び

コーエーの公式発表と同時に、横浜市も経済局誘致推進課の名で「株式会社コーエーテクモゲームス 横浜みなとみらいへの本社・音楽ホールの立地を決定!」と題したニュースリリースを公開しています。

横浜市のニュースリリースには、林市長とコーエーグループの襟川恵子会長が並ぶ写真も掲載

横浜市のニュースリリースには、林市長とコーエーグループの襟川(えりかわ)恵子会長が並ぶ写真も掲載

ここには林文子市長

・みなとみらい21地区を新たな本社の立地場所にお選びいただき、大変光栄である

・コーエーテクモゲームス様には昨年、市営地下鉄の利用マナー向上・観光キャンペーンにもお力添えをいただいた

・このたび本社とともにライブハウス型ホールも整備されることにより、世界に向けて新たなコンテンツが発信され、市内経済の活性化はもとより、更なる賑わいの創出、地区のブランド価値の向上が期待される。みなとみらいの新たな拠点として発展されることをご期待申し上げる

という内容のコメントも発表。文面からは、みなとみらいの開発に注力する横浜市の大きな喜びぶりが伝わってくるかのようです。

グループの中枢は日吉駅周辺の3カ所に分散

コーエーはどういう企業グループなのでしょうか。同社の歴史シミュレーションゲームや会社名を知る人は多いものの、グループ企業の構成ついては地元でも知る人が多いとはいえません。

コーエーテクモホールディングスには多くの子会社があるが、なかでもゲームスが最大規模を誇る

コーエーテクモホールディングスには多くの子会社があるが、なかでもゲームスが最大規模を誇る(同社ホームページより)

コーエーテクモホールディングスは、グループを統括する持ち株会社で社員数は67名(2016年3月末現在)とされていますが、同社の傘下には、多くの子会社(事業会社)が連なっています。そのなかでは、下記の4社が主要な事業会社となっているようです。

株式会社コーエーテクモゲームス(本社:箕輪町1、鯉沼久史社長)

株式会社コーエーテクモネット(本社:箕輪町1、阪口一芳社長=ゲームやソフトの流通・卸し・通信販売)

株式会社コーエーテクモウェーブ(本社:東京都千代田区九段北、阪口一芳社長=アミューズメント施設の企画開発やスロット・パチンコの液晶開発)

CWS Brains株式会社(本社:東京都千代田区九段北、藤田一巳社長=情報サイト「超ワールドサッカー」など運営)

これら4社のうちコーエーテクモゲームスが最大規模とみられ、2015年6月の「会社四季報」によると、同年3月の社員数は1044名。コーエーグループ全体の社員数は1570名(今年3月末現在)と公表されていますので、約3分の2はコーエーテクモゲームスの社員という計算になります。

一方、コーエーグループは、都営新宿線の市ケ谷駅に近い九段北に旧テクモの本社だった6階建てのビルも拠点として活用。2つの子会社が本社を置いていますが、中枢となる3つの拠点はすべて日吉駅の周辺にあります。

本社ビル(箕輪町1丁目※日吉駅に近い側、1997年4月から本社)

1997年3月まで本社として使っていた第2ビルも綱島街道沿いの箕輪町1丁目にある

1997年3月まで本社として使っていた第2ビルも綱島街道沿いの箕輪町1丁目にある

第2ビル(箕輪町1丁目、1991年6月~1997年3月まで本社)

ジェミニビル(日吉本町1丁目、2007年5月に完成、200名超が収容でき、主にオンラインゲームの拠点と言われる)

なお、同社が日吉へ移転してきた1984(昭和59)年10月から1997年4月まで本社として使っていた3階建てのビルは、駅西口の日吉郵便局に近い「メイルロード」に今も健在ですが、グループとしては公式に活用はしていないようです。

