横浜日吉新聞が1周年、広告目的ではない「地域メディア」に未来はあるか? | 横浜日吉新聞

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創刊時の横浜日吉新聞

2015年7月18日に創刊した当初の横浜日吉新聞は今と色合いも違う

きょう2016年7月18日(月・祝)で「横浜日吉新聞」は創刊から1年を迎えました。1年前に始めた頃には想像できなかったほど、多くの方に読まれるようになり、地域の情報を伝えるメディアの必要性をあらためて実感しています。これまでの思いや今後の展開について記してみました。

横浜日吉新聞を始めたきっかけは、当時都内の企業で会社員として、インターネット関連の媒体を運営していた筆者が感じた以下の思いでした。

  • 子どもを地元(日吉)の盆踊りに連れて行こうとしたらインターネット上に情報が載っていなかった
  • インターネット上には無数の情報はあるが、どれも似たような全国系のニュースや情報ばかりで、本当に必要な時には地元の情報さえも手に入らない。日頃、都心へ通っているので地元のことは知る機会がほとんどないのに、これでは困る
  • 誰か(企業や団体など)に期待するよりも、自分が欲しいと思っている情報サイトを自分で作ったほうが早い

こうした思いから、会社から帰宅後に2日間ほどかけて立ち上げたのが横浜日吉新聞です。まさに「ブログ」を始めるような感覚でした。

満員電車内でも地域情報を収集する人々に感動

「自分が欲しいから」との理由で始めた横浜日吉新聞でしたが、日々情報の発信を続けるうち、私と同じように、仕事のために都心などへ通う“日吉都民”のみなさんを中心に浸透していきました。

スマートフォン版の横浜日吉新聞

スマートフォン版の横浜日吉新聞

苦痛でしかない日々の通勤電車ですが、そんななかでも地元の情報を積極的に得ようとしている方々の姿を想像するにつけ、情報発信者としての責任を痛感。内容の充実を図ることはもちろんですが、スマートフォンで気軽に読めるよう、パソコン版よりもスマートフォン版を重視して改良を行ってきたところです。

現在、閲覧者に占めるパソコンとスマートフォン・タブレット端末の割合は、

  • スマートフォン(タブレット端末含む):72.0%
  • パソコン(Windows/Mac):27.1%

※端数はLinuxやChrome OS、ゲーム機端末など
※2016年7月17日現在グーグルアナリティクス調べ、以下同じ

という結果となっており、7割以上がスマートフォンやタブレット端末から読まれるようになりました。

読む人は右肩上がりで増加も、まだ「3分の1」

横浜日吉新聞の閲覧状況は、毎月の集計を「お知らせ」のコーナーで月始めに発表していますが、途中経過の2016年7月15日現在、過去30日間(6月15日~)の集計は次の通りです。

2016年6月15日から7月15日までのグーグルアナリティクスによる統計

2016年6月15日から7月15日までのグーグルアナリティクスによる統計

  • ページビュー(ページを何回見られたか):64万9,556回(PV=ページビュー)
  • ユーザー数(重複を除き何人が見たのか):6万474人(UU=ユニークユーザー)

インターネット業界的に言うと、約65万PV/月、6万500UU/月という媒体です。

閲覧者の数は、おおむね右肩上がりで伸びてはいますが、横浜日吉新聞の対象エリアにおける推定人口は17万5000人(通勤・通学者も含む)と考えれば、このうち3分の1ほどの6万500人にしか読まれていない計算になります。今後のさらなる認知度向上が課題といえます。

なお、7月17日現在までに1054本の記事を公開しており、どのような記事が読まれているかについては、6月28日に掲載した「横浜日吉新聞の公開記事が1000本を突破しました!無限大に眠っていた地域の情報」という記事にまとめました。

「ネットは嫌、紙がいい」との声に応えられるか

「インターネットではなく、紙で読みたい」というご意見はよくいただきます。特に年齢の高い方からは「インターネットは見たくない、見られない」という声も目立ちます。70代の肉親からでさえ同じことを言われる始末です。

一方、紙で情報を届けるということは、印刷代や配送費などインターネットとはくらべものにならないほどの経費が必要となります。

こうした経費を広告収入でまかない、さらに儲けを発生させる目的で発行されているのが「フリーペーパー」と呼ばれる存在ですが、横浜日吉新聞は、忙しいビジネスパーソンが満員電車のなかでも地元情報を手軽に得られるというコンセプトで運営してきましたので、フリーペーパー的なものを発行するのは、本来の趣旨とは異なります

とはいえ、紙で読みたいとのニーズがある以上、それに応えなければとの思いも強く持っています。

そこで、A4版のチラシ的な紙版の「横浜日吉新聞」を試験的に作成し、日吉駅を中心とした約4600世帯の朝日新聞と日本経済新聞の購読者を中心に「折り込みチラシ」として今年6月28日にはじめて配布しました。

