世界のまちづくりにも影響、超先進的な開発となる「綱島SST」の全貌とは

横浜日吉新聞
2016年3月28日に行われた会見では、横浜市の林市長やパナソニックの津賀社長、野村不動産の宮嶋誠一社長(写真左)が構想を発表した

2016年3月28日に行われた会見では、横浜市の林市長やパナソニックの津賀社長、野村不動産の宮嶋誠一社長(写真左)が構想を発表した

パナソニック工場跡地(綱島東4丁目)で行われている「Tsunashimaサスティナブル・スマートタウン」(綱島SST)の再開発が国内外のまちづくりに大きな影響を与えるかもしれません

2016年3月28日に都内で開かれた綱島SSTの構想発表会では、実験的な要素も含んだ、これまでにない先進的な再開発の全貌が明かされ、パナソニックや野村不動産の社長に加えて横浜市長も駆け付け、未来都市への期待を熱く語りました。

冒頭、パナソニックの津賀一宏社長が「綱島SSTは“都市型のスマートシティ”として初めての挑戦となる。この知見やノウハウを世界で生かしたい」と話し、横浜市の林文子市長も「隣接する日吉エリアにおよぶ全長2キロメートルにわたる広域的なまちづくりも一体的に推進し、市郊外部の再生や環境未来都市の実現に向けた大きな一歩となる」と力を込めました。

パナソニックにとっては、神奈川県藤沢市に続き、工場跡地を活用したまちづくりの第二弾となりますが、その特徴は産官学の多くの企業や団体と協業し、さまざまな先進的な取り組みを行う点にあります。

今回発表された綱島SSTでの取り組みについて、具体的にどのような内容かを以下にまとめました。

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    綱島SST内では高い環境目標が設定されている(Tsunashima SST協議会の資料より)

    綱島SST内において二酸化炭素(CO2)排出量を2005年度比40%削減し、生活用水の使用量も同30%削減、街で使うエネルギーのなかで新エネルギーの割合は30%以上とする

  • 何らかの非常事態が起きても3日間で通常の状態に復旧する目標を設定。また、街の見守り率(主要出入口での映像取得率)は100%、タウン内は15分以内で駆け付ける予定
  • 街のなかでは、「エネルギー」「セキュリティ(安全)」「モビリティ(人が移動するためのサービス)」「ウェルネス(健康)」「コミュニティ」「ファシリティ(設備)」に関する6つのサービスを提供する
  • まちづくりを行う「Tsunashima SST協議会」は、これまでのパナソニックや野村不動産、MID都市開発(関電不動産開発)、ユニー、米アップルの5者に加え、新たにJXエネルギー、パナホーム、慶應義塾大学、大林組、東京ガスの5者が加わり、10者でまちづくりを進める。今後はセキュリティやモビリティ関連事業者の参画も想定
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綱島SST内の施設位置図(クリックで拡大、綱島SSTホームページより)

――以上が綱島SSTのまちづくりに関する大枠となります。徹底的にエコにこだわるとともに、高い安全性を持った街を志向していることが分かります。敷地が限られた都市型の再開発で、ここまでこだわりを持って計画されているのは珍しいのではないでしょうか。

まちづくりはパナソニックや野村不動産が主導してはいますが、多くの企業や団体と協業しているのも特徴です。慶應大学やJXエネルギーなど、これまでは名前が一切出て来なかった2者が新たに参画したというのも興味深いところです。特に慶應大学は近所に日吉キャンパスを構えているだけに、今後の関わり方は注目を集めそうです

綱島SSTにおける具体的な設備とオープン時期については、現時点で下記のように予定されています。

■ 米アップル研究所「綱島TDC(テクニカル・デベロップメント・センター)」関連記事

現在、建設工事中。2016年12月に操業開始を予定しており、綱島SSTでもっとも早く登場する施設。屋上への太陽光発電システムの設置や緑化、水の再利用などを行う予定。

