今年(2016年)に入り、港北区内で振り込め詐欺の被害が急増しています。港北警察署によると、日吉本町では未遂の1件を含め計2件の被害金額は200万円となり、箕輪町でも1件200万円、日吉町は1件82万円超の被害が出るなど、5月末までに区内全体では昨年と比べ発生件数が11件増え、被害総額は8300万円超にのぼっています。一人で5500万円もの大金をだまし取られた人もおり、なぜ、ここまで騙されてしまうのかが不思議に感じてしまいます。
振り込め詐欺には、色んなタイプがありますが、もっとも多いのが「オレオレ詐欺」と呼ばれるもので、息子などの親族を装って電話をかけ、「電車に会社のお金が入ったカバンを置き忘れた」などとトラブルが発生したことを口実にお金を振り込ませる犯罪です。同僚や部下、上司などを装う偽の代理人に現金を受け渡すケースも多くなっています。
常識的に考えて、電話の声を通じて自分の偽の息子くらいは見破れそうなものですが、「携帯電話の番号が変わった」「会社の携帯電話だから登録しておいて」「カゼをひいて喉の調子が悪い」と言葉巧みに信じ込ませようとします。
電話に出て被害に遭っているのはほとんどが60~80歳台の高齢者ですが、電話の向こうで騙そうとしているのは“プロ”の詐欺集団です。こうした犯罪者集団のなかには、演技力のオーディションや厳しい“練習”までやっているケースもあると言われています。相手を焦らせて“洗脳”するためには、どうすればいいのかを常に計算し、訓練された犯罪者集団に、まったくの“素人”である高齢者は一人で立ち向かわなければなりません。
たとえば、インターネット上ではフィッシング詐欺など、10代以上の多くの世代で詐欺被害に遭っていますが、高齢者はインターネットを使っている割合が低いため、電話や携帯電話を使った詐欺が行われているにすぎません。高齢者だから騙されているというわけでなく、詐欺のなかで、高齢者に最適な方法で騙しているということが言えます。
振り込め詐欺を防止するには、電話に出ないことが一番です。出てしまったら、相手は“プロ集団”ですから、騙される確率が極端に高まってしまいます。留守番電話にしておけば、本来の通話には支障はそれほどないはずです。とにかく電話には出ないこと。本当に用事があれば、留守番電話に用件を吹き込むのではないでしょうか。
港北区内で5500万円を騙し取られた高齢者は、数日後に息子と遭う予定だったにもかかわらず、危機を装った“偽息子”に2回も騙され、大金を手渡しています。日常、親子でコミュニケーションを図っていても騙されてしまうことがあり、注意が必要です。
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【参考リンク】
・港北区内犯罪発生状況(PDF、2016年5月末現在、港北警察署)
・振り込め詐欺急増中!こんな手口にご注意を(もっとも狙われているのは70~80代、神奈川県庁)