2016年6月28日に配布した横浜日吉新聞のダイジェスト版(PDFはこちらからダウンロードできます)

2016年6月28日に配布した横浜日吉新聞の紙版

インターネットでは何人のアクセスがあったかなどの数値はすぐに分かりますが、紙の場合は効果を測定するのが困難です。そのため、明確な数値は分からないのですが、

  • 紙版に記載した「日吉新聞」というキーワードによる検索での閲覧者が増えた

という影響が見られ、個別に紙版を読んだとの声もいただきました。

紙で読みたいニーズに若干ながらも応えることができ、認知度向上にも一定の成果があったと判断。第1号をさらに改良した紙版の「第1号第2版」を作成し、7月20日に1万5500部を日吉と綱島の一部地域に新聞折り込みの形で配布する計画です。

今回はさらに経費がかかることになりましたので、裏面には日吉で営業している店舗から趣旨に賛同いただき、協賛金をいただいたうえで記事を掲載。発行経費の一部縮減が図れました。今後、発行・配布コストと効果を考えながら、紙版の展開を検討していきたいと考えています。

「紙」で発行するにはお金がかかりすぎる!

紙版の「横浜日吉新聞」(A4片面カラー)について、発行・配布するためにどのくらいのお金ががかかったのかを公開しますと、次の通りでした。

  • 制作には「パワーポイント」を使用して自作したため、手間以外の直接コストは0円
  • 印刷はインターネット上から注文すると格安で印刷してくれる「プリントパック」を活用。A4サイズを片面カラーで5000部を印刷し料金は7600円
  • 新聞折り込み料金は港北区内の場合1枚3.6円(税抜)なので、4600枚分で1万7884円(税込)

5000部を印刷し、4600部を新聞折り込みで配布した結果、合計2万5500円ほどのコストがかかりました。

ちなみに、インターネットで媒体を運営するための直接コストは、横浜日吉新聞の開設当初で見ると、

  • レンタルサーバー料金:525円/月
  • ドメイン取得管理費:数百円/月
  • その他ソフトなど:数百円/月

※上記のほかはブログシステム「ワードプレス」など、すべて無料で使えるシステムやツールを活用

月に2000円以下という状況でした。ただ、現在では525円のレンタルサーバーでは多くのアクセスに耐えられなくなったこともあり、コストが増加。その他、さまざまな経費を含めおおむね月4000~5000円程度の運営経費が必要となっています。

それでも、紙を発行して配布することに比べると、インターネットがいかに安いかお分かりいただけるかと思います。

「これは広告目的で運営しているんでしょ?」

横浜日吉新聞が浸透するうちに、「広告目的で運営しているんでしょ」「広告モデルですか」という声を時折いただくようになりました。そうした問いかけは、インターネットや紙を問わず、メディアというものを運営していたり、携わっている人の感覚からすれば当然かもしれません。

ただ、これまで述べたように、横浜日吉新聞は自分が欲しいから作ったことが原点です。自分が読む立場なら、広告だらけのサイトはあまり読みたくはないですし、スマートフォンの狭い画面にしつこく広告が出てくるようなサイトは、すぐに消したくなります。

現在、横浜日吉新聞は2名で運営しています。一人が専業で、筆者が兼業です。これまでは“持ち出し”とボランティアで運営してきましたが、収入がない状態では、発展をさせることが難しくなるのも事実です。

先ほど示した月4000~5000円という運営コストには、パソコンやカメラなどの機材備品や通信費、プロバイダー経費、交通費などの取材経費、そして何よりもっともコストが高い運営人件費は含んでいません。

そのため、運営費をまかなう手段としては、グーグル社が配信する「アドワーズ」の広告を掲載しています。これは閲覧者が広告をクリックすると、1回あたり数十円程度が掲載者の収入となるシステムです。現時点では、おおむね4~6万円/月の収入が得られています。(アドワーズについての詳しい説明はこちら

このほかの広告掲載については、少しずつご要望をいただいており、地元の企業や店舗に限り、お話し合いを重ねた上にて有料でお受けしています。その際、どのような形なら有益な情報として読んでもらえるか、閲覧者の役に立つのかという点について、読者の反応を見ながら、広告を出していただいた側の店舗や企業とともに検証してきました。

その結果、

  • 記事(コンテンツ)としても面白く読め、地元の情報としても有益であると横浜日吉新聞が判断し、読まれるようにするための編集に協力いただける有料記事(広告)は、文末に「○○提供」と表示したうえで掲載。(これは、集客や認知度の向上に一定の成果が見られた)
  • 記事の体裁で自社(商品・サービス)のPRを中心に行いたい場合は、見出しに「○○PR」と表示。(このタイプの記事=広告はまもなく掲載予定)
  • バナータイプの広告は、基本的にグーグルからの配信を受けていますが、公益性が高い地域企業からの協賛が得られれれば販売する方向にて検討中。(現在までに地域への販売実績なし)