■ タウンマネジメント施設(アピタとアップルとの間に、3つの施設を直列に配置)

パナソニックによるタウンマネジメント施設は、慶應大学など3者と共同で活用される(説明するパナソニックの井戸正弘取締役)

パナソニックによるタウンマネジメント施設は、慶應大学など3者と共同で活用される(説明するパナソニックの井戸正弘取締役)

1.エネルギーセンター

東京ガスグループが現在建設中、綱島街道から一番奥側に配置。都市ガスを用いるなどして街全体へエネルギー供給を行う拠点。2016年度中に完成の見込み。

2.マネジメントセンター/国際学生寮(同一の建物)<関連記事

タウンマネジメントセンターは、綱島SSTの情報発信拠点としてパナソニックが運営。シェアオフィスの設置も予定。国際学生寮は慶應義塾大生向け。建設はパナホーム、管理運営は共立メンテナンスが行う。建物は2017年度中に完成予定。

3.エネルギーセンター(水素活用拠点)

燃料電池自動車向けの水素供給を行う「ENEOS(エネオス)」ブランドの水素ステーション、綱島街道に面して設置。水素に関する情報発信拠点にもなる。2017年度早い段階までに完成か。JXエネルギーが担当。

■ アピタ綱島日吉店(仮称)関連記事

綱島SST内の日吉寄りに建てられるもっとも規模の大きい施設。2016年秋までに着工し、2017年秋にオープン予定。新しい時代の次世代GMS(総合スーパー)としたい考え。

■ スマート集合住宅(10階建てマンション)関連記事

アップルの裏手側に、野村不動産とMID都市開発によって建設される10階建て94戸の“最先端エコマンション”。各部屋にエネファーム(家庭用燃料電池)やスマートHEMS(ヘムス=エネルギー利用を見える化する装置)を導入。2016年4月中旬から工事を開始し、2年後の2018年の3月中旬に完成予定

綱島SSTの完成予定イメージ(Tsunashima SST協議会資料より)

綱島SSTの完成予定イメージ(クリックで拡大、Tsunashima SST協議会資料より)

――以上が綱島SSTにおける各施設の概要です。現時点(2016年3月28日)では、既にアップル研究所と東京ガスによるタウンエネルギーセンターの工事が行われており、この2施設がもっとも早く登場することになりそうです。

今後、スマート集合住宅(10階建てマンション)やアピタ日吉店、タウンマネジメントセンターの順に着工していくものとみられます。

一方、このほかにも整備が予定されている施設やサービスがあります。

保育所:マンション内に設置予定

クリニックや薬局:現時点ではどこに整備されるか不明

カーシェアリングやサイクルシェアサービス:現時点ではどこでサービス提供が行われるかは不明

防災広場や集会室:アピタ店内や同店付近に設置か

綱島SSTのまちづくりを行う「Tsunashima SST協議会」に参画したのは10社・団体となった

綱島SSTのまちづくりを行う「Tsunashima SST協議会」に参画したのは10社・団体となった

――現時点で分かっている内容は以上です。

綱島SSTの特徴を一言で言えば、単なる施設や建物の建設にとどまらないということです。すべての施設やサービスには、エコ化などの目標や実証実験的な取り組みが含まれており、綱島で得られたノウハウやサービスは、アピタ日吉店跡地などの箕輪町2丁目で野村不動産が主導して行う「日吉複合開発計画(仮称)」でも活用されるとみられます。

実験的な要素も含んだこれまでにない先進的な再開発は、日吉と綱島の未来だけでなく、その成否は日本や世界の都市におけるまちづくりに大きな影響を与えることになりそうです。

【関連記事】
綱島SSTがホームページを公開、見どころは街の全体像を伝えるコンセプト映像(2016年3月28日)

【参考リンク】
Tsunashimaサスティナブル・スマートタウン公式ホームページ


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