日吉移転から30年超、成長で社屋拡張は限界か

コーエーの前身となる「株式会社光栄」が染料の販売会社として足利市に誕生したのは、今から40年近く前の1978(昭和53)年7月。その後、パソコンのソフト開発分野に進出し、今も知られる「川中島の合戦」や「信長の野望」を発売した後にソフトメーカー専業となった歴史を持ちます。

日吉の名物となった感もあるジェミニビルだけが日吉本町1丁目にある

日吉の名物となった感もあるジェミニビルだけが日吉本町1丁目にある

ゲーム開発会社として歩みを進めると同時に、日吉へ本社を移転。それから32年が経ちました。同社が成長するとともに、最初の本社だった駅前商店街のビルでは足りなくなり、箕輪町1丁目に2つのビルを建設。それでも足りず、10年ほど前には日吉本町1丁目のいわば“高級住宅街”と言われるエリア内にジェミニビルを設けた経緯があります。

現在、同社グループの社員のうち900人から1000人が日吉で働いていると言われ、日吉だけでも3つのオフィスに分散しています。次の成長に向けて社員を増やし、社屋も拡張することを考えた時、駅の周辺に大規模な拠点を作れるような土地はもう見当たりません。仮にあったとしても、住宅街の日吉では背の高いビルの建設は不可能です。日吉の地での拡大は限界にきているようにも見えます。同社が今後も成長を続けるためには、この街から“卒業”を決断しなければならない時期だったともいえます。

箕輪町の本社ではメディアを集めて会見や発表会を開くことも多かった、写真真中が襟川陽一社長、左2人目がゲームスの鯉沼久史社長(2016年3月)

箕輪町の本社ではメディアを集めて大がかりな記者会見や発表会を開くことも。写真真中が創業者の襟川陽一社長、左2人目がコーエーテクモゲームスの鯉沼久史社長(2016年3月)

現時点では、コーエーテクモゲームス以外の企業が移転することは公式発表されておらず、日吉の名物ともいえるジェミニビルは建設から10年も経っていないため、ここから直ちに撤退するかどうかはわかりません。

一方、相鉄・東急直通線の鉄道建設に端を発した再開発では、日吉の街からユニー(アピタ)が消え、野村総合研究所(NRI)と損保ジャパン日本興亜も拠点を撤退させていますが、偶然なのかNRIや日本興亜(当時)とコーエーが日吉へ進出した時期は、1980年代中ごろから後半にかけてとほぼ同じ。そして現在のコーエー本社と第2ビルは、再開発が相次ぐ綱島街道沿いに位置しています。再開発計画との関係も気になります。

日吉企業の象徴のようなコーエー(の大部分)が去ってしまうのは、日吉住民として嬉しくはない残念な知らせですが、街が再開発によって大きく変わろうとするなかで、これもまた、受け入れなければならない現実の一つなのかもしれません。

【関連記事】

<コーエー>2019年にみなとみらいへ本社移転、日吉の拠点は大幅縮小か(2016年10月27日)

<日経が報道>家庭用ゲームで高収益を生み出すコーエー、市場はスマホに期待感(2016年7月17日)

<コーエー>ゲームソフト・ソーシャル好調で最高の業績、新川崎駅前の不動産事業も(2016年5月9日)

商学部出身のコーエー・襟川(えりかわ)社長が慶應日吉で12/9(水)に講演(2015年12月2日)

【参考リンク】

横浜・みなとみらい21地区に本社オフィスとライブハウス型ホールを取得!(コーエーテクモホールディングス、2016年10月27日発表)

株式会社コーエーテクモゲームス 横浜みなとみらいへの本社・音楽ホールの立地を決定!(横浜市、2016年10月27日発表)

コーエーテクモゲームス、MMに本社移転 15階建てビル建設(日本経済新聞電子版、2016年10月28日7時公開、ホールディングスの移転にも言及)

信長から乙女ゲームまで… シブサワ・コウとその妻が語るコーエー立志伝(ドワンゴ「電ファミニコゲーマー」2016年3月22日、創業の経緯や日吉との関わりも書かれた貴重なインタビュー)


カテゴリ別記事一覧