という形に決め、これからは上記にそって広告(記事)を有料で掲載していく予定です。ただし、政治(公職選挙法など法律で認められたものは検討=政治に関する考え方)・宗教・特定思想のPR、反社会的勢力とかかわりがあると疑わしい企業、効果の疑わしいサービスや食品などのPRなどをはじめ、日吉や綱島・高田など本紙のエリアとまったく無関係の内容や、公序良俗に反する内容、地域社会にマイナスの影響を与えかねない企業や個人の広告掲載は行いません。

なお、横浜日吉新聞は広告のために運営している媒体ではないのですが、現状では、人件費も含めた全ての経費を勘案すると、月に50万円程度の持ち出しで運営しているのが現状です。

一方で「記事は広告ばかり」という状態にはなることはないよう、これまでと変わらずに情報発信を続けていきますが、そのために、別途、「個人サポーター」「法人サポーター」の募集を数ヶ月内に行いたいと計画しています。

これは、あくまでこれまでご好評いただいた運営スタイルを維持するためのもので、ぜひ多くのご協賛や、ご支援・ご声援をいただきたく、運営者一同、お願い申し上げる次第です。

また、サポーターとしてご支援・ご参加いただくことで、より地域社会との窓口になれるよう、地域社会の新たな「第三軸」としてのコミュニティー(これまでの既存の組織にとらわれない新しい居場所づくり)の在り方を模索し、地域が抱える諸問題の解決(急速な開発の進展や、“2025年問題”ともいわれる少子高齢化の劇的な進捗、治安、経済格差や個人の孤立化の解消、ごみ問題はじめ、まちづくりのルール化等)についても寄与できるよう、日々努力していく所存です。

地域課題を解決するための「ネット新聞」が目標

横浜日吉新聞を運営してきた最初のモチベーションは、地域から(時には家庭からも?)疎外感を持ってしまう我々のような“日吉都民”の情報インフラになりたいとの思いがありました。せめて地元の情報だけでも知っておけば、自分の住む街やコミュニティにとけこみやすいのではないか、との考えがあります。

この根幹は今も変わっていませんが、今は地域の課題を解決するための情報インフラになるという目標を掲げています。

たとえば、他人に無関心という傾向がより強い日吉では、地域課題を啓発するために役に立てますし、横のつながり創出に寄与することもできるでしょう。

街の姿が大きく変わり今後も人口流入が続く綱島では、古くからの住民との融合という課題に横浜日吉新聞は活用できます。

急な坂道が多い街なのに交通機関が乏しいなかで高齢化を迎えてしまう高田でも、細かな情報発信を行うことがより重要となってくるでしょう。

横浜日吉新聞は、地域の課題を解決するためのインターネット新聞として、地域の役に立つことを第一に考えて運営を続けていきます。

「日吉モデル」のノウハウを他の街にも提供したい

横浜日吉新聞としての大きな目標は、これまでの運営ノウハウを「日吉モデル」として体系化し、こうした地域のインターネット新聞が日本のいたるところで、自主的に立ち上がるための火を付けることです。

中央集権的な「フランチャイズ展開」のような形はまったく考えておらず、地域に住む個人や企業や団体が、地域のためにメディアを自主的に起ちあげる時、手助けをする役割を果たし、緩やかな連携を図っていくのが理想です。

従来、こうした地域メディアは「広告ありき」で運営されているものが中心でした。そうした地域広告メディアが果たすべき役割があるのも事実ですが、私たちは違った道を歩みます。また、近年は企業のPRや各種主張を行う目的で地域メディアを立ち上げるようなケースも見かけますが、こうした媒体とも明確に一線を画したいと考えています。

2016年7月8日にスタートした「新横浜新聞~しんよこ新聞」のスマートフォン版

2016年7月8日にスタートした「新横浜新聞~しんよこ新聞」のスマートフォン版

横浜日吉新聞では、7月8日に新横浜地域のメディアとして「新横浜新聞~しんよこ新聞」を新たに立ち上げました。相鉄・東急直通線の開通後に、日吉や綱島と深く関連していく街を伝えることが大きな目的ですが、その一方で「日吉モデル」を自ら実践してみたいとの思いもあります。

これにより、日吉や綱島、高田、新横浜周辺はカバーができましたが、近所でも大倉山や新羽、新川崎周辺などまだカバーできていない地域は多数あります。開設のご要望を数多くいただいていながら、申し訳ない気持ちでいっぱいです。これらの地域やその他の地域でも、どなたかが手を上げていただけたなら、できうる限りの協力はさせていただきたいと思います。

2年目は、さまざまな地域でインターネット新聞が生まれるように努力しながら、同時に横浜日吉新聞と新横浜新聞~しんよこ新聞も発展させてまいります。最後までお読みいただきありがとうございました。

2016年7月18日

横浜日吉新聞


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