日吉も人ごとではない、小中学校内で放射能濃度が高い廃棄物が保管されたままの理由

横浜日吉新聞
学校内での汚染汚泥の保管状況(横浜市の資料より)
2016年6月21日(火)付けの神奈川新聞で横浜市内の小中学校に指定廃棄物が「放置」されていたとして大きく報じられた

2016年6月21日(火)付けの神奈川新聞で横浜市内の小中学校に指定廃棄物が「放置」されていたとして大きく報じられた

横浜市内の小中学校内に放射能濃度が高い「指定廃棄物」が5年以上も放置されている、と昨日(2016年6月)21日(火)付けの神奈川新聞が1面トップ記事と社会面トップ記事で報じました。ヤフー(Yahoo Japan!)ニュースにも同じ記事が転載されたことで、同新聞の読者以外にも広く情報が伝わっています。

現在のところ、日吉や綱島、高田の学校で指定廃棄物が保管されているとの情報はありませんが、汚染された廃棄物が学校内に保管されているという点で、無関係ではないのが日吉の学校と保育所です。

今回の問題のきっかけは、2011年3月11日の東日本大震災で東京電力福島第一原子力発電所の事故が起きたことにあります。放射性物質が横浜へも飛散し、最大で市内の小中学校43校で「汚泥(おでい)」が放射性物質に汚染されていることが確認されました。このうち18校では国の基準で指定廃棄物となるレベルのものでした。

雨水をトイレの洗浄時に再利用する「雨水利用施設」の仕組み(横浜市の資料より)

雨水をトイレの洗浄時に再利用する「雨水利用施設」の仕組み(横浜市の資料より)

汚染された汚泥が確認された市内43校では、雨水をトイレの洗浄時に再利用する「雨水利用施設」を利用していました。雨水利用施設は、屋上などから雨水を集めて貯水タンクに貯めておく仕組みとなっています。この時、雨水だけでなく、砂や泥も一緒に紛れ込みます。通常、貯まった砂や泥は汚泥として廃棄処分されることになりますが、原発事故を機に汚泥から高い放射能濃度を検出。処分に困った横浜市が学校で一時的に保管をすることを決め、現在に至っているものです。

もともと、雨水利用施設は災害時などに貯めた雨水を有効利用できるうえ、日常も水道代が1校あたり年間数十万円規模で節約が可能であると言われていることから、2011年以前は市の小中学校で徐々に導入されていました。

ところが原発事故により、雨水を通じて汚染された汚泥が流れ込むという予想外の結果となったのです。

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矢上小学校では高い放射線量は測定されず

汚泥の汚染が確認された43校のなかには、日吉3丁目の矢上小学校が入っています。同校にも雨水利用施設があったためです。

汚染された汚泥(おでい)が確認された市内43校のなかで、国の「指定廃棄物」の基準である8000ベクレル以下は自治体で処理がもとめられている

汚染された汚泥(おでい)が確認された横浜市内43校の一覧。このなかで、国の「指定廃棄物」の基準となる8000ベクレルを超えない汚泥や廃棄物は自治体での処理することが求められている(横浜市が発表している一覧表)

横浜市が2011年度に矢上小学校から回収した汚泥の調査を行った際、国が「指定廃棄物」として定める基準である8000ベクレル(Bq/kg=1kgあたりの放射能を表す単位)を上回る1万2500ベクレルを記録。続く2012年度も1万3400ベクレルとなりましたが、直近の2013年度調査では7340ベクレルにまで下がったため、国が定める指定廃棄物にはなっていません。現在も278.9キログラムの汚泥は同小学校内で厳重に保管されるとともに、市によって定期的に放射線量が測定されています。

今年(2016年)3月24日に矢上小学校で行われた放射線量の測定では、保管場所の周辺を含め0.04~0.06マイクロシーベルト(μSv/h)となりました。この数字の考え方について一例をあげると、昨日2016年6月21日(火)の12時40分現在、原子力規制委員会による横浜市の「県立岸根高校」(港北区岸根町)での放射線量測定結果が0.05マイクロシーベルトですので、ほぼ市内の平均的な数値といえ、現時点で汚泥の保管によって放射線量が高くなっているようなことはありません。

一方、市内43校に置かれたままの汚染汚泥ですが、8000ベクレル以上の指定廃棄物は国の責任によって今後処理されることになりますが、8000ベクレル以下の汚染廃棄物については、「通常の廃棄物と同様に地方公共団体あるいは排出者が処理」(環境省)することとしています。この8000ベクレルという数値は、「廃棄物を安全に処理するための基準」(同)だといいます。

