障がい児の居場所が足りない、日吉・綱島で開設が相次ぐ民間サポート施設 | 横浜日吉新聞

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障がいを持つ児童や、発達に心配がある児童の新たな“居場所”が民間企業にも開かれ、この「こどもサポート教室きらり綱島校」(写真右)も2016年4月から新たに株式会社クラ・ゼミの経営にて綱島に開設されたばかり(写真奥は隣接エリアの綱島SST)

障がいを持つ児童や、発達に心配がある児童の新たな“居場所”が民間企業にも開かれ、この「こどもサポート教室きらり綱島校」(写真右)も2016年4月から新たに株式会社クラ・ゼミの経営にて綱島に開設されたばかり(写真奥は隣接エリアの綱島SST)

障がい児の居場所を公的な施設だけでなく民間でも――障がい児が放課後を過ごしたり、治療と教育を合わせた「療育(りょういく)」を受けられたりする施設が相次ぎ日吉・綱島で新設されています。2012年から民間企業障害者自立支援法と児童福祉法が改正され、多くの民間企業や一般社団法人が、この「障がい児通所支援事業」に参画しやすくなったことで、障がい児や発達に心配がある児童の“居場所”が増えているといいます。

この通所支援事業は、未就学児を対象とした「児童発達支援」と、小学生から高校生までを対象とした「放課後等デイサービス」の二種類があります。

横浜市こども青少年局の担当者によると、この法改正までは、別の枠組みで設けられた同様の施設が各区に1カ所しかなく、まだまだ横浜には施設が足りないといいます。

綱島東2と箕輪町3に相次ぎオープン

民間の参入が認められてから、ようやく2014年11月には日吉・綱島エリアでも初の施設となる「わくわくさん綱島東の扉」(綱島東5、株式会社あやちゃん家運営)が開設されました。この(2016年)4月には、新たに「こどもサポート教室きらり綱島校」(綱島東2)と「ポニーライド日吉」(箕輪町3)が相次いでオープンし、綱島・日吉エリアではようやく2・3カ所目が設置されたばかりです。

「きらり綱島校」の責任者・永岡さんは介護福祉士の資格も持っている。「どの家庭も課題を抱えているかと思います。地域の皆さん、コミュニティとうまくやっていこうという力、情報発信の仕方などを習得するお手伝いができたら」と、1人1人の違いをマンツーマンで指導していくメリットを説明

「きらり綱島校」の責任者・永岡均(ひとし)さんは介護福祉士の資格も持っている。「どの家庭も課題を抱えているかと思います。地域の皆さん、コミュニティとうまくやっていこうという力、情報発信の仕方などを習得するお手伝いができたら」と、1人ひとりの違いをマンツーマンで指導していくメリットを説明

横浜市港北区役所こども家庭支援課の担当者は、「親のライフスタイルの多様化が、障がいを持つお子さんや、発達に心配がある児童の“居場所”や成長を促していけるような家庭以外の環境を求めている」と、その施設不足感によって民間参入が進められている現状を説明します。「特に共働き、もしくはシングルで親が働かざるを得ない家庭が増えていることが背景にあるのではないか」と、昨今の保育園不足に通じる親の社会進出と同様の流れがあると分析します。

このほど日吉と綱島で誕生した2施設は、特徴が大きく異なります。

「こどもサポート教室きらり綱島校」は、決められた時間(1時間)に1人につき1人が対応する「個別療育」に特に力を入れようと開設したと、運営会社である株式会社クラ・ゼミ(静岡県浜松市)東日本エリア担当の河合俊通さん。

左からスタッフの西村さん、金子さん、永岡さん。マンツーマンでの対応ができるような机と椅子も用意。また、児童が落ち着いて過ごせるよう、室内は敢えてシンプルにしているという

左からスタッフの西村さん、金子さん、永岡さん。マンツーマンでの対応ができるような机と椅子も用意。また、児童が落ち着いて過ごせるよう、室内は敢えてシンプルにしているという

綱島に進出するきっかけは「保護者の方から、“ぜひ綱島に進出してもらいたい”という依頼があった」といいます。送迎はなく、各自が週に1~2回、多くても3回程度通い、その児童にとって必要な療育を行っていますとのこと。「関東圏だけで現在12校、全国約40校以上の事業所でフォローし合いながら、丁寧に児童に対応していきたい」と母体が学習塾経営の企業ならではの「教育」分野での強みと対応力について語ります。

来月(2016年6月)からは、港北区高田(グリーンライン高田駅徒歩約8分)にも新たに「きらり高田校」を開設予定とのことです。“まだまだ施設が足りない”と言われている港北区北部エリアでの不足感を、少しでも和らげてくれる存在となるのか。大きな期待感が集まります。

一方、放課後等デイサービスとして開設されたのが株式会社ポニーライド(箕輪町3)が経営する「ポニーライド日吉」です。児童の送迎も行い、学校が休みの期間も所定の休日以外は預かるという、“居場所”づくりのほか、「療育」の時間を確保、集団活動や個別支援を通じて「生活の力」を養ってゆくことも目的とした施設です。