そのため、基準値以下となる矢上小学校の廃棄物処理は横浜市の責任となりますが、市は現在のところ「学校以外での保管について検討を始める」とは決めていますが、今年5月になって検討が始まったばかりのため、今後の方針が明確には示されていません。

日吉台中と日吉台小に置かれた「堆積物」

今回報じられた「汚泥」の問題とは別ですが、学校に保管されているのは、汚泥だけではありません

除去した堆積物(土壌)の保管には国のガイドラインが定められている(ガイドラインPDF)

除去した堆積物(土壌)の保管には国のガイドラインが定められている(ガイドラインPDF

原発事故の直後、横浜市内では一部で高い放射線量が測定される「マイクロスポット」が各所で現れました。市の教育委員会が2011年9月に港北区内の小中学校で緊急測定を行ったところ、日吉台中学校(日吉本町4)と日吉台小学校(日吉本町1)の2校の3カ所で市が定めた基準値を上回る場所があることが分かり、即座に土や石、枯れ葉、苔、埃といった「堆積(たいせき)物」の撤去が行われています。

速やかな対策が行われたことで、該当箇所の放射線量は下がったのですが、問題は処理した後の堆積物の行方です。日吉台中学校では324キロ、日吉台小学校は9キロ分の堆積物が集まっています。

「撤去した堆積物は二重のポリ袋に密閉し、児童生徒が立ち入らない場所に一時的に保管しました」(2011年9月26日横浜市のニュースリリース)とし、その後、5年近くにわたってそのままになっているとみられます。

このうち、日吉台小学校の保管場所では、昨年(2015年)7月29日に行われた測定で市が目安とする放射線量を若干ながら上回る結果も一部で記録されています。

これらは「汚泥」と同様に、学校外への保管に向けた市の検討が5月にようやく始まりました。

保育所では安全対策を施して埋め戻しも

原発事故の翌年2012年2月から3月にかけては、小中学校だけではなく保育所でも同様の調査と対策が行われ、この際にはアスク日吉東保育園(日吉7)と南日吉保育園(日吉本町4)で市の基準値を超える堆積物が収集されています。

アスク日吉東保育園では、コンクリート製の遮蔽物(U字溝など)をかぶせ、全体をブルーシートで覆ったうえで園児の近づかない場所に一時保管する措置がとられています。

一方、南日吉保育園では、「時間の経過とともに放射線量が減少し、安全な状態」(横浜市)になることから、10センチ以上の土をかぶせるなどの安全対策を施したうえで、2014年9月に園庭裏庭に埋め戻すという処理方法がとられたといいます。

学校内での汚染汚泥の保管状況(横浜市の資料より)

学校内での汚染汚泥の保管状況(横浜市の資料より)

こうした汚染物質が保管されている小中学校と保育園のいずれも、定期的に放射線量の測定が行われ、現時点で極端に高い数値が見られることはありません。また、変電室や倉庫など、普段は児童や生徒らの目に付かない場所で長期保管に耐えられるような対策を施しているとしています。

そもそも、原因となった原発事故自体は横浜市に責任はありません。市は原発事故の責任者である東京電力に一定の補償金を請求して受け取っているとはいえ、整備に1カ所あたり4000万円はかかると言われる雨水利用施設を、災害対策やエコ化のために着々と備えてきたのに効果が発揮できなくなるなどの損害も出ています。

一方で国が決めたところでは、指定廃棄物以外の処理は横浜市の責任としています。緊急的な措置だったとはいえ、小中学校や保育所内に長期間保管したり、敷地内に埋め戻したりするという横浜市の対策は適切なのでしょうか。いくら安全だとされていても、せめて子どもと無関係な場所に保管し、処理をしてほしいと思うのが子を持つ親や、市民の感情だと思われます。

【参考リンク】

指定廃棄物を学校に“放置” 横浜市、5年以上も(2016年6月21日、神奈川新聞「カナロコ」)

学校雨水利用施設の汚泥を保管している横浜市立学校の定期的な放射線量測定(横浜市教育委員会、43校における最新の測定結果)

学校の雨水利用施設における雨水利用暫定停止についてPDF、2012年3月29日横浜市)

港北区内の市立学校における放射線量の測定結果についてPDF、2011年9月26日横浜市、※日吉台中と日吉台小における措置)

マイクロスポット対応等により発生した除去土壌の適切な処理について(横浜市、処理の方針について)

これまでの放射線量測定で市の対応の目安を超えた箇所がある学校PDF、2015年9月1日、※日吉台中と日吉台小などにおける廃棄物の保管場所と放射線量の測定結果)

集積物の保管状況等について(保育所)PDF、2015年9月1日、※アスク日吉東保育園と南日吉保育園などにおける廃棄物の保管場所や処理状況、放射線量の測定結果)


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