箕輪町三丁目バス停すぐの場所にあるポニーライド日吉

箕輪町三丁目バス停すぐの場所にあるポニーライド日吉

この施設を立ち上げたのは、株式会社ポニーライドの代表取締役・阿部奈津美さん。阿部さんは高齢者介護施設や放課後等デイサービスで経験を積み、この施設の設立に向けて新たに会社を立ち上げるなど、施設への想いと情熱を人一倍持っている運営者です。

「元々、元住吉や日吉が地元だったので、この地域で放課後等デイサービスができないか、と物件を探していたんです。横浜市、特に日吉にはこういった施設がなかったので、ここでやってみようと決めました」と、この日吉・綱島地区での施設不足感を感じた上での施設開設だったことを明かします。

スタッフには、介護福祉士や元保育士・幼稚園教諭の資格保有者ばかりでなく、経験者も取り揃え、英語講師もおり、療育の時間を充実させているとのこと。またプラスアルファで、前後の時間も過ごしながら、社会性をより身につけられる支援計画を組み、実践しています、と阿部さん。

さらに、このゴールデン・ウィーク中は、課外体験として綱島公園や三ツ池公園(鶴見区)、夢見ケ崎動物公園(幸区)まで足を伸ばしたといいます。いつも散歩で行くという日吉の丘公園では、地域のボランティアの方と子どもたちを通じて親しくなった縁で、「花壇を一緒に作らせてもらいました。季節が終わった菜の花を刈りとり、咲くと美しいというそばの花や、夏のひまわりを植えたりしています。花壇を作り、肥料を撒くなど、とても楽しい時間を過ごさせてもらいました」と笑顔で語ります。

施設を立ち上げてからは、「とにかく忙しい」という阿部さんですが、「保護者の方とのノートのやりとりを通じて、通っている子どもたちが“成長したな”と感じられる瞬間に、大きな喜びを感じています」と話しました。

ポニーライド日吉では季節のイベントも行い、「療育」の実践のほか、アットホームな“学びの場も意識して作っているとのこと。送迎は日吉・綱島(鶴見川以北)、川崎市内でも日吉に隣接している近い場所であれば対応可能とのこと(2016年5月6日現在)

ポニーライド日吉では季節のイベントも行い、「療育」の実践のほか、アットホームな“学びの場も意識して作っているとのこと。送迎は日吉・綱島(鶴見川以北)、川崎市内でも日吉に隣接している近い場所であれば対応可能とのこと(2016年5月6日現在)

阿部さんは、「鶴見川以北の日吉・綱島、川崎エリアでも日吉に隣接した地域在住の方も、ぜひ送迎可能かどうかはご相談ください」と、いつかは小学生や中学生など、年齢層により合った療育の実践など、より良い施設運営ができたなら、との夢も交えてこれからの抱負を語っています。

利用時の注意点と今後の動向

一方で、横浜市こども青少年局の担当者は、「“療育”の質を確保してもらいたい、というサービス提供内容についての保護者からの要望や苦情を受けることも多くあります。施設により特徴が異なり、個人差も大きいので、その施設の特徴を知り、事前の話し合いなどもしっかり行ったうえで、通える施設を探してもらえたら」と、民間企業が多く行うことになったこの通所支援事業についての注意点について言及しています。

サービスを利用した人はその利用費用の1割を負担しますが、所得に応じて上限月額が設定され、1か月に利用したサービス量に関わらずそれ以上の負担は生じないとの事(横浜市こども青少年局ホームページより)

サービスを利用した人はその利用費用の1割を負担しますが、所得に応じて上限月額が設定され、1か月に利用したサービス量に関わらずそれ以上の負担は生じないとの事(横浜市こども青少年局ホームページより)

このほど綱島東に開設された「きらり綱島校」も、箕輪町の「ポニーライド日吉」も、地域社会に児童が根差し、生きていける力を育みたい、と施設運営の大きな目標を持っています。

少子高齢化が進む日本、1人ひとりの障がいをもつ児童や、発達に心配がある児童たちが、より地域社会に根差して生きていけるような支援と、周辺住民の理解もより一層必要になると考えられます。この日吉・綱島周辺地区でも、子どもたちの“居場所”づくりや生活力を育んでいくための枠組みづくりの担い手として、これらの施設の動向に、大きな注目が集まっています。

※「児童発達支援」及び「放課後等デイサービス」を利用するには、各自治体(横浜市の場合は区役所)が発行する「障害児通所受給者証」が必要になります。

※施設利用については、各施設に直接問い合わせください。

【関連記事】

日吉に重症心身障がい児の「居場所」初開設、共感呼びネットで資金調達も(2017年6月5日)

【参考リンク】

障害児通所支援事業(児童発達支援・放課後等デイサービス)について(横浜市こども青少年局)

障害児通所支援(児童発達支援・放課後等デイサービス)事業所一覧~平成28年4月現在(横浜市こども青少年局)[PDFファイル]

こどもサポート教室 「きらり・あいあい クラ・ゼミ」公式ホームページ(綱島東などで展開)

地元情報サイトに掲載して頂きました【こどもサポート教室きらり綱島校】(株式会社クラ・ゼミ)

放課後等デイサービス わくわくさん 綱島東の扉(株式会社あやちゃん家)※スタッフに看護師がおり、重度の障がいをもつ児童が多く入所。現在入所待ち人数多数とのこと(2016年5月6日現